2012年2月26日
公害環境デー実行委員会
今回の公害環境デーは、何時もの公害環境デーと持ち方を大幅に変えての開催となりました。
それは、昨年3月11日の東日本大震災の発生を受けて、原発の問題とともに地震・津波・防災の問題が大問題となっており、近畿にとっても東海・東南海・南海の巨大地震や上町断層帯直下型地震の発生が言われていることから、今回は地震・津波・防災問題に焦点を当てた公害環境デーにしようということになりました。
そうした趣旨で、今日はお二人の専門家にじっくり時間をとってご講演いただくことにしました。そして、この基調報告では、公害・環境問題全般がどうなっているか、どんな運動が求められているかなどについて、概観的に述べることにします。
1)地震・津波・防災問題
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、M9という巨大地震とそれに伴う大津波によって三陸沿岸各地で死者15,846人、行方不明3,321人、家屋の全壊12万8545戸、半壊24万3180戸、一部損壊67万2384戸(2月2日現在)、避難者34万1411人(1月26日現在)という未曾有の大災害をもたらしました。1896年の明治三陸津波に匹敵する人的被害をもたらした背景には、地震国日本での防災問題に本腰を入れてこなかった国の姿勢や観測機関や研究機関の判断の甘さがあり、その責任はきわめて重大です。加えて今回の震災は、将来起こりうる巨大災害を如何にとらえ、如何に備えるべきかについて、行政のみならず私たち住民にも課題を突きつけるものとなりました。
地震・津波の問題は、「はじめに」でも触れたように近畿・大阪でも近い将来東海・東南海・南海の巨大地震や上町断層帯直下型地震の発生が警告されており、決して遠い世界の話ではありません。もし東海・東南海・南海の三連動巨大地震とそれに伴う大津波が発生すれば、大阪でも津波による浸水、湾内のコンビナートやガスタンクなどの被災による大火災、地盤の液状化、地下街や高層ビル問題、住宅密集地域問題、山沿いや傾斜地での崩落問題などが発生します。
阪神淡路大震災からまだ17年しか経っていないのに、行政は阪神淡路大震災で提起された問題から次第に手を引き、震災対策・防災問題が後景に追いやられる状況にありました。私たちは阪神淡路大震災の直下型巨大地震、そして、今回の海溝型巨大地震とそれによる大津波を教訓にして、この問題を風化させずに、今こそ地震・津波・防災問題を大阪の問題に引きつけて、安全・安心の街づくり運動とリンクさせながら取り組んでいくことが大切です。
2)原発問題
東日本大震災で発生した福島第1原発の事故は、原発問題の深刻さを白日のもとにさらしました。
原発は一旦過酷事故を起こせば制御の出来ない、他の事故とは比べものにならない大規模・広範囲でしかも長期にわたる深刻な災害となること、いったん放射能に汚染されればその除去は大変困難な事態になることなど、正に最大級の環境破壊、生活破壊の災害となるのが原発事故であることを示しました。加えて、原発は仮に「安全性」が確保されたとしても、原子力発電の過程で日々生成される放射性廃棄物の処理・処分方法が確立されないという根本的な問題を抱えており、この一事をとっても原発は「廃止する」以外にないことが明白となりました。同時に、原発がなくなったら日本の電力はどうなるなどの不安や疑問をいだいている人もたくさんいます。私たちは自然エネルギーの資源は膨大で活用に本腰を入れれば電力は十分賄えるし、環境にもやさしく、子どもたちに残すべきエネルギー・システムであると考えます。そうした立場から原発ゼロの会・大阪が呼びかける【1】原発は地震国日本にとっては余りにも危険。廃止して、ゼロにしよう、【2】日本の電力・エネルギー政策を自然エネルギーの方向に大きく転換しよう、という二つの要求を一致点にした府民運動を大きく前進させていきましょう。
関西では福井県の若狭湾に、“原発銀座”と言われるほどたくさんの原発が立地されています。そして、もしこの福井の原発群で地震・津波が発生し、福島第一原発のような事故が起これば、琵琶湖の水が汚染され、真っ先に私たちの飲み水がなくなるなど深刻な事態となります。そして、福井原発の最大の電力消費地は大阪です。原発立地県でのたたかいと電力消費地でのたたかいが連帯することが重要です。大飯原発の再稼動に反対する福井のたたかいと連携し、再稼動を許さない取り組みをすすめましょう。学習会や見学会など無数に開催し、原発ゼロ、自然エネルギー推進の運動を職場、地域、学園あらゆるところですすめましょう。
