第41回公害環境デー基調報告

2013年1月26日
第41回公害環境デー実行委員会

<はじめに>

*2012年12月16日投・開票で総選挙が実施された。原発ゼロ、消費税、TPP(環太平洋経済連携協定)、オスプレイ・基地、集団的自衛権、憲法などが問われる重要な選挙となった。

*結果は、民主党が“惨敗”(230→57)し、自民党が“圧勝”(119→294)して自公政権が復活した。しかし実態は、得票を大きく減らした(約300万票)なかでの「議席増」(両党で139→325)であり、マスコミの争点ぼかしと民意を反映しない小選挙区制という選挙制度によるものである。

*今後、自公政権は国会での多数を背景に、原発の再稼動・新設・増設、消費税増税、TPP参加などを強行してくる可能性が強い。憲法問題では、維新の会なども巻き込んで取りあえず96条の改定を突破口に九条を変えてしまう危険性も出ている。

*そんな情勢だからこそ、私たちは公害や環境問題、原発ゼロなどの府民運動をいっそう粘り強くに取り組み、消費税、TPP、憲法問題など様々な国民運動と手を携えて運動を発展させ、要求実現の展望を切り開いていくことが大事になっている。

*今回の公害環境デーは、原発の問題点と原発ゼロへの取り組みとともに、自然エネルギー推進、省エネ・低エネルギー社会への道筋と展望を明らかにすることが、原発ゼロの府民運動をすすめるうえでも重要になっていると考え、「みんなで考えよう!環境とエネルギー、行動しよう!原発ゼロをめざして」を中心スローガンにするとともに、午前中に3つのワークショップを開催した。

(1)この1年間、地震・津波・防災問題、原発問題はどこまですすんだか

1)地震・津波・防災問題

*1995年の阪神淡路大震災以降、日本は地震の活性期に入ってきているといわれる。そうした中での一昨年3月11日の東日本大震災の発生である。

*そんな中、昨年9月に内閣府は、南海トラフと巨大地震による人的被害の推計を発表した。それによるとマグニチュード9クラスの地震が発生した場合の犠牲者数は、津波で23万人、建物倒壊で8万2000人、死者の総数は最大で32万3000人と推計されている。

*そのような巨大地震が起こった場合大阪では、震度6の激震による建物倒壊、しかも3分間にもわたる長周期地震動と共鳴して起こる高層ビルの揺れ、淀川河口や湾岸部など地盤の弱い部分や埋立地域での液状化、波高5メートルといわれる津波による直接的な被害、地下街や地下鉄の冠水、さらには自動車や大阪湾の石油タンク、コンテナ、大型タンカーなどの漂流による建物破壊と同時多発的な火災の発生などが想定される。

*2012年12月21日に政府が公表した地震動予想地図によれば、今後30年以内に震度6以上の地震の発生確率は静岡の89.7%(以下略)をトップに津87.4、千葉75.7となっている。また、東京は23.2、横浜71.0、名古屋46.4、大阪62.8などとなっており、日本列島はどこでも地震が起きる可能性がある。これらの予測、警告を正面から受け止めて、当面100年に一度といわれるような地震・津波への対策、災害に強い街づくりが強く求められている。

2)原発問題

*日本の原発は、昨年5月5日、北海道の泊原発が定期検査に入って停止したのを機に、いったん全ての原発が停止する、いわば“原発ゼロ”の状態になった。

*こうした中、原発に固執する電力各社や財界、なかでも原発依存度の一番高い関西電力は、「大飯原発3・4号機を再稼動させなかったら夏場に重大な電力不足が生じる」と脅して関西広域連合を屈服させ、民主党政権に再稼動容認を迫った。これを受けて民主党政権は急場しのぎの“安全基準”をつくり、形ばかりの審査を行って、「必要性と安全性が確認できた」として大飯原発3・4号機の再稼動を容認してしまった。

*しかし、昨年の夏の電力の需給実績は原発の稼動なしでも全国はもとより関西電力管内でも電力が足りたことを実証し、「必要性」はもろくも破綻した。また、「安全性」についても福島第一原発事故の真相が解明されていないこと一つとってみても、「確認できた」などと言える状況にはない。しかも現在、大飯や東通、志賀などの各原発の直下や敷地内の断層調査が行われ、それぞれ「活断層」の疑いが濃厚になっている。地震が多発し、活断層が縦横に走る日本列島で原発に「安全」などというところはどこにもない。

