寝屋川「廃プラ」公害の根絶に向けて

廃プラ処理による公害から健康と環境を守る会

1.心配が現実に

 8年前、廃プラ処理による公害から健康と環境を守る会を立ち上げ、がんばって住民運動を続けてきました。8万の署名を2回集め、1000人集会とデモも行いました。操業後に悪臭と健康被害の訴えが急増し、市や市議会、大阪府、保健所に繰り返し健康調査を訴えても埒が明かず。7年前に裁判所に訴えましたが、仮処分、1審、2審と3連敗という結果でした。
 岡山大学の津田教授による2度の疫学調査で、眼や喉が痛い、咳が止まらない、湿疹が繰り返し出る、ぜん息になった、頭が痛いなど病気のデパートのような多彩な症状を1000名を超える住民が訴えていることが明らかになりました。津田先生は、廃プラ操業後に、廃プラ施設に近いほど病気の人がたくさん発症していることを明らかにしました。そして廃プラ施設が原因であると裁判所に意見を提出しました。
小松病院の原田院長やアレルギー専門医の真鍋先生が百数十名の検診を行い、相当数の住民が、廃プラが原因としか考えられないという診断を受けました。
また、昨年、東京まで出かけ、化学物質による病気の診断で第一人者である宮田幹夫北里大学名誉教授の診断を受け、先生から、受診した全員が自律神経失調、中枢神経機能障害であり、自覚症状はなくてもそうなっている人が多い可能性がある、人生を棒に振る人が出たり、子どもへの影響が心配されるというショッキングな診断をうけました。最近も若い娘さんが顔をお岩さんのように腫らし、医者で治らず、中には引っ越した人が何人もいます。

2.被害を救済できない裁判所

 しかしながら、裁判所は、優れた専門家の調査結果に基づく意見をことごとく採用せず、健康被害を訴える住民や医師の証言の申し出を却下して、耳を貸そうとしない冷たい態度を取りました。そして判決では、事業者が主張する「すべて環境基準以下であるから健康被害が出るはずがない」「(水洗いの特殊)クリーニング業をしている藤田さんのところから有害な化学物質が出ていると考えられる」など根も葉もない言い分を支持して、住民の訴えを認めませんでした。
 裁判所は、科学が分からない裁判官がいること、調べもせずに行政の肩をもつことがあること、住民の健康や人権を踏みにじっても平気という、まるで江戸時代の悪代官のようなものを今も引きずっているのかと思わずにはいられません。

3.「泣き寝入りできない」と公調委に申請

といって、泣き寝入りするわけには行きません。そこで、私たちは裁判所と独立して、公害の原因を調べ、公害を根絶する目的で作られている総務省の行政委員会である公害等調整委員会(公調委)に対し、今年2月、健康被害を訴える住民51名が、公害の原因を明らかにしてくれるよう「原因裁定」を申請しました。公調委は直ちに申請を受理し、審理が始まっています。
 ところがイコール社と、北河内4市リサイクル施設組合は「裁判が終わったのだから、蒸し返すような審理をするな。司法権の侵害だ、憲法違反だ」と2回にわたり公調委に申し出ました。
しかし、8月2日、第一回審問で、公調委の裁定委員長は、「裁判で確定したのは、操業停止の訴えは今後受け付けないということだけである。公害の原因を、専門家を交え、科学的真理を追究する立場で調べて、裁判所とは別に判断をするのが公調委の職責である。事業者らが審理をするなという申し出は認められない」と胸のすく見解を明快に述べました。
 11月7日には、公調委に対し、専門家による意見書と共に、51名の申請人が、自らの体験に基づく症状、どうして廃プラのせいだと思うのかを書き、また医師の診断内容をつけて全員が陳述書を提出しました。
 また、新たに第2次申請人をつのり、真鍋先生に2度来ていただき、新たに10数名の申請人を準備しています。第2次申請人の特徴は、施設から2kmはなれた香里園の境橋町、そして明徳町、宇谷小学校前のダイヤパレスマンション、打上高塚町のファミーユ(てんとう虫マンション)の方など健康被害が広がってきていることです。

4.猛毒ホルムアルデヒド30倍検出

 また、柳沢先生の調査結果は、太秦第二ハイツ公民館でホルムアルデヒドが、全国平均の7倍、最大値では30倍もの濃い濃度が検出されました。この物質はシックハウスの主な原因であり、また「身体がふらつく」、「味が分からなくなる」など神経症状の原因物質でもあります。さらに国際機関が発がん物質として認めており、専門家の報告によれば空気中化学物質の3%ときわめて少ないホルムアルデヒドが、逆に発ガンリスクは41%であるとされています。たいへん恐ろしいことです。 