東日本大震災が突きつけた地震・津波・防災と原発・エネルギーという二つの大きな課題を正面から受け止め、今日の公害・環境デーを皮切りに府民運動を大きく前進させていきましょう。
1)泉南アスベスト国賠訴訟
泉南のアスベストで中皮種や石綿肺がんになった患者たちが、「国は知っていた。出来た。でも、やらなかった」として国に責任を追及し、損害賠償を求めた泉南アスベスト国賠訴訟は、2010年5月に大阪地裁で国の不作為責任を全面的に認める画期的な判決くだされ、一刻も早く被害者を救済するために判決に基づく「和解」が求められていました。しかし、国は「和解」に応じず控訴。そして、大阪高裁は2011年8月二審判決で、一審判決を完全に覆し、被告の請求を却下する不当な判決を下しました。その内容は、産業の発展と人の健康を天秤にかけた行政を容認し、産業の発展のためには多少の犠牲は仕方ないという“経済との調和”の考え方を復活させ、さらに、アスベストによる健康被害は「マスクをつけなかった本人の責任」「アスベスト粉塵の付着した作業衣を自宅に持ち帰った労働者が悪い」など、健康被害の責任を被害者の“自己責任”とする、公害裁判、被害者救済の到達点を半世紀も前に逆戻りさせるまったくの不当な判決でした。
アスベスト被害者は、二審判決の不当性を徹底的に明らかにして2011年8月31日には最高裁に上告、11月22日には1008人の上告代理人を得て上告理由書・上告受理申立書を提出し、最高裁でのたたかいをすすめています。2陣訴訟も2011年10月26日には結審し、本年3月28日には判決があります。国の責任を明確にし、救済に着手させるため、裁判でのたたかいを支援するとともに、世論を大きく盛り上げていきましょう。
2)寝屋川「廃プラ」公害の根絶に向けて
二つの「廃プラ」処理工場から排出される化学物質で周辺住民に深刻な健康被害が生じている寝屋川「廃プラ」問題では、昨年1月の2審判決で、健康被害(症状)の存在は認めながらも、それが二つの施設に原因するものとは認定できない、何故なら「因果関係があるなら施設から同心円に被害が出るはず」だがそうなっていないとして控訴却下を言い渡しました。この論拠がまったく不当であることは、福島第1原発の事故で放出された放射能の汚染地図が同心円になっていないこと一つとってみても明白です。
どんなことがあっても泣き寝入りは出来ないとして被害住民は昨年2月に代表51名で、公害等調整委員会(公調委)に対し、健康被害の原因解明を求める「原因裁定」の申請を行い、受理され、現在審理が行われています。イコール社と4市リサイクル施設組合は公調委に対し“裁判で決着がついた問題を蒸し返すような審理をするな”と申し出ましたが、裁定委員長は「公害の原因を専門家を交え、科学的審理を追究し、判断するのが公調委の職務」として明快に退け、専門家による現地調査なども行いながら審理をすすめています。
一方、大阪府の態度は、「大阪高裁の判決やこれまでの環境調査の結果、地元市から要請がないことなどを総合的に判断して、調査が必要との認識には至っていない」(公害をなくす会の要望書に対する回答)と公衆衛生の観点の欠落した姿勢をとり続けています。こうした中、昨年3月に策定された大阪府の『新環境総合計画』では、化学物質について「人・動植物への極めて深刻な悪影響が懸念される化学物質については、完全な科学的根拠が欠如していることを対策延期の理由とはせず、科学的知見の充実に努めながら対策を行うという、予防的取り組みの考え方に基づく対策が必要です」と明記しています。
3)ぜんそく被害者の救済運動
環境省のもとに設置され2006年から1万2000人の学童、07年からは10万人の幼児、08年からは11万人の成人を対象に「局地的大気汚染の健康影響に関する疫学調査」を行ってきたそら(SORA)プロジェクトは、昨年5月に調査報告書を発表しました。その中でそらプロジェクトは、学童調査においては「自動車排出ガスへの曝露とぜん息発症との間に関連性が認められた」と明確に結論づけ、乳児調査でも「副次的な解析」で、成人調査では「症例対照研究」や「断面調査」において関連性に有意があったことに「留意する必要がある」と述べるとともに、「国(環境省)においては、…健康影響リスクのより一層の低減に向け、自動車排ガス対策やPM2.5対策を含む大気環境保全対策を積極的に推進すべき」と提言しています。調査結果に基づくこの提言は重要で、報告書の中にある「関連性を結論付けることは出来なかった」とか「健康影響を引き続き注視」などの文言を捉えて、何も解明されなかったように歪曲し、被害者救済を先送りするようにことを許さない提言となっています。
