2011年2月21日

 

大阪府議会・大阪市会各会派から寄せられた
「公開質問状」への回答について

あおぞらプロジェクト大阪
代表委員 芹 沢 芳 郎 他
ぜん息被害者の救済を求める会
代表世話人 飯 田   眞 治

あおぞらプロジェクト大阪とぜん息被害者の救済を求める会は、昨年9月に大阪府議会と大阪市会の各会派に対して、?私たちがすすめている「未認定・未救済の公害患者(ぜん息をはじめとする公害四疾患の患者)に対し、全年齢・大阪府全域を対象にした医療費助成制度を東京都の財源などを参考に創設すること」という要請についていかがお考えでしょうか、?ぜん息のないきれいな空気を取り戻すことこそ最も大事なこと。そこで私たちがお願いしている「NO2は0.04ppm以下を目標値とすること」「微小粒子状物質(PM2.5)についても早期に対策を開始すること」という二つの要請についていかがお考えでしょうか、という「公開質問状」を出しました。

この「公開質問状」に対し、大阪府議会は日本共産党と府民ネット、社民クラブから、大阪市会は全会派から回答をいただきました。また、大阪府議会の民主党と維新の会は「回答しない」という回答、自民党と公明党は未回答となりました。

回答の内容については、別表に全文載せていますのでご参照ください。以下、それぞれの項目についてご理解いただくために私たちの「コメント」を述べ、一層のご協力をお願いします。

(1)医療費助成制度の創設について

1)大気汚染とぜん息などの呼吸器疾患との因果関係について

この問題に関して「大気汚染とぜん息の因果関係がはっきりしない」「国が進めているそらプロジェクトの結果を待って対応すべき」という回答がありました。しかし、大気汚染、特にディーゼル排ガスとぜん息被害との間に相関があることは千葉大学の疫学調査や国立環境研究所のマウスを使った実験、環境省環境保健部の大気汚染に係る環境保健サーベイランス調査でも明らかになっています。

何よりも私たちが行ったぜん息被害実態調査での、ぜん息を発症した人の多くが幹線道路沿いに住んでいること、「空気のきれいな所から大阪に来て間もなくぜん息を発症した」「長年大阪市内に住みぜん息を患っていたが、空気のきれいなところに移住したらぜん息の発作が減った」というぜん息患者の生の声は、大気汚染とぜん息が無関係だとはいえないことは明らかにしているのではないでしょうか。

2)ぜん息はこどもの病気?

ぜん息は子どもの病気と言う見解がありました。しかし、ぜん息は全ての人が15歳で治癒するものではなく、成人になっても継続・再発する場合もあり、また、成人、高齢者になってから発症・再発する場合もあります。実際、私たちの行ったぜん息被害実態調査でも、公害4疾患のそれぞれの発症時期はぜん息性気管支炎は子供の時代に集中していましたが、気管支喘息は全年齢にわたって、慢性気管支炎と肺気腫(COPD)は高齢になってから発症しています。このことは、厚生労働省が行う「患者調査」によるぜん息・COPDの「受療率」の年齢構成を見ても明らかです。
ぜん息は決して子どもだけでなく、大人の病気でもあることにご理解をいただきたいと思います。

3)「財政難なので難しい」というご意見

私たちは、現在の大阪の公害患者を、認定公害患者が約1万4千人、未認定の公害患者が約5万人、未認定患者の中で小児ぜん息医療費助成制度などの救済を受けている人が約2万人で、従って未認定・未救済の公害患者は約3万人いると推計しています。また、私たちの行ったぜん息被害実態調査での1人当たりの月額医療費は約6千円でしたので、単純に計算すると未認定・未救済の公害患者を救済するのに必要な金額は総額でも年間21億6千万円となります。それを東京都のように自治体・国(環境再生保全機構)・自動車メーカー・高速道路公団で負担し合えば、決して大阪府や各自治体の財政を圧迫するようなものではなく、政治的決断で十分出来る事業だと考えます。

(2)大気についての環境目標値に

1)二酸化窒素(NO2)の環境保全目標値について

二酸化窒素については「年々改善してきている」「環境基準を達成・維持することが重要」などの回答がありました。確かに大阪の大気汚染は、60年代、70年代初頭の主要原因物質であった工場から排出される亜硫酸(SOx)については規制の強化によって劇的に改善してきてきました。しかし、自動車排ガスなどから排出される二酸化窒素や浮遊粒子状物質(SPM)は高い水準が続いています。また、近年は微小粒子状物質(PM2.5)が人の健康で呼吸器疾患だけでなく循環器疾患にも悪い影響を与えるとして、大きな問題になっています。