*現在関西電力は、“電力不足”論を引っ込め、原発を稼動させなかったら内に向っては「膨大な経常赤字が生じる」、外に向っては「燃料費の高騰で電気料金を値上げせざるを得ない」と脅して、あくまでも原発の稼動継続、再稼動を主張している。しかし、燃料費が高くなるのは、買い付けから納入までの間に電力会社の子会社が入り、そこを経由する中で値段が吊り上げられる構造になっているからだ。実際、LNGの購入価格はイギリスの1.5倍、アメリカの4.4倍にもなっている。子会社は差益で儲け、電力会社は吊り上げられた購入価格を原価に入れる「総括原価方式」でもっと儲けるという構造がある。巨額な役員報酬や宣伝費、寄付金などの見直しとともに、こうした構造こそ先ず改められるべきである。原発依存の企業体質にしてしまった失敗のツケを、簡単に利用者・消費者に回すなどということは断じて許せない暴挙である。

*国民のたたかいは、昨年7月16日の東京での集会には17万人が集まり、また、毎週金曜日の首相官邸前や関西電力本社前での抗議集会など大きく発展してきている。安倍自民党政権は、「原発は日本にとって重要な電力資源」として、原発の再稼動とともに新設、増設を強行する危険性がある。しかし、自民党が選挙で圧勝したからといって、原発の危険性がなくなるわけでもないし、放射性廃棄物の問題が解決するわけでもない。福島県民は今なお16万人が避難所生活を強いられており、深刻な事態が続いている。

*本年7月には原子力規制委員会が新しい安全基準を決めるという。福島第1原発の事故も未解明な中での新安全基準の確定は拙速であり、新たな“安全神話”によって再び原発の再稼動と新設・増設の容認に向う危険性を持っている。私たちは、原発問題を風化させること無く粘り強く追及し、引き続き原発をなくし、自然エネルギーを推進する府民運動を大きく発展させよう。

(2)被害者救済運動の到達点と課題

1)泉南アスベスト国賠訴訟

*2010年の大阪地裁で勝訴した大阪のアスベスト国賠訴訟は、2011年夏の大阪高裁判決は「産業発展のためには、人の命も健康も犠牲になっても仕方ない」といわんばかりの不当な判決を受け、直ちに最高裁に上告した。一方、昨年3月28日にあった2陣訴訟の1審判決は、再び国に対して1億7000万円の支払いを命じるなど、原告勝訴の判決を下した。現在、高裁で審理がすすんでおり、本年5月には結審、秋口には判決が予想されている。

*こうした中、昨年12月5日には首都圏の建設労働者や遺族337人が国と建材メーカーを相手取り賠償を求めた首都圏建設アスベスト東京訴訟の判決があり、地裁は“国は1970年初めにはアスベストの発がん性を認識しており、規制措置をとっていればその後の被害は防ぐことが出来た”として、国の規制権限不行使を断罪し、原告170人に対し総額10億6394万円の賠償を命じた。

*アスベストによる「中皮種」などの健康被害は、潜伏期間の長さから“静かな時限爆弾”とも言われている。阪神淡路大震災の混乱の中で飛散防止対策のない中で復旧作業に従事した人たちの中にも、すでに中皮種が発症し、“何時発症するか”という不安が広がっている。また、東日本大震災によるガレキの処理の中でもアスベスト飛散による健康への影響が危惧されている。何よりも“夢の建材”としてアスベストを耐火材や断熱材に大量使用していた時代の建物が取り壊し、建て替え時期を迎えており、今後ますます大きな問題になるものとして見ていく必要がある。

2)寝屋川「廃プラ」公害の根絶に向けて

*舞台を公害等調整委員会(公調委)に移してたたかわれている寝屋川の「廃プラ」公害を根絶する取り組みは、この2年間で4回の審問(裁判で言う法廷での審理)が行われ、専門委員3名、裁定委員3名による現地調査がそれぞれ1回ずつ行われた。

*本年1月には、いよいよ公調委による環境調査(廃プラ施設から発生している化学物質の調査)と接地逆転層の形成を調べる温度調査が職権で行われ、2月には住民検診を行ってきた医師と健康被害を訴える7人の住民に対して証人尋問が行われる。

*現実に周辺住民の中に多数の健康被害者が発生しているという事実から出発し、先ず被害者を救済しながら原因を究明するという対応、そして、「科学的な証拠や因果関係の証明の不十分さ(完全な科学的確実性の欠如)を予防的対策を延期する理由として使ってはならない」という予防原則の立場に立った施策が強く求められている。

