寝屋川廃プラ公害病の根絶にむけて
―正念場の年に―

廃プラ処理による公害から健康と環境を守る会
(寝屋川市)

 寝屋川廃プラ公害を根絶するたたかいは今年で10年目を迎えます。

 2004年、民間と行政のそれぞれ、二つの廃プラ処理施設(公称、リサイクル施設)の計画を知り、シックハウスや神経症状を示す杉並病のような公害発生を心配した住民の予防原則にたつ運動を立ち上げて以来のたたかいです。

 2004年、寝屋川市長への要望と市議会への請願の二つの8万筆の署名を集め、提出しましたが無視されました。施設の操業後、眼、鼻、のどの異状や、湿疹など皮膚症状、また身体がだるい、やる気が起こらないなど自律神経失調や中枢神経機能障害などの神経症状など多彩な症状に苦しみ、悩まされる住民が1000人規模で発生していることを訴え、大阪地方裁判所、高等裁判所に、施設の建設中止、操業停止をもとめた裁判も3度却下されました。大阪高裁の判決は2011年1月に行われ、健康被害は起こり得ないという事実に反する不当判決でした。裁判所が証拠調べもろくにせず、自ら事実調査もしない限界を強く感じました。裁判所がそして科学者による調査、意見をことごとく不採用にする科学の否定という司法の無理解を痛感した私たち住民は、判決後ただちに公害の根絶を目的とする公害等調整委員会(公調委)に「原因裁定」を申請し、受理されました。

 公調委が杉並病の「原因裁定」において、公害病の発生をみとめ、その原因について、物質の特定が無くても判断できることがあるとして、杉並区のゴミ中継所を発生源として裁定したことは有名であり、寝屋川で発生している公害の認定をぜひ実現したいと考えてのことです。

 公調委での審理は、この2年で4回の審問(裁判で言う法廷での審理=公判)が行われました。また、専門委員3名、裁定委員3名によるそれぞれ一回ずつの現地調査が行われ、1月には、公調委の年間調査費3,000万円のうち約1,000万円を使った、環境調査(廃プラ施設から発生している化学物質の調査)と接地逆転層の形成を調べる温度調査が行われます。2月には、住民の検診を行なってきた眞鍋穣医師による証人尋問と健康被害を証言する7名の住民の証人尋問が行われます。医師と住民による証人尋問は大阪高裁では、申請が却下され行われませんでした。

 これまでの審問では、毎回、住民=申請人による健康被害の陳述が計7名から行われました。

 私たちは、重症者が転居するなどをはじめとする公害が当初想定した、廃プラ施設から約1kmの範囲が広がっていることを、昨年8月〜10月に実施した約8,000軒を対象にした健康アンケート調査で知りました。その範囲は、隣の交野市に及び、少なくとも施設から約2kmまで健康被害が発生しています。

 岡山大学、津田敏秀教授、頼藤貴志准教授による2度にわたる疫学調査と眞鍋穣医師、原田佳明小松病院院長、宮田幹夫北里大学名誉教授ら医師による検診は公害患者の発生と発生源が廃プラ施設であることを明らかにしていると確信しています。岡山大学の疫学調査では、廃プラ処理工場内外で感知される甘酸っぱく、多くのひとが気分をわるくしたり眼がかゆい、喉がイガライ、また湿疹が出るなどのニオイを感じていることが明らかにされております。このニオイ(化学物質)の感知は、工場に近い住民ほど多くなっており、有害化学物質の発生源が廃プラ施設にあることや、有害化学物質が住民の生活圏に到達していることを明瞭に示しています。
また、柳沢幸雄東京大学教授による化学物質の調査は、原因物質が施設から排出される高濃度かつ多種類の化学物質であり、通常大気の数十倍に及ぶ総揮発性有機化合物=TVOCが施設から排出されていることを明らかにしました。また、柳沢教授の調査により、廃プラ施設から排出された化学物質が太陽光による光化学反応で2次生成物として猛毒物質であるホルムアルデヒドを生成し、一般環境の平均濃度の数十倍もの高濃度で住宅街で検出されていることが明らかになっています。

 また、西川榮一神戸商船大学名誉教授による煙による実験は、窪地を流れる打上川のそばに立地する二つの廃プラ施設から排出される有害化学物質が、接地逆転層の形成されやすい本件地域において拡散されにくい時間帯(主に夜間)が多いことを明らかにしました。また、接地逆転層の形成を明らかにする温度調査によって、気温の低い晩秋から冬期のみに限らず、夏期をふくむ通年において逆転層の形成が認められるという新たな事実が確認されました。

 弁護士による聴き取りなどのサポートにより住民75名が健康被害を訴える陳述書を裁判所に提出したが、判決ではまったく無視されました。

 公調委へ「原因裁定」を申請した住民は、これまで62名ですが、さらに第3回目の申請が医師の診断結果の意見をつけて、第3次申請の手続きが行われており、健康意アンケート調査にもとづく、さらに申請人を増やす取り組みが行われています。

 こうした、これまでの取組みを踏まえ、今年は公調委による「原因裁定」の判断にむけ、正念場となる年になろうとしています。

 公調委による環境調査結果が4月には行われ、その結果について専門家をはじめとする解析が行われることや、さらなる調査の必要性を含めた意見の作成が必要です。

 また、公調委は、環境調査は行うが、健康調査についてはもっぱら住民が医師の診断をつけて申請するようにとしており、この点では、医師の診断がもっぱら眞鍋医師によって行われ、多数住民の訴えにこたえることができない状況を改善するため、大阪民医連に応援、協力をお願いしています。

 大阪から公害をなくす会は寝屋川廃プラ公害を泉南アスベスト公害、自動車排気ガスによるぜん息公害と並ぶ大阪の3大公害と位置づけ、一昨年には、現地調査と寝屋川市、枚方市、交野市、四條畷市、大阪府寝屋川保健所への申し入れを行い、また大阪府に健康調査を実施するよう交渉を行なっていただいております。

 寝屋川廃プラ公害は、リサイクルの名による公害発生、行政による公害発生、法の不備による化学公害、司法の非常識による公害無視、多種類かつ高濃度の揮発性有機化学物質が大気を汚染した結果、杉並病以外に前例がほとんど報告されていない病態、病像など新しい様相を示す公害であります。この公害の根絶、解決は国民の命と健康を守る重大な意義をもつたたかいであります。多くの個人、団体の方々のいっそうのご支援をこころからお願い致します。

文責:廃プラ処理による公害から健康と環境を守る会
事務局長 長野 晃

 

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寝屋川廃プラ公害病の根絶にむけて