そもそも「環境基準」とは「人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」であり、それは「常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない」というものです(「環境基本法」第16条)。二酸化窒素の環境基準0.04PPM〜0.06PPMの上限値0.06PPMを達成したといわれる状況のもとで、引き続き沢山のぜん息患者が発生している以上、より厳しい基準を目標にするのが法の精神だと思います。私たちは、大阪の環境保全目標を0.04ppm以下とし、それを早期に実現する(例えば、「環境総合計画(素案)」でいう2020年までに)方針を確認し、実行すべきであると考えます。

2)微小粒子状物質(PM2.5)について

微小粒子状物質については、「国の動向を注視しながら着実に進めることが重要」などの回答がありました。国は既に昨年3月31日に「大気の汚染の状況の常時監視に関する事務の処理基準」の改正を発表して測定局の算定についての考え方を示し、10月15日には「微小粒子状物質の標準測定法と等価性を有する自動測定器について」を発表し自動測定器の評価を公表しました。

こうした国の方針決定を受けて、大阪府や大阪市としても早急に微小粒子状物質の観測体制を確立し、現状の把握と対策をすすめていくことが求められていると考えます。

以上


大阪市会・大阪府議会各会派への公開質問状への回答

2010年11月29日現在

(1)大阪市会

注)自由民主党=自由民主党・市民クラブ、民主党=民主党・市民連合
質問 質問1) 全年齢・大阪府全域を対象にした医療費助成制度を東京都の財源などを参考に創設すること。その実現のために、最も多くの公害患者を抱える大阪市は、積極的なイニシアチィブ゙を発揮すること。 ぜん息のないきれいな空気を取り戻すこと最も大事なことだと考えます。そこで、
質問2−(1) NO2は0.04PPM以下を目標値とすること。
質問2−(2) 微小粒子状物質(PM2.5)についても早期に対策を実施すること。
自由民主党  大阪市は「小児ぜんそく」が医学的に6歳までにそのほとんどが発症し、早期に治療を受けることにより、そのほとんどが15歳までに治癒するといわれていることから、対象年齢を15歳未満として、昭和63年4月から「小児ぜんそく等医療費助成制度」を設立し、これまで約97億円(扶助費 約83億円)を大阪市独自に行ってきた。
また国は、平成17年度から自動車排ガスと呼吸器疾患との関連性について疫学的に明らかにするための調査(そらプロジェクト)を実施し、22年度に結果の解析・まとめを実施する予定なので、大阪市はその結果を受けて対応していく必要があると思われる。
質問2−(1) 市域の大気環境は、工場などの固定発生源対策や自動車環境対策等の推進により、年々改善されてきているが、今後とも二酸化窒素(NO2)に係る環境基準の達成・維持に向けて、着実に施作を進めていくことが肝要と考える。

質問2−(2) 微小粒子状物質(PM2.5)については、21年9月に環境基準が設定されてところであり、その対策に関しては、中央審議会の答申にあるように、これまで実施してきた工場等の固定発生源に対しての、粒子状物質削減対策を着実に推し進めることが重要と考える。本市としては、その結果を受けて対応していく必要があると思われます。
民主党 公害健康被害補償制度は、昭和63年3月に「公害健康被害の補償等に関する法律」に改めて以後、地域指定が解除され新たな患者の指定は行われなくなりましたが、本市においては、「小児ぜん息」に対して、対象年齢を15歳未満として「小児ぜん息等医療費助成制度」を設立し本市独自の助成を行ってきました。

現在のところ、ぜん息を発症する明確な原因は未だ判っておりませんが、国は自動車排出ガスと呼吸器疾患との因果関係を疫学的に明らかにするため、平成17年度から調査(そらプロジェクト)を実施し、その結果の解析とまとめを平成22年度中に実施する予定と聞いております。
質問2−(1) 本市における大気の環境状況は、各種施策の推進により年々改善されていると確認しています。NO2に関する現在の環境基準では「1時間値の1日平均値が0.04PPMから0.06PPMまでのゾーン内まはそれ以下であること」として目標値が定められており、今後ともこの環境基準の達成・維持に向けて、引き続き環境施策を進める必要があると考えています。