3)ぜんそく被害者の救済運動

*あおぞらプロジェクト大阪は、一昨年の4月から大阪府議会と国に対する請願署名の取り組みを進めてきた。昨年の2〜3月の府議会には約3万筆の署名を提出し、ぜん息被害者の救済を求める制度の確立を迫ったが、結果は賛成が日本共産党だけだったため、賛成少数で「不採択」となった。

*しかし、国の「そらプロジェクト」による疫学調査やソラダス2012の健康アンケートの集計結果でも明らかなように、ぜん息の原因の一つが自動車排ガスにあることは明らかである。景気低迷の中でも高い大気汚染の状態が続き、PM2.5は高汚染状態のままであり、その中で沢山のぜん息患者が発生している。ぜん息を「公害疾患」として認めさせ、公的な救済制度をつくることが切実になっている。

*一方、国政では、消費税の引き上げと引き換えに自動車取得税を廃止し、さらに自動車重量税も廃止する動きが強まっている。そもそも現在の公害健康補償法の財源は、大気汚染の原因者としての企業から80%、車から20%を賦課して賄うこと、車からの賦課金は自動車重量税から引き当てる仕組みになっており、自動車重量税が廃止されるならその仕組みが無くなり、公害健康被害補償法の財源確保、ひいては健康被害補償法の継続にとって重大な危機となる。与党税調は「自動車重量税の見直しの考え方」の中で「税収の一部が公害健康被害補償の財源として活用されていることに留意」としているが、当面、この問題への対応が重要になっている。

(3)道路公害。環境問題としての道路・交通問題

1)道路公害に反対する運動

*京都府久御山から大阪府門真までの第2京阪国道の建設に対し、「孫子の代まで誇れる道路」をめざしてたたかわれた第2京阪公害対策の住民運動は、「シェルター・フタかけ・脱硝装置」という住民3要求をかかげて、約44年にわたって営々と取り組まれてきた。その結果、第2京阪国道は、上方は開いているものの両側は遮音のために“白い壁”でおおわれ、また、道路による地域分断対策として「フタかけ」が施され、上部に緑地公園が4カ所造られた。署名・陳情・請願や要請・交渉によってこうした第2京阪道路の環境を作り出したことは、まさに住民運動の成果として特筆される。

*一方、泉大津市の府営住宅では、真後ろを走る阪神高速湾岸線の騒音・粉塵被害に永年苦しんできた。住宅自治会は2012年5月、市に騒音の測定を要請、市は9階での測定結果がギリギリ環境基準を満たしているとした。しかし自治会役員有志が納得できないと昨年9月に道公連に相談があった。道公連は測定器を持参し下・上の階を測定した結果、11階は基準値を超えていることがわかった。これを受けて自治会は再度、市に測定を要請し、同11月には11階を測定した結果、昼間が76.3デシベル(基準値75デシベル)・夜間が71.4デシベル(同70デシベル)と基準値を超えていることが判明した。市はこの結果を受けて阪神高速と大阪府に対応を協議するとしている。一方、自治会は住民の被害状況のアンケートや「騒音・粉塵を防ぐ防護壁をつくれ」の署名を集めて防護壁設置の運動に取り組んでいる。住民が自らの手で環境を調査し、その結果を持って行政に働きかけ、環境改善の運動に結びつけていくことの重要性を改めて示している。

*淀川左岸線延伸問題では、二期事業に関する技術検討委員会が設置され、2011年5月に第1回委員会が開催されて以後7月、11月の2回開催されたがそれ以後開催がストップし、再開の目途も立っていない。住民が要求した議事録に対しても、委員の発言部分を全て黒塗りにして非公開にするなど、非民主的な運営がされている。本年2月18日までにアセスメントの説明会、意見書の受付を実施する動きとなっている。淀川左岸線二期事業区間は、大阪市内の中枢部に位置し、地震・津波により淀川左岸堤防にもしものことがあれば、大阪市民の生命と財産に甚大な被害が発生することが十分予想される。中津リバーサイドコーポ環境を守る会を中心にした住民は、委員会での議論を公開して地震・津波対策に万全を期すことが大切として、2012年8月に議事録・打合せメモの公開を求める裁判を起こした。

*また、、阪神高速道路など60年代、70年代の高度経済成長時代につくられたインフラが、今それぞれ耐用期限切れを迎えており、今後は新規事業を中止してそれらの再構築費に回すことが大きな課題となってくる。

