民主党・野田政権は、4月13日、原発の再稼動を議論する関係閣僚会議を開催し、関西電力大飯原発の3、4号機について、「安全性」「必要性」が“適合”“妥当”であるとし、再稼動を認める方針を決定しました。しかし、これほど国民の安全性を無視した、いいかげんな決定はありません。
第1に、運転再開を「安全性」面から審査する「基準」をつくったのは、これまで“原子力ムラ”の一員として原発政策を推進してきた原子力安全・保安院で、3月末には解散し、新たに作られる原子力規制機関に取って代わられる予定だった組織です。そんな彼らが3日で作った“安全審査基準”など信頼できるものではありません。実際、内容的にも昨年の福島原発事故直後に各電力会社に指示した「緊急安全対策」がベースで、すでに多くの原発が対応しており、出来ていない場合でも“計画さえ提出すれば実施は将来でもOK”という抜け穴だらけの安全基準です。
第2に、福島第1原発の事故の原因はいまだに未解明である中での再開容認と言う問題点です。政府と東京電力は福島第一原発の事故をもっぱら「津波」のせいにしていますが、津波が来る前に既に地震で配管が破損し事故が発生していたという指摘もあります。こうした原子炉の基本構造に関わる問題点もまだ解明できていない中で原発の再稼動を容認するなどということは、無謀としか言いようがない暴挙です。
第3に、相変わらず苛酷事故が起きた場合の対策が全く欠けている問題です。福島第1原発事故による放射能汚染の影響は甚大で、生まれ故郷に帰れる目途も全く立っていません。原発事故は環境と生活の基盤を根こそぎ破壊します。大飯原発についても苛酷事故が起こった場合、放射能汚染はどうなるか、琵琶湖の水が汚染された場合の対応はどうなるかなども含めた対策が立てられ審査されるべきですが、そうした形跡は全くありません。
第4に、「必要性」判断の基となる電力の需給バランスは、関西電力の試算を鵜呑みにし、需要は猛暑日が続いた2年前の夏をベースに最大限に見積もり、節電や省エネなど需要を抑える効果は過小に評価し、“電力不足”を過剰に言っている問題です。昨年並みの節電・省エネや企業への協力要請、眠っている発電施設の再点検や自家発電、他電力会社からの融通など手を尽くせば、原発なしでも十分やっていけると言われています。
大飯原発の再稼動についての今回の決定は、こうして「安全性」「必要性」いずれの面からも問題点が多過ぎ、決して許されるものではありません。これほど急いで大飯原発の再稼動を決めようとする背景に、“原発なしにこの夏を乗り切られれば、原発の必要性の根拠がなくなる”“そのためにも、今何としても大飯原発の再稼動を”という「政治判断」があるとしたら、これほど国民を愚弄し、安全性を無視した「政治判断」はありません。また、これほどおざなりな審査、「政治判断」で原発の再稼動が認められるなら、今後の原発再稼動は、ほとんどフリーパスで許可されることになります。
私たちは、政府・野田政権と関西電力に対し、福島第一原発事故の原因究明もまだの中で大飯原発の再稼動をするなと強く求めます。また、福井県ならびに近畿の各自治体に対し、政府がすすめる安全性を無視した大飯原発の再稼動を容認するなと強く求めます。
そして、福島原発事故の徹底究明、原子力規制機関の設立、そのもとでの徹底した安全性審査、苛酷事故対策、被害住民の完全救済などを求めるとともに、より根本的には一日も早く地震国日本の全ての原発をなくしてゼロにすること、電力・エネルギー政策を自然エネルギー・再生可能エネルギーの方向に大きく転換することを強く求めます。
2012年4月28日
大飯原発再稼動に反対する4・28関西電力包囲行動