大阪府域の自治体の「温暖化対策行政」

藤永 のぶよ(公害をなくす会機関紙委員会
おおさか市民ネットワーク)

?今なぜ、地方自治体の温暖化対策を重視するのか。

 温暖化現象(気候変動)は、世界各地で、大阪で、間違いなくすすんでいる。
 北極圏の海氷の減少。2008年8月日本列島付近の海表面温度が30℃以上になっている。大阪は全国一平均気温が上がっている地域。熱中症患者搬送数も全国一。

・産業革命以降100年間で地球地表面の平均気温が0.76℃上昇した。
このままでは、100年後には最大6.4℃上昇するという。(IPCC第4次報告書)

・平均気温上昇率をなんとしても2℃でとどめたい。残された時間は少ない。

・主要な原因物質CO2排出量の削減が急務。
京都議定書は2008年から2012年の間に1990年に比べて世界全体で7%減らそうという約束。日本は6%減が義務。実態は8.4%増加。

・今年はCOP15開催年。日本政府は、2050年に50〜80%減らすという提案をしたが、肝心の中期目標(2020年に20〜30%削減)については一切触れない。

・一方、国民には「省エネ・温暖化防止責任」を問い、大量排出者である企業には自主行動計画によって、可能な限り・・に留めている。
 『地域の汚染が地球の汚染』である。
温暖化も広い意味で『公害』である。「公害は発生源での規制する」が原則がである。

・ 国は2008年6月「温暖化防止対策推進法(温対法)」を改正し、温暖化防止における地方自治体の役割を大きく位置づけた。地方自治体こそ温暖化防止対策の主体である。では、いったいどんな仕事がなされているか?知るためにアンケートを実施した。

?「市民啓発中心」アンケートの結果

 設問は「担当部署の有無」「担当者数」「年間予算額」「エリア内から排出されるCO2の量」「実際に行われている活動や条例等制度の有無」などである。
 住民や企業など地域全体で取り組む必要のある「温暖化防止対策」では、ごみ問題同様「担当部署の設置」「職員の配置」「予算化」「現状把握と計画」「具体的取組の有無」を聞くところから始めた。

・府域43市町村のうち41自治体から回答があった。(95%)

・「担当部局の有無」
大阪市だけが「地球環境保全課」を設置。熊取町を除くすべてで「環境保全課」と「環境政策課」で兼務。兼務職員数を記入してきた自治体平均で5〜6人。

・「温暖化防止対策予算」大都市大阪市でも一般会計予算1兆5千9百億円の0.01%の1億7千万円にすぎません。予算ゼロという回答が12市町村。予算措置されていても一般会計予算の0.1%以下程度。『豊能町では1万6千円』これで何ができる?

・「地域のCO2の発生量」
74%に当たる32市町村で把握されていない。現状が把握されていない。
削減計画の立案が義務付けられている中核市の東大阪市、特例市の岸和田市・茨木市・八尾市・寝屋川市で掌握されていないのは問題。

・「実際に行っている活動
「打ち水」「ゴーヤカーテン」「環境家計簿」「環境フエアー」「市民向け講座」など
市民向け啓発事業に偏っている。自動販売機や24時間コンビニも含むエリア内事業
所からの排出に関してはほとんど関心が示されていない。

?なぜこうなるか?

温暖化防止対策の重点は、「脱化石・自然エネルギーへの転換」と「脱自動車・公共交通活用への転換」。しかし、大量排出源である「電力」で言うならば、発電事業者の脱化石努力よりも、むしろ「消費者・国民の省エネ努力」に焦点があたっています。

この背景には、日本独特の温室効果ガス排出量の計算方法「間接排出量勘定」がある。つまり「CO2は電気を使った方に責任がある」と言うものです。これによって電力会社の「総量を減らす」という責任が、発電原単位の削減という二次的なものに押しやられている。今回のアンケートで鮮明になった各自治体の温暖化防止活動が市民啓発に偏っているのもこういう背景があるから。

?それでも奮闘する地方自治体

 先進例:豊中市の温暖化防止対策
 1995年「環境基本条例」制定。1998年「環境基本計画(2005年改訂)」
 2005年度改正「豊中アジェンダ21」市域の一人あたりCO2排出量を90年比で4〜5%削減計画を遂行。2000年度「第3次豊中市総合計画」「実施計画」策定。
 2004年「環境の保全条例」制定。2005年「地域省エネビジョン」2005年「地域交通施策・省エネビジョン」策定。1996年「とよなか市民環境会議」設置。1998年「豊中アジェンダ21」策定。2003年「NPO法人豊中市民環境会議アジェンダ」設立。環境活動のプラットホームして活動。

?温対法の具体策

改正法第二十条の三は、?太陽光や風力など化石燃料以外の自然エネルギーの利用促進、?事業者や住民の温室効果ガス排出削減活動の促進、?公共交通の利用、都市における緑地保全と緑化推進、?廃棄物の発生を減らし循環型社会を形成すること、など例示している。

?大都市大阪がこれでいいの?

大阪府橋下知事は、維新改革で「温暖化防止対策予算」を削減している。
2012年に90年比9%削減が求められる大阪府。「子どもが笑える」ために、次世代に責任を果たすために、人を置き・予算を充実させ、抜本対策を実行するために府下市町村の取組を援助する、それこそ大阪府本来の仕事ではないだろうか?

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