市民発で自転車環境を変える試み
―御堂筋サイクルピクニックの開催―

あおぞら財団研究員 相澤翔平

自転車を通じてきれいな空気を

 あおぞら財団のできる契機は大気汚染公害であり、その原因は主に工場からの排煙や自動車の排気ガスにあります。現在も自動車の排気ガスによる大気汚染の問題は解決しておらず、したがって環境再生の取り組みとして、交通問題の解決が求められています。

 あおぞら財団では交通問題の解決について、自動車対策だけでなく、自転車を活かしたまちづくり活動を進めています。交通環境学習プログラムとして自転車乗り方教室(チャリンコチャンピオン)の実施や、高校生との自転車マップづくりなどの活動から、現在は環境負荷の大きい自動車優先から自転車や歩行者に配慮した道路空間への転換を目指す取り組みにまで広がっています。

自転車を取り巻く現状

 身近で環境にいい乗り物である自転車ですが、現在は自転車の歩道走行による歩行者との事故が急増、車道走行時には接触事故の危険があるためドライバーから迷惑な乗り物として見られています。

 2011年秋に「自転車は原則車道を走行する」という通達を警察庁が出しました。それに対する市民のとまどいの声はニュースなどで取り上げられ、社会に大きな波紋を広げました。

 自動車の運転と違い、多くの人が「自転車はどこをどうやって走ったらいいのか」について教えられていないことや、自転車の位置づけがあいまいなことから、戸惑うのは当然の反応かと思います。

 自転車の「走る場所」と「走り方」について、改めて考え直す機会にきており、市民から発信するイベント「御堂筋サイクルピクニック」を開催することになりました。

みんなで御堂筋を走り、アピール
―御堂筋サイクルピクニックの開催
大阪の大動脈『御堂筋』の今

 御堂筋は大阪の中心地をつなぐ一方通行の大きな道路で、両側にそれぞれ1レーンの緩速車線と、植樹帯をはさんで4車線が通行する全6車線で構成されています。大阪の中心地を結んでいるという利便性から多くの自動車や自転車、人が通行しています。

 現在交通量は40年前の6割程度となっている一方で自転車の台数は約7倍に増加しており、歩行者、自転車、自動車が安全に利用できる環境づくりのためには、自転車の走行空間についても考える必要があります。

自転車イベント「御堂筋サイクルピクニック」

 「御堂筋に自転車レーンを作って欲しい」というアピールと「自転車マナーの啓発」を、自転車が本来走るべき車道を走行することを通じて行うイベント「御堂筋サイクルピクニック」。

 2011年10月22日に開催した第1回御堂筋サイクルピクニックには約100人の人が集まり、参加者は目印の青いシャツやポーチを身につけ、御堂筋の緩速車線を駆け抜けました。

 実際に走ってみると路上駐車している車が多く、車線変更を余儀なくされる場所や、左折する際に歩行者と交差する場所があるなどの問題点もあり、自転車だけでなく歩行者、自動車も含め総合的に道路空間の使い方を考えていかねばならないことが再認識させられました。

 この活動を継続し、発展させていくためにワーキングチーム「サイクルピクニック・クラブ」を立ち上げ、活動に賛同する有志で企画・運営を行っています。2012年4月7日には第2回を開催し、約80名が参加。より多くの人に賛同、参加してもらうために第3回はマーケットや自転車の試乗会を企画し、9月22日のカーフリーデーに合わせて開催し約300名(アピール走行参加者約200名)の参加者を集めました。

御堂筋サイクルピクニックのこれから

 最初は100人でのスタートでしたが、車道走行によるアピールなどを通じて、賛同者を集め、いつか10000人で御堂筋を走ることを目標に活動を展開していきます。道路空間のあり方について考え、歩行者にも自転車にも優しいまちづくりを、今後も「自転車に乗る人の目線」「歩行者の目線」「車を運転する人の目線」に立って広めていきたいと思います。


自転車文化タウンづくりの会(事務局:あおぞら財団)
HP:http://sky.geocities.jp/cycletown_osaka/
御堂筋サイクルピクニック
HP:http://cycleweb.jp/cyclepicnic/


 

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市民発で自転車環境を変える試み ―御堂筋サイクルピクニックの開催―