2)環境から見た公共交通機関(赤バスや市営地下鉄)の廃止や民営化の問題点

*大阪市の橋下市長は、赤バスの廃止や市営地下鉄の民営化、バス路線を削減するなどの動きを強めている。市バスや赤バス、地下鉄はいずれも市民の足として重要な役割を果たしており、お年寄りが外に出るのに欠かせない交通手段である。そうした市民の足、市民の貴重な公共財産を民営化して、営利企業に売り払うなどという暴挙は絶対許されるものではない。

*そもそも地下鉄や赤バスなどの公共交通機関は、市民のインフラの基本中の基本である。市民が快適に暮らせるための“足”の確保にとどまらず、災害対策、防災では重要な位置を占めるものであり、様々な公共施設と連係して総合的な街づくりのカナメをなす。それらを民営化し、市民の手の届かないところにすることは、“地震・津波につよい街づくり”をという時代の要請にも逆らうものであり、それぞれ公共交通機関として継続・存続すべきである。

3)人と環境にやさしい交通手段として自転車の役割をもっと高く

*デンマークでもドイツでもスウェーデンでもヨーロッパの多くの都市では、道路には自転車専用のレーンが確保され、人々は自転車を重要な交通手段として活用している。自転車はCO2を排出しないだけでなく、乗る人の健康増進にとっても有用であり、環境にやさしく健康増進に役立つ交通手段として、その役割を高く評価することが大切である。

*一方、大阪の道路事情を見ると、郊外や公園内には自転車専用の道路も造られつつあるが、都心や生活の場では自転車専用レーンや専用駐輪場もほとんど無く、勢い自転車は歩道を走っては歩行者とぶつかり、ターミナルでは無数の自転車が歩道を占拠して歩行の妨げになるなど、“邪魔者”扱いそのものになっている。自転車を重要な交通手段として活用できる道路行政、街づくりが求められる。

(4)気候変動とCOP18、自然環境を守る取り組み

1)COP18での合意事項

*2012年11月26日から12月8日までカタールのドーハで国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP18)が開催された。会議では各国の粘り強い交渉の結果、?京都議定書に続く新たな枠組み作りについては2014年末までに交渉文書の項目を固め、15年5月までに文書を取りまとめる、?京都議定書の延長手続きについては第2約束期間を2013年から8年間とする、?海外からの排出枠調達(CDM)については第2約束期間に加わらない日本などは活用を制限する、?先進国から途上国への資金援助については2013年まで計画作りを継続し、先進国は過去3年分の平均額を今後3年間は上回るよう努力する、という中身で合意した。

*一方、気温の上昇を産業革命以前比で2℃以下に抑えるために必要なCO2の削減については、現在の各国の削減目標の合計では全く足りず、CO2の削減量が80億〜130億トン不足する状態にあり、また、2013年以降の先進国から途上国への資金援助の具体化が未確定であるなどの問題点も残っている。

2)日本政府の対応と課題

*日本政府は、前回に引き続き第2約束期間への不参加表明を変えず、温暖化対策・CO2削減で指導的役割を発揮すべき先進国としての責任を放棄し、再び“化石賞”をもらうという不名誉な対応となった。温暖化防止・CO2削減は世界各国共通の課題であり、今後、世界の経済も産業もその方向にすすむことは確実である。こうした中で、日本が世界の動きに背を向け続けるなら、日本はますます孤立し、世界の中で発言力、影響力を失うであろう。それは、遅かれ早かれ日本の経済・産業にも悪影響を及ぼすであろう。

*また、2012年11月16日の衆議院解散に伴って、「温室効果ガスの排出を2020年に90年比で25%減らす」との目標を盛り込んだ地球温暖化対策基本法は廃案となった。同法案は2010年から国会に提出されたが、合意が出来ず継続審議を繰り返してきた。京都議定書第2約束期間への不参加、地球温暖化対策基本法の廃案によって、日本の温暖化対策は法的根拠と具体的な計画を失うことになった。

*日本は、一刻も早く京都議定書の第2約束期間に参加することを表明すべきであり、また、国際公約した「CO2を2020年までに90年比で25%減らす」を実現する法律をつくり、具体化すべきである。

3)信太山丘陵の保全と活用計画での前進

*和泉市は信太山丘陵(市有地)について、2012年6月、これまで同地域にスポーツ・レクリエーション施設を造るという方針を、「自然環境の保全と市民の財産として活用する」「当該地に予定されていたスポーツ施設は他の場所で策定する」という方針に変更し、自然環境の保全に大きく転換した。