質問2−(2) 微小粒子物質に関する国の環境基準は「1年平均値が15μg/m3以下であり、かつ 1日平均値が35μg/m3以下であること」として、平成21年9月に目標値が定められたところうです。今後の微小粒子状物質の削減対策については、「固定発生源や移動発生源に対してこれまで実施してきた粒子状物質全体の削減対策を着実に進めることがまず重要である」との中央環境審議会の答申を念頭に、国の動向を注視しながら、これまで実施してきている粒子状物質削減対策を着実に推し進めることが重要であること考えています。
日本共産党 日本共産党大阪市会議員団は貴団体が求める新たな救済制度の早期確立のために大阪市が積極的に行動する要請を支持します。

党議員団は、大気汚染防止対策の抜本的強化を求めて大阪市に対して毎年、予算編成に取り入れるよう要望してきました。本年の予算要望においては「未認定・未救済の公害健康被害者を救済するための新しい制度の実現に努める。そのためにも患者の声を十分に聞き、その実態を把握する」要望しました。引き続き、全力あげて頑張ります。
質問2−(1) 支持します。わが党は、市議会民生保健委員会での環境問題の質疑、また、予算要望に於いて繰り返し、「NO2環境基準の目標達成値を0.04PPM以下にす」ることを迫っています。NO2環境基準達成のために、大規模事業所の保有する自動車を対象に排ガス総量規制をおこなうことやNO2、CO2を排出しない交通手段としての自転車の活用を位置づけ、車中心の道路行政から人・自転車・車の調和のとれた道路行政に転換するよう求めます。

質問2−(2) 支持します。PM2.5については、大阪市の認識の遅れは否めません。わしたちは、国が決定した基準値を大阪市としても確認し、その実現のために必要な施策をおこない、全力を挙げて取り組むことを求めています。
公明党 公明党は、国が現在の日本の大気汚染の状況と、ぜん息など健康被害との関連性についての調査を徹底して行うことが必要と考えています。

今後、これからの調査結果がまとめられる予定ですので、更なる対策が必要である場合は、環境再生保全機構に公害健康被害予防事業の充実を図っていくべきだと考えます。また大阪市としても、これまで「小児ぜん息等医療費補助制度」を設立し、大阪市独自の施策も講じてきましたが、調査結果を踏まえて、市民にいちばん身近な基礎自治体として、必要な対策を講じるべきであると考えます。
公明党もぜん息のない、きれいな空気を取り戻すべく、低NOX 型小規模燃焼機器の普及や低公害の普及など政策総動員で取り組んできました。

今後もネットワーク政党として、国と地方がしっかり連携をとり、国でやるべきことと、地域の実情にあわせて対策を講じるべきものと、切れ目のない対策を講じてまいりたいと思います。

大阪市においても、市民が誇れる環境先進都市となるよう、ご請求の点も含め、施策の充実に努めることが必要であると考えます。
大阪維新の会 昭和61年10月の中央公害対策審議会答申を受けて、昭和63年3月に公害健康被害補償法が改正され、第一種指定地域がすべて解除されました。大気汚染とぜん息の因果関係については、十分な科学的な地見がないことから、国では平成8年から実施している「環境保健サーベランス調査」を実施しております。また平成8,年度から自動車排ガスと呼吸器との関連性について疫学的に明らかにするための調査「そらプロジェクト」が実施されてきました。この結果については平成23年3月までに解析・まとめが実施されると聞いています。大阪市は、この結果をもとに対応していく必要があると考えます。 質問2−(1) より良い大気環境を作ることは、次世代への大きな責任であります。現代の環境基準値は0.06〜0.04であります。したがって、まずは市内全域においてこの環境基準を達成すること、また、それを維持することが重要であるとかんがえます。

質問2−(2) PM2.5については昨年9月、国において環境目標値が設定され、環境省は今年の10月に自動測定器を認定しました。今後はその観測体制を確認するとともに、PM2.5にかかわる原因物質の排出に関する調査を国に対して求めて行きます。これまでの対策を着実に進めるとともに、調査結果によっては新たな対策も検討すべきと考えます。