私たちは今回のそらプロジェクトの疫学調査で、自動車排ガスとぜん息発症の間に関連性があることがはっきりしたこと、だからこそ健康影響のリスク低減のために「自動車排ガス対策やPM2.5対策を含む大気環境保全対策」が重要であると指摘されている点に確信を持って、ぜん息被害者を救済する制度の創設を迫っていきましょう。あおぞらプロジェクト大阪とぜん息被害者の救済を求める会は、昨年4月から大阪府議会と国会に対する請願署名に取り組み、2月23日には3万4000筆の請願署名を大阪府議会に提出しました。府議会では3月中には表決される予定です。こうした取り組みなどを節にしながら、引き続き救済制度の創設を求める運動を発展させましょう。
救済されないまま亡くなっていく被害者が後を絶ちません。被害者救済は待ったなしの課題です。被害者の命あるうちの救済をめざして全力をあげましょう。
1)公害のない第2京阪道路を求める運動
第二京阪道路は、1969年の大阪府域都市計画決定から2010年3月の全線開通まで、大阪府域5市住民の40年にわたる粘り強い運動によって、騒音対策(8m遮音壁・裏面吸音板の設置、低騒音舗装の実施)、掘割区域の改善(フタかけ、トンネル区域上部の一部公園化)、高架下利用(多目的広場、駐車場)、沿道残地の公園化などの成果を実現しました。さらに、住民の要求によって、沿道の枚方・交野・寝屋川・門真4市に各2局の常時監視測定局が設置されました。これら監視局の供用開始後1年間のNO2濃度(年平均値)と、供用開始前のNO2測定データが利用できる監視局または設置予定場所のNO2濃度(年平均値に換算)を比較すると、供用前にほぼ13〜14ppbであったNO2濃度が供用後に約5ppb程度増加していることが分かりました(門真市を除く)。これは、供用開始前に設置者が住民に説明したアセスメント値の約5倍であり、環境アセスメントが甘いことが明かになりました。現在の交通量約6万台/日が予測交通量約8〜10万台/日になれば、供用開始前より約10ppbのNO2増加が見込まれ、汚染区域の急増が危惧されます。環境監視のいっそうの強化とともに、周辺道路の安全と交通事故防止対策の要求などを続けることが必要です。
2)迷走する淀川左岸線(2期)事業
大阪市が街路事業として行い、阪神高速道路株式会社が高速道路の維持管理・運営を行う合併施工方式の淀川左岸線2期(大阪西宮線〜新御堂筋線)は、延長約4kmに渡り淀川堤防の中に開削トンネル等を設置する全国でも類例のない構造形態であると2011年5月10日開催の大阪府公害審査会調停委員会で説明されました。淀川左岸線(2期)については、2004年3月に報告された「淀川左岸線(2期)の建設に関する検討委員会」の「委員会総括」で、「雨水と河川水の浸透・地震と交通による振動・堤防地盤変状影響など検討した結果、堤防の安全基準をクリアーしている」と言明されています。もし技術的課題や安全基準をクリアーしているのであれば河川管理者との協議もスムーズに進み合意に至るはずなのに、基本設計が進まないばかりか、昨年5月には突然、非公開の「技術検討委員会」を立ち上げています。大阪市は基本設計がすすまない原因について明らかにしていません。
スーパー堤防計画が完成するまでは、暫定スーパー堤防の一部となり兼用工作物(河川道路)として取り扱うという方針が確定していながら、2010年11月30日開催の大阪市と近畿整備局の打ち合わせでは、それまでトンネル上の土被りを全区間1mとしていたものを“0m”へと変更し、また、堤防の高さで現状の方が計画堤防の高さより高いところは計画堤防の高さまで低くすることが検討されています。これでは、堤防の安全性、スーパー堤防との整合性が確保されるか大いに疑問です。
3)高速道路「大阪泉北線」計画廃止から住民参加での「風かおる、みち」へ