5.「守る会」会員の増加、カンパにご協力をお願いします。

 一刻も早く、きれいな空気を取り戻し、健康で安心して暮らせる寝屋川を取り戻すため、地元だけでなく、寝屋川中から「守る会」の幹事を選んでもらい、会員拡大、会費やカンパ集めに取組んでいます。幹事は夏から10名ほど増え30名を超えました。枚方の元市会議員の伊藤和嘉子さんも毎回幹事会に出席していただいています。そこでは、公害問題と共に、600円のリサイクル・パレットを製造するのに5000円のコストをかけ(毎日新聞)、廃プラの回収や施設組合に4億円もの税を投入するなど環境によいどころか経済合理性さえなく廃プラは元のように燃やすことが良いことを訴えて行く議論が弾んでいます。
いま、「守る会」は資金が底をついて、来年2月23日に第2回審問に東京に行く費用など、やりくりがたいへんです。ぜひご協力をお願いいたします。1月31日には、公調委の裁定委員や専門委員による初めての現地調査があります。
 これからが正念場です。頼みは、科学者が因果関係の証明を積み重ねていただくこと、申請人をさらに増やすこと、そして、世論を高めるため、多くの方に会員になっていただき、たくさんカンパを頂くことです。 エコのためといいながら、公害をおこしている寝屋川廃プラ公害はおそらく世界でも始めての新しい公害です。この1年が勝負と思っております。お力を貸してください。よろしくお願いいたします。

以上


(資料)

公調委に申請した住民の陳述書より   寝屋川市太秦東が丘 20代 女性

○ 環境の変化 
この場所に居住した理由の一つが自然が豊かで、幼い頃から風邪をよくひていた私には環境がいいと両親が思ってくれたからです。ところが、最近は第2京阪道路の建設と共に、イコール社と4市共同施設ができて、住環境が大きく変わってしまいました。特に臭いについては耐え難いほどの異臭がします。ホームセンターなどにある芳香剤コーナーの臭いを思い出してください。その臭いに様々な悪臭(卵の腐ったような臭いなど)が混ざったようなきつい匂いがします。暑い時期にもその匂いがあるため窓を開けるのも躊躇われるほどです。

○ 健康上の変化 
こちらへ引っ越してきて殆ど風邪をひくこともなく、毎日治水緑地などで遊んでいました。しかし、平成16年暮れから風邪をひくようになり、治りかけても息苦しさや全身の怠さ、無気力感がひどくなり、かかりつけ医からは「体が回復していないJ との診断を受け、ほぼ毎回注射を打ってもらっていました。ところが、変な匂いを感じ始めた頃から、風邪を引くと呼吸困難に陥るようになりました。薬を飲んでも効かず、一向に治る気配がありませんでした。学校で勉強していても頭に霞みがかかったように何も入らず、得意科目であった音楽でさえやる気が起こらなかったほどでした。今年に入って保育園へ就職し、職場は大阪市内にあるのですが、仕事場に行くと呼吸がとても楽になります。しかし、寝屋川に帰ってくると息が苦しくなり、家の近くになると咳が止まらず、眼のかゆみや鼻水も止まらなくなります。一番しんどいのは、仕事柄、こどもたちと走り回って遊ぶので毎日とても疲れますが、寝て2時間ほどすると咳が出てきて起こされます。そこからは眠ることができず、ほとんど寝無いで出勤することが続いています。処方される薬も強くなっていくので体にも負荷が掛かり、今では薬がないと呼吸するのさえままならないほどです。

○ 健康悪化の原因 
思い起こすと、私が喘息のような症状を始めて体験した頃操業が始まって6ケ月ほど経ったときで外に出ると変な臭いを感じ始めた頃でした。このようなことから、私が喘息のような発作が出たり、それが酷くなったこととイコール者の工場からの悪臭を伴う大気汚染とは何らかの関係があるのではないかと思っております。また、最近、いろいろな体の変化に気がつきました。一つ日は『味覚』です。お母さんが作ってくれる煮物やお吸い物の風味が全くと言っていいほど分からなくなってきていて、美味しいと感じなくなってきています。食欲も低下してきています。二つ日は『手足が攣る事』です。ただ座って小説などを読んでいるときなど、いきなり足がつったり、子どもと手をつないで歩いているだけで手首がつったりします。その他にもこの年齢で出るにはおかしい症状がどんどん出てきています。記憶することが苦手なのでメモを取っても、後から読んでも思い出せなかったり、忘れ物がひどかったり、健康診断では異常なしと出ていたのにもかかわらず、立ち上がると貧血を起こしたり眩卓を起こしたり、本当に毎日暮らしていくのがしんどいのです。

○私と同じ不安を感じている人たちは周りに大勢います。例えば近所に住む幼稚園に通う男の子の外で元気に遊ぶ姿を見かけなくなりました。幼稚園からバスで帰ってきた子どもたちも近くの公園では全く見かけなくなり、すぐに帰る姿をよく見かけるようになりました。

○ おわりに
二つの廃プラ処理工場からの化学物質や開通した第二京阪道路からの自動車排ガスに苦しむのは私たち近くの住民たちです。「こんなに緑いっぱいのところに住むことができてよかった」と喜んでいた住民が、その環境と健康に不安を感じているという切ない気持ちをご理解ください。そして、苦労してやっと求めたこの家でのささやかな幸せを願う私たちの夢を壊さないようご尽力くださることを心からお願い申し上げます。

上記資料のPDF版はこちらをダウンロードしてください。
寝屋川「廃プラ」公害の根絶に向けて