大阪公害患者の会連合会
上田敏幸
公害患者と家族の命と暮らしを支える「命綱」(いのちづな)公害健康被害補償制度が危機にさらされています。
大気汚染による公害病患者の補償制度は、四日市公害裁判の住民側勝訴の判決をうけ、大気汚染の原因者(企業から80%クルマが20%)の負担で、今から40 年前(1973 年)に損害賠償制度として生まれました。クルマの負担分は、自動車重量税から引き当てるのですが、この税を2014年の消費税8%と引き換えに廃止しようというのです。
「クルマが売れないのは税金が高いから」などと、廃止の先頭に立っているのがトヨタなどの自動車メーカー。経産省や国交省、自動車工場がある県の知事、労働組合まで巻き込んで「なくせ!」の大合唱です。消費税との2 重課税になっているというのですが、大型車など環境への負荷が大きいクルマほど高くなる税金を、モノの売り買いにかかる消費税と一緒にするのは誤りです。
この点は環境省も認めており、私たちとの交渉で、「(重量税は)公害健康被害補償法の定めによる汚染者負担の原則に基づく財源(移動発生源)であり、廃止はおかしい、と主張している。先日の政府税調でも環境政務官が、『税制のグリーン化はGood減税、Bad課税で進めるべきで、環境に良いクルマは優遇税制で対応している。車体課税廃止はその道筋から言ってもおかしい』と発言している」(白石順一総合環境政策局長)と答えています。
公害補償の財源となっている自動車重量税の廃止は、クルマによる大気汚染の責任を免罪することにもなってしまいます。
民主、自民、公明は「3党合意」で消費税10%増税を決めて「社会保障と税の一体改革法」を国会で押し通しました。そこには、2014 年の消費税8%増税の実施までに車体課税(自動車重量税と自動車取得税)を廃止に向けて検討をすることを明記しています。
今回の総選挙で衆議院の過半数を超えた自民党は、あおぞら財団の「衆議院選挙に関する公開質問状」で「補償給付の内容等が現状の課題に即したものなのか。また、財源についても汚染者賦課量課金、自動車重量税からの引当金となっていますが、限りある財源下における補償のあり方についても検討する必要がある」と具体的に公害補償の「見直し」に言及しています。
この自民党が公明党と合わせて衆議院で3分の2以上の議席を占めたのですから、事態は極めて深刻です。私たちの運動が弱まれば、一気に押し込まれてしまいます。
一方、「公害はなくなった。新しい患者は発生しない」と公害指定地域を解除(1988年)して新しい被害者の救済を打ち切りましたが、大気汚染は改善されないまま大量のぜん息など呼吸器病の患者が発生し放置されてきました。高校生までの子どものぜん息患者が、20年間で3〜4倍の52万人にも達すると推計されていること、東京都のぜん息患者の医療費助成制度ですでに7万人を超える成人が救済されていることを見ても、大量の患者が発生していることは間違いありません。そして、最近の環境省の疫学調査(そらプロジェクト)で、ぜん息発症の原因がクルマだったことも明らかになりました。
患者会はこれまで、自らの公害補償を守る活動とあわせて、同じ病気を抱えて苦しんでいる患者の救済制度を国の責任でつくることを要求して粘り強く活動してきました。この間、国会への要請署名にも取り組み、全国で32万筆を超える共感を頂いております。引き続きこの運動を継続するとともに、危機に直面している公害健康被害補償制度を守り抜くために、物心両面のご支援をお願い申し上げます。
1. 壁新聞「あおぞら通信」を事業所、街頭など人が出入りする場所に掲示してください。
2. 「大気汚染公害被害者に対する新たな救済制度を求める請願」署名にご協力ください。
3. 公害補償制度を守り、新たな救済制度をつくる活動へのカンパをお寄せください。