防災まちづく研究会の取り組み

団体名  大阪自治体問題研究所
連絡先名 大阪自治体問題研究所
住所 〒530-0041
大阪市北区天神橋1-13-15
大阪グリーン会館5階
電話番号 06-6354-7220

みんなで考える防災まちづく研究会

 東日本大震災を受けて、大阪自治体問題研究所、大阪自治労連、公害をなくす会の3つの組織が防災まちづく研究会(代表:中山徹奈良女子大学教授)を設置しました。

 2011年11月に調査研究活動をスタートさせ、第一に、大阪府域全43市町村に対する防災計画等のアンケート調査と分析を行い、2012年6月、「震災対策の現況と課題に係る調査」を発行しました。第二に、地質学や都市災害、都市計画などの専門家を招いた研究会、第三に、高石コンビナート地域や阪神淡路大震災の現地調査などを実施してきました。

 研究成果として、「大規模災害から住民の命と暮らしを守る〜大阪の防災を考える提言〜」(2013年3月)にまとめ、3月2日報告集会を開催しました。

災害後対策、地域の経済や住民の生活再建を優先すべき

 研究会の代表で、研究所副理事長の中山徹・奈良女子大学教授は、報告集会で、「阪神淡路大震災のあとに直下型地震を対象に、自治体労働者も入って、新自治体防災計画を出した。

 今防災計画の見直しを各自治体が進めている。自治体労働者、住民目線で行政と違う視点で考えてきた。行政のように全面的ではないが行政に携われるものが違った視点で検討している。

 大阪府も防災計画の見直しをしている。いまの防災計画には海溝型巨大地震を想定していない。阪神淡路大震災は8割が住宅の倒壊で亡くなったが、東日本大震災は津波で多くの人が亡くなった。最大規模の海溝型地震では大阪湾にも5mの津波がくると想定している。大阪府の今までの想定の約二倍。台風を想定した防潮堤の高さのギリギリになっている。それがもちこたえられるのかどうか。

 阪神淡路大震災では建物が倒壊しなくても家具の倒壊で亡くなった。関西ではそれまで巨大地震は起こらないと勘違いしていた。地震のあとに転倒防止のグッズを買った人がたくさんいる。梅田の地下街に出かけたときに津波や地震の心配をしている人は少ないだろう。

 この「提言」は、学者の検討ではない。行政実務者、市民の視点から防災を見直している。海溝型地震と同じく直下型地震も連動する。木造密集地の解消や対策も進んでいない。建物倒壊を防ぐことに加えて、津波対策も考えないといけない。

 津波は最大5mぐらいになる。市内防潮堤ではギリギリのところ。液状化で防潮堤が傾く。門扉や水門もうまく閉じられるのか。かと言って、天端の高い防潮堤を張り巡らすのも非現実。極めて発生頻度の低い超巨大地震津波にハードすべて防ぐのは不可能。財政的にも無理。今の防潮堤で防ぐのとあわせて避難するというソフト対策の重ね合わせで対応するのが現実的。

 津波が大阪湾にくるのは1時間後。十分に避難ができる時間がある。一方、比較的発生頻度の高いものはハードで対策。

 大阪湾のコンビナートには別途対策が必要になる。関東は地震・津波で浮かないようにガスタンクを地下に埋めている。大阪では陸の上にある。市街地に漂流する危険性がある。緩衝帯はあるが、住宅地に漂流して火災が発生する危険性もある。ガスタンクの地下化など危険物を管理している側で抜本的な対策がいる。

 建物の耐震化も個人の対策だけでは限界ある。住宅が倒壊すると火災の原因になり、避難や救援の経路を閉ざす。また自宅が安全ならば被災者が避難せずそこで過ごせる。個人財産の支援だと躊躇するのではなく、小学校の耐震改修は進んでいる。個人の住宅地にはまだ支援が弱い。公共性の意味を整理して大胆な事前支援をしていくべきだ。

 公立でも保育所は耐震改修が遅れている。民営化されていることも遅れている原因のひとつ。すぐに対策をしなければならない。子供の命に関わる。

 公的な行政の責任が曖昧になっている。「官から民へ」で行政の責任も体制の処理能力も落ちている。

 液状化対策は個人ではもっと対応が困難である。自分の敷地内では対応できるものが少ない。地域ごとの対策がいる。傾斜地以外では直ちに液状化で人命が危機にさらされる訳ではないが、一度被害を受けると損失が大きい。もう住めなくなる。財産が失われる。

 優先順位で個人の住宅地の対策が遅れた場合、その公的な責任はどうなるのか。

 大阪は溜池が多い。溜池などを埋め立てた土地は地下水が高いので液状化し易い。公的な施設は液状化対策しているが、住宅地は対策が取られていない。地盤の履歴を公表して欲しい。一方で資産価値が落ちるので公表を嫌がる者もいる。両方が正論。行政がハザードマップを公表する以上、それに対する対策も同時に発表すべき。もし、対策を進めること難しい場合は、低下した資産価値を行政が保障できるような仕組みを検討すべきである。

 公立の保育所で園内の避難訓練だけしかされていない。小学校までの避難経路の安全は確保されているのか。

 学区ごと行政区ごとの避難地の割り振りだが、近隣の避難地の方が近い場合もある。画一的、縦割りの防災計画になっていないか。

 高齢者施設の避難。夜間など職員だけは不可能。地域の人たちの力も借りないといけない。それを想定した訓練はされていない。

 実務者が日常的な不安などを出す中で問題や対策が浮き彫りになってきた。自由に行政の職員が意見を言えるような職場でないと、そのこともできない。

 雲仙普賢岳は20年前で住宅対策は済んだが、防災対策はまだ続いている。防災対策は長い時間がかかるもの。阪神淡路大震災でも地震での直接被災のあとに行政に不作為による「人災」の2度の被害を受けたと言っている人たちがいる。災害後の対策も、地域の経済や住民の生活再建などが優先されなければならない」と語っています。

防災まちづく研究会(Part ?)を発足

 前回の成果を踏まえ、大阪自治体問題研究所、大阪自治労連、公害をなくす会に加えて、国土交通労働組合近畿支部が参加し、防災まちづく研究会(Part ? 代表:中山徹奈良女子大学教授)を発足。

 2013年10月26日、第1回研究会を公開研究会として、報告?防災と国の出先機関としての役割:国土交通労働組合近畿建設支部 平田喜久男、報告?大阪府の被害想定:大阪府関係職員労働組合 有田洋明、報告?衛星都市地域防災計画の今後の見直し:大阪自治体問題研究所常務理事 山口毅を行った後、奈良女子大学中山徹教授が問題提起を行いました。

 現在、2回目の自治体アンケートを実施しています。

 防災まちづくりシンポジウムを2014年3月15日(大阪グリーン会館2階ホール)に開催する予定で準備を進めています。

上記資料のPDF版はこちらをダウンロードしてください。
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