2011年2月22日 原告団・弁護団声明

国の和解拒否に断固抗議する

大阪・泉南アスベスト国家賠償訴訟原告団・弁護団

1 本日、国は、大阪高等裁判所第14民事部に対して、大阪・泉南アスベスト国家賠償請求訴訟の和解を拒否する旨を回答した。原告団・弁護団は、国の和解拒否に対して、満腔の怒りを込めて断固抗議するものである。

2 何よりも、原告らの早期解決の願いは切実である。提訴後5年間で4名の原告が病状の悪化や肺がんを併発して死亡し、症状の悪化のため酸素吸入が手放せなくなったり、入退院を繰り返す原告も多数に上っている。国の和解拒否は、原告らの「生きているうちに解決を」の願いを真っ向から踏みにじるものである。
また、本件は、4年間に及ぶ長期審理を経て、昨年5月19日、国の責任を明確に認める一審判決が下され、判決直後には厚労大臣も控訴断念を表明し、国は控訴したものの、「控訴はするが、早期救済に全力をあげるのが内閣全体の方針」、あるいは、控訴審において「裁判所になかに入っていただくこともあり得る」とも述べていた。国の和解拒否は、自らの従来の態度表明にも、「いのちを大切にする」「不条理を正す」政治にも反する大義なき決定である。

3 国は和解拒否にあたって様々な言い訳をしている。しかし、国に問われていたのは、主張に対立点があるとしても、70年にも及ぶ泉南アスベスト被害の歴史と深刻さに正面から向き合い、早期解決に向けて裁判所、原告、国の三者が粘り強く真摯に協議するテーブルに着くかどうかという点であった。ところが、国の和解拒否は、解決に向けたこうした協働の作業そのものに背を向けるものであり、到底許し難い

4 水俣病問題において、国は、熊本地裁や京都地裁でその責任が厳しく断罪されたにもかかわらず、最高裁判決まで10数年に亘って自らの責任を認めない頑なな対応を取り続け、そのために被害救済は大幅に遅れ、無用な紛争も繰り返された。今回の和解拒否は、この水俣病の歴史的誤りを再びアスベスト問題でも繰り返すものであり、国が再び取り返しのつかない誤りを犯すものである。

5 原告団・弁護団は、国のこの歴史的愚行に対して満腔の怒りを込めて断固抗議するとともに、控訴審及び2陣訴訟においても、早期に、原告勝利の判決を勝ち取るために全力をあげる決意である。