大阪・泉南アスベスト国賠第1陣訴訟
大阪高裁第14民事部 進行協議の概要

日時 平成23年2月22日(火)14時〜14時35分

【三浦裁判長】最初に宿題となってました、和解についての国の考えをお聞かせ頂きたい。

【国代理人】前回、本件審理について和解が可能かどうか回答するようにと裁判所からお話があったので、これを受けて本日、国が和解についての考え方を示す。
国は一審判決には責任論及び損害論について看過できない問題点があると考えており、裁判の過程を通じてこういった問題点については見直しを求めることを目的として控訴したわけで、必要な主張立証を尽くしてきた。早期解決を目指すというのが裁判所の意向でもあったので、その趣旨に従って国としてもできる限り迅速な対応に努めきた。現時点で必要な主張立証は尽くした。
他方で、本件訴訟を含むアスベスト訴訟は極めて広がりが大きな問題なので、国としては公正で国民の理解を得ることができる解決を目指すためには、客観的で合理性のあることが担保されることが必要と考えている。
一審判決を前提とした解決を求める原告と国との間には依然として大きな隔たりがある。客観的に見て早期に和解の合意に至るのは困難な状況にあると言わざるを得ない。
本件については、できるだけ早期に判決をいただきたい。

【裁判長】和解のテーブルにつくこともできないということか。

【国】そういうことだ。政府部内での検討の結果ということだ。

【裁判長】首相官邸までいってるということか。

【国】関係閣僚会議の決定が総理まで伝わっているものと承知している。具体的にはわからないが、政府部内で調整検討した結果だ。

【原告側】国が控訴した時には、国も早期解決を望んでいる、裁判所に間に入ってもらった和解、解決も考えるというコメントだったと認識している。控訴段階から現時点までに政府の考え方が変わったということか。

【国】変わってない。一審判決には看過できない問題点があり、原告との間には隔たりがある。

【原告側】4年間の審理で一審判決が出た。一審判決を無視した解決というのはありえない、それは常識。双方不満があって控訴したわけだが、原告も、国も裁判所も早期解決を望んでいるという中で、一審判決を踏まえた上で、協議の場で双方が知恵を出し合って解決するというのは、先人も苦労し、これまでの国の経験からもあるはず。協議のテーブルに着けば、いろんな問題をこれから検討しないといけないのは原告も同じ。それを前提に解決へ向けての決断をと言っている。国にはそういう考えもないのか。

【国】平行線だ。一審判決を基準とした和解、解決をすることはできない。

【原告側】あたかも一審判決を前提にした解決を求めるのが不当で、原告がかたくな、原告の対応に問題があるというような言い方で、和解のテーブルにすら着かないというのは到底承服できない。裁判所からさらに、早期解決に向けて和解を強く勧告していただきたい。国はそれさえも拒否するのか、それを受けても国はダメなのか。

【国】勧告を受けてない前提では応えようがない。

【原告側】国もいろいろシミュレーションして検討したはず。代理人として、進行協議の場でそういう可能性についても議論しないと、前に進まない。

【国】ご意見としては承るが、私に答えられることではない。

【裁判長】絶対にこれ以上、和解のテーブルに着くことはありえないのか。

【国】現時点では着けない。判決をいただきたい。

【裁判長】それは変わらないんですね。

【国】はい。

【原告側】強く抗議する。

【国】弁護士としての意見として言う。こういう広範囲な訴訟、全国であちらこちらで起こっているが、全部が判決でないと解決しないという性質の問題ではないとは考えている。一審判決が出て、控訴審でも精力的な訴訟指揮をされ、我々もそれに協力して主張立証を尽くした。和解のための時間を使うよりも、高裁で判決をいただき、2つ判決が出たという状態の下で、全般的な解決が進むという選択肢もある、というのが弁護士としての考え。判決もらった方が解決としては早いという考えもある。これは弁護士としての個人的な意見。

【原告側】国は、もう一つ判決をくれ、そうでないと解決しないということであれば、原告の早期解決の願いを受け入れない、ということになる。判決もらった方が早いでしょう、というのは無責任。

【裁判長】双方のお話をうかがって、裁判所としては早急に終結に向けて動きたい。判決だけが全ての解決ではないということは分かっているが、こういう状況になった以上、ベストを尽くしたい。将来的に解決に向かって動くことがあるかどうか、私としては知る由もないが、当審としては粛々と進めたい。