大阪泉北線計画は、天王寺〜杉本町までJR阪和線高架化と一体に、6車線幅26m、高さ20〜25m、一日走行車両予測13万8000台という巨大な三重構造の都市計画で、1981年に決定されました。その後、沿線住民の道路公害反対運動、阪神淡路大震災の発生、長居断層の判明、安全なまちづくり世論の広がりなどで、都市計画決定後で全国初となる高速道路計画廃止(2004年2月)の成果をあげました。阪和線高架化(南田辺・鶴ケ丘・長居・我孫子町)は、長時間の交通渋滞解消(12ケ所)や踏切事故の根絶を求める声が高まり、早期実現を求める粘り強い運動の中、2006年5月に高架化が実現しました。同時に沿線の美章園駅のバリアフリー化も、周辺住民の9年越しの運動で2008年3月にエレベーターの設置をはじめ駅のバリアフリー化が実現しました。
大阪泉北線計画の跡地活用では、大阪市が「天王寺大和川線整備計画(5.5?)」として緑道を中心とした風かおる“みち”を発表し、初めて住民参加での計画づくりが提案され、3年越しの討論の中で「みどりの中をゆったりと散策でき水を感じる場所」「イベントなど開催できる駅前ひろばに」「通過車両は極力防ぐ」「子どもからお年寄りまでゆったりと歩ける遊歩道」「自転車道は別に確保」「この緑道が防災にも役立つように」などの合意案がまとまってきています。
これら一連の運動は、道路公害に反対し、東住吉区の環境を守り街づくりを考える連絡会と、阿倍野区・住吉区の住民運動の連携で運動が取り組まれています。道路公害に反対する運動が高速道路建設計画を断念させ、さらにその跡地をめぐって住みよい街づくりの取り組みに発展している運動として注目されます。
1)京都議定書の継続と新国際協定の策定を合意したCOP17
昨年11月末から南アフリカ共和国のダーバンで開かれた国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)は、先進国と途上国の対立や2012年には主要国で大型選挙があることなどから“何も決められないだろう”と言われていましたが、12月11日、京都議定書の第2約束期間(2013年開始)を設定することを決定しました。京都議定書は、現在、地球温暖化防止のための法的拘束力のある唯一の国際条約で、その第一約束期間は2008年から2012年となっており、もし今回の会議で何も決められなければ、第一約束期間終了後に国際的な温暖化対策のうえで空白が生じるという重大な情勢にありました。参加した多くの国は空白になる事態を回避するためのギリギリの努力を行い、第2約束期間の設定に合意し、京都議定書を継続することで合意しました。これには欧州連合(EU)を含む39カ国・地域が参加します。
またCOP17では、京都議定書で温室効果ガス削減に義務を負わない米国、中国を含めて「全ての加盟国に適用される」新たな国際協定を作る交渉を開始し、2015年までに採択し、2020年以降に実行することも合意されました。2013年からの開始を目指していた新協定は、開始が大幅に遅れることになりましたが、今後の道筋が合意されたという点では、これからの足がかりを築いたものとして評価されます。
2)世界の流れに背を向けた日本政府
これに対し日本政府は、京都議定書の議長国であったにもかかわらず京都議定書の延長に反対し、最初から京都議定書第2約束期間への不参加を表明、また、会議途中で細野環境相が帰国してしまうなど、COP17での交渉の前進を妨害しました。日本政府の第2約束期間への不参加の理由は、京都議定書が世界のCO2排出量の4分の1しかカバーしておらず、CO2削減の国際枠組みとして“役に立たない”と言うものですが、「共通だが差異ある責任」の原則に基づく先進国の果たすべき役割を放棄した暴論と言わざるを得ません。それは、民主党・鳩山政権が国際公約した「2020年までにCO2を90年度比で25%削減する」との中期目標の放棄を迫り、CO2 の削減は“各国の自主的な取り組みだけでよい”として法的拘束力のある京都議定書からの離脱、温暖化対策の骨抜きを求める日本経済界の意向に沿ったものであることは明白です。
私たちは、日本政府に対し京都議定書第2約束期間に一刻も早く参加するとともに、世界に向って公約した「CO225%削減」の方針を堅持するとともに、その具体化を強く求めます。