*同地は2004年に和泉市が、自衛隊の演習地内に点在した民有地を買い取り、それを防衛省と交換する手法で演習場内に16haの用地を取得し、そこに大型スポーツ・レクリエーション施設をつくる計画が提示されたのに対し、住民は「信太山に里山自然公園を求める連絡会」を組織し、同地域の貴重な湿地や草原を残すため、計画の変更と自然環境の保全を求めてきたもので、住民運動の大きな成果である。

(5)大阪府・市の公害対策・環境行政

*大阪府立公衆衛生研究所(公衛研)は、大阪府が設置する衛生研究所として感染症・食中毒といった健康危機事件の原因究明や食品、医薬品、家庭用品、水道水などの安全確保のための検査などを行っており、府民の健康と安全を守るうえで欠かせない機関である。

*感染症や食中毒をめぐる情勢では、強毒性のSARSや新型インフルエンザ、ノロウィルスなどが問題になっており、国は昨年7月に公衆衛生研究所を持つ地方自治体に対し、「衛生研究所の一層の拡充強化」を求める通知を出した。ところが大阪府は、大阪府立公衆衛生研究所を来年(2014年)4月には大阪市立環境科学研究所と統合し、さらに地方独立行政法人化する方針で作業を進めている。

*府民の健康と安全を守る業務は“効率・効果優先”とか、“営利”や“独立採算制”にはなじまないものであり、自治体が責任を持って、主体的に行うべき事業である。私たちは、府民・市民の健康と安全を守るために、大阪府立公衆衛生研究所の大阪市立環境科学研究所との統合や独立行政法人化に強く反対し、府直営の機関としてよりいっそう拡充強化することを求める。

*また、大阪府の松井知事は、本年1月9日、火力発電所の建設に際して行うことが義務付けられている環境影響評価(アセスメント)の手続きを省く条例改定案を2月議会に提案すると表明した。「府内に積極的に火力発電所を誘致し、『脱原発依存』を加速する」ためというが、原発依存から脱却するためなら何でも許されるというものではない。特に、火力発電所が大量にCO2を排出することは指摘され済みの問題であり、環境影響評価の手続きを省くなどということは許されない。火力発電所建設に係る環境影響評価はいかなる場合にもきっちり行うこと、そして、“原発依存から脱却”を言うなら自然エネルギーの推進に全力をあげるべきである。

(6)第7回ソラダス2012の結果から見えた課題

*前回2006年のソラダスから6年を経過して、昨年5月に実施された第7回ソラダスでは、メッシュ・自主合わせて約4,400人が参加し、カプセル約1万個を設置して測定するという文字通り“府民が自らの手で大気の汚れを測る”というスローガンに相応しい一大事業となった。

*NO2の測定や健康アンケートからは、?環境基準(0.04ppm〜0.06ppm)をオーバーする汚染地域が大阪市域、道路沿道地域など少なくない地域で続いている。その主な要因が自動車、特にディーゼル車からの排出ガスにあり、これへの対策の強化が重要、?大気汚染による数多くの健康被害者が存在しており、医療費助成などの健康被害補償の措置が実施されるべき、?現在の大気汚染状況の下で沢山の健康被害者が発生している以上、環境基準・環境目標値はより厳しいものに見直すべき、?行政による正確できめの細かい環境の監視は公害・環境行政の基本であり、環境測定と健康モニタリングの体制をより拡充・強化する必要がある、などの点が明らかとなった。

*この測定運動の成果を行政との交渉に活かし、大阪府や各自治体の環境行政を前進させる材料にするとともに、この取り組みに参加した地域・団体がさらに運動を継続し、引き続きNO2測定運動や環境行政の監視、公害・環境問題に取り組んでいくことが重要になっている。

<終わりに>

 私たち大阪府民は、かつて老人医療無料制度や公害健康被害の補償制度をつくらせてきた経験を持っている。それは府民、住民の要求に基づく粘り強い運動とともに、その要求を支持する政党・会派を議会に沢山送り出し、さらには私たちの要求を支持する首長を誕生させて実現していった。こうした教訓にも学び、私たちは、府民運動を大きく前進させるとともに、それに見合って議会・政治の力関係を変える運動も重視して取り組んでいく大切である。

 公害・環境問題や原発ゼロの運動をいっそう大きく前進させるとともに、消費税増税反対、TPP参加反対、憲法守れの運動などとも連携し、要求実現のために大いに奮闘しましょう。

以上

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第41回公害環境デー基調報告