(2)大阪府議会

注)府民ネ=府民ネットおおさか、社民ク=社会民主党クラブ、民主党=民主党・無所属ネット、維新の会=大阪維新の会
質問 質問1) 未認定・未救済の公害患者(ぜん息をはじめとする公害4疾患)に対し、全年齢・大阪府全域を対象にした医療費助成制度を東京都の財源などを参考に創設すること。 ぜん息のないきれいな空気を取り戻すこと最も大事なことだと考えます。そこで、
質問2−(1) NO2は0.04PPM以下を目標値とすること。
質問2−(2) 微小粒子状物質(PM2.5)についても早期に対策を実施すること。
日本共産党  大阪では、ぜん息患者が年々増加しており、ぜん息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)あわせた死亡率は人口10万人当たり13.5人と(07年・08年の平均)、全国的にも深刻です。しかも、ぜん息の発症は以前よりも府内一円に拡がっています。

 かつては大阪市内と市内に近い6市が指定地域となり、公害患者として認定されてきましたが、1988年の指定解除以後はぜん息患者の生活補償はなし、医療費は全額自己負担となっています。貴団体が実施された患者アンケートでも示されているように、「せめて医療費だけでも無料に」という声は切実であり、「住民の福祉の増進を図る」責務を負う大阪府として緊急に対策を講じるべきと考えます。

 東京都は08年から気管支ぜん息患者に対する医療費助成制度を設けており、その財源は、都独自だけでなく国・自動車メーカー・首都高速道路公団からも受けています。大阪府としても、関係する大企業にも責任を求めながら、市町村とも連携して、ぜん息をはじめとする公害4疾患患者の全年齢・府内全域を対象に、医療費助成制度を創設するべきです。

 わが党は従来から、ぜん息患者実態調査の実施など、実態を府として把握し対策を講じるよう繰り返し求めてきましたが、医療費助成制度の創設についてもさらに強く要望していきたいと思います。
                             
質問2-(1) 大阪府は「環境保全目標」において、国の「環境基準」に準じ、大気中の二酸化窒素濃度について「1時間値の1日平均値が0.04ppmから0.06ppmまでのゾーン内又はそれ以下であること」と定めています。しかし、0.03ppmを超える地域でぜん息等の新規発生率が高くなることが、80年代後半に環境庁(当時)が実施した調査でも示されています。
 NO2は0.04ppm以下を目標値とした「環境保全目標」改正をおこなうとともに、国にも「環境基準」見直しを求め、また実現に向けた具体的な施策を講じ、予算措置をおこなうべきと考えます。

質問2−(2) 微小粒子状物質(PM2.5)については、大阪府は「環境保全目標」において、「1年平均値が15μg/m3以下であり、かつ、1日平均値が35μg/m3以下であること」と定めています。PM2.5は、常時監視の測定方法が定まっておらず、発生機構が明確でなく、発生源対策が立案できていない現状です。行政として、測定体制を強化し、早急に実態を調査して、対策を立案・実施することが必要だと考えます。 しかし同時に、そのための府の機関である環境農林水産総合研究所について、大阪府は現在、独立行政法人化する方針を打ち出しています。同研究所が独法化されれば、大気常時監視は府に、調査研究機能は法人の仕事となり、PM2.5対策にも支障をきたすことが懸念されています。わが党は、現在の拙速な独法化を取り下げ、各団体・府民や現場職員と検討・協議を充分におこなうよう求めています。
府民ネ 財政とのからみは拭えませんが、可及的すみやかに次の施策に優先して、助成制度の確立を急ぐべきだと思う。 質問2−(1) 賛成
質問2−(2) 賛成
社民ク 初めから、完全はできなくても、実現に向けて真剣に検討する課題だと考えます。 質問2-(1) 環境問題を大事に考える以上、この数値を目指さなくてはいけないと思います。大阪の場合具体的に如何していけばよいのか考えたいです。
質問2-(2) 同上
民主党 本件を井上議員(政調会長)にも確認し、府議会議員団としての見解を出すかどうかの判断を仰ぎましたが、不本意ながら、「回答しない」というのが本件に対する最終回答となりました。(民主党大阪府連)
維新の会 公開質問状は受け取り、内容も確認しました。この件については、重大な関心を持っています。但し、今回は回答はいたしかねるので、「受理」のみという取り扱いにさせていただきます。
自民党 回答未着
公明党 回答未着

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