昨年3月に大阪府の『新環境総合計画』が策定されました。環境総合計画とは、そもそもは公害による府民の健康被害を許さないために大阪の環境はどうあるべきかを示す総合計画でしたが、『新環境総合計画』では大気汚染などによる府民の健康被害がどうなっているかの分析などまったくなく、あたかも“公害は終わった”というスタンスで、低炭素・省エネルギー社会や循環型社会の構築を前面に押し出した計画になっています。しかも、ここでも歴史的な原因・要因分析がないため、「地球温暖化をストップ!」とか「生物の多様性をまもる」などといっても、スローガンばかりの具体性のない内容になっています。NO2の環境保全目標は「0.06ppm以下を確実に達成するとともに、0.04ppm以上の地域を改善する」といったあいまいな表現になっています。また、府立環境農林水産総合試験所(東成区)を2012年4月から独立行政法人化する施策も進められています。独立行政法人化では、人事面では事務職員を中心に大量の人員削減を行い、財政面では「民間企業からの受託研究等の拡充により独自収入の増加」が強調され、人と金の両面から公的責任が果たせなくなる計画になっています。計画が掲げる「きめ細かな府民ニーズを把握し、新たな研究分野への展開を図る」などという独立行政法人化の理由は、独立行政法人化しなくても内部努力でできるし、また、やるべき内容です。
一方、公害をなくす会が今年1月に行った大阪府との「懇談」では、例えば福井の原発で事故が起こった場合の対応については「関西広域連合において…」とか「関西広域連合の一員として…」など府としての主体性がまったくない回答に終始し、また、PM2.5の観測体制では府所管分について述べるだけで、権限委譲を行った地域の観測体制については当該市町村任せの態度を取っていました。ある時は国や関西広域連合の動向を見て、また、ある時はそれは市町村の問題と逃げ、結局府は責任は取らず、府民要求に背を向けるというのが顕著になっています。
本年5月17日から18日にかけて、府下いっせいNO2簡易測定運動である第7回ソラダス2012が取り組まれます。前回のソラダスから6年を経て実施されるソラダスは、【1】約1000メートル(大阪市内は約500メートル)区画ごとに5個以上のカプセルを取り付けてNO2濃度の実態を面として調べるメッシュ測定、【2】道路沿道や環境教育などそれぞれの目的に応じて測る団体・グループ・個人の自主測定の二つからなっています。メッシュの線引きは、今回から緯度・経度を使うことになりました。
環境基準は、汚染状態の評価をはじめ環境行政全般にわたる重要な判断基準です。何よりも人の健康を守るために運用されるべきです。にもかかわらずNO2環境基準は行政の都合優先で扱われています。NO2環境基準は0.04ppm〜0.06ppmとなってますが、1978年の設定から30年以上経つのに今になっても達成されず、しかも事実上その上限値0.06ppmが基準であるかのごとく扱われる傾向があります。そのもとでぜん息を患う学童・生徒が増え続けています。
自動車排ガスなど大気汚染によって苦しめられるのは私たち住民です。私たち自身の手でNO2濃度をはかり、汚染の実態をつかみ、行政や産業界に訴えていくことが大切になっています。みんなの力で第7回ソラダス2012を成功させましょう。
大阪では40年前、公害や老人医療問題などでの大きな府民運動が盛り上がりの中で府民を主人公にする府政を誕生させ、そのもとで公害被害者に対する救済と厳しい公害規制、そして、老人医療の無料制度などを実現し、それを国の制度にまで発展させていったという歴史を持っています。
いま大阪では、昨年11月の大阪府知事選・大阪市長選のダブル選挙で大阪維新の会が推す知事と大阪市長が誕生し、教育の分野では学校を“できる学校”“できない学校”に振り分けてしまう学力テストの学校別公表や、学区制を廃止し“生徒が集まらない学校”をつくり出して3年連続定数割れの学校は廃校にしてしまう教育基本条例案、職員の分野では職員評価に“相対評価”制度を導入し、上司の職務命令を絶対的なものとする職員基本条例案などが強行されようとしています。大阪市の橋下市長に至っては、名前・職員番号まで書かせたうえで「組合活動に参加したか」「誘われたか」「誘った人は誰か」など、違法・違憲の思想調査を業務命令として強行しています。
一方国の方では、日本の農業や食品、医療、労働市場に重大な影響を与えるTPP、税と社会保障の一体改革の名のもとに消費税の大幅アップ、沖縄普天間基地の辺野古への移設など、日本の針路や国のあり方にもかかわる重要案件が目白押しで審議され、強行されようとしています。
私たちの公害・環境問題をめぐるたたかいや運動も、こうした政治情勢と無関係ではありません。住民を大切にし、住民・国民を主人公とする政治に流れを変える視点も重視しながら、私たちの運動を一歩ずつ前進させていきましょう。
以上