ソラダス2021 実施要項(企画書)
2021年2月28日
ソラダス本部実行委員会
はじめに
「ソラダス2021」とは、大阪のNO2(二酸化窒素)濃度を、面的に、私たち住民の手で直接測定して、大気汚染を確かめる運動です。空気中のNO2濃度を、日時を決めて大阪府域全体でいっせいに測ります。あわせて、住宅地や幹線道路沿道の汚染状況を明らかにする「自主測定」も実施します。ソラダスは4年置きに実施することとし、9回目を昨年5月に「ソラダス2020」として実施予定でしたが、コロナ禍の中で1年延期としました。その後の年2回の自主測定の経験で、感染予防を確実にとりながらであれば、カプセル測定は実施できると考えるに至りましました。
1.概要
- カプセル設置・回収日時・・・2021年5月20(木)18:00〜21日(金)18:00
- NO2濃度のメッシュ測定・・・大阪府域を1kmメッシュ(大阪市内は500メートルメッシュ)で5個づつカプセルを設置し回収します。
- NO2濃度の自主測定・・・団体毎に自主的に、交差点、住宅地、事務所など身の回りの環境状況を測定します
- 健康アンケート・・・呼吸器系の自覚症状について、参加者が自分で記入し、本部においてNO2濃度結果とを対比比較し検討します。
- 地域実行委員会・・・大阪府の66区市町村単位(大阪市内は区単位)で組織し、学習会やカプセル設置担当者を選定したり、記録表作成整備などを担当していただきます。
- 分析・検査・・・技術的問題は、公害環境測定研究会、民医連検査部会が担当します。
- 経費・・・カプセル代金は1個300円(本部事務局から地域実行委員会へ250円で卸します。差額は、地域実行委員会の活動費としてください。
2.大気汚染問題の現状と課題
(1)大気汚染被害:すべてのぜん息患者等の救済を
- 大阪のように大気汚染のつづく地域のぜん息患者について、未救済・未認定患者への「医療費だけでも無料に」の救済が必要です。大阪、東京などには数万人程度の未救済患者がいると推測されます。
- 公害認定患者の医療と生活を支えている「補償制度」をなくそうとする動きがあります。ひきつづき、汚染者負担の原則のもと工場と自動車の加害責任を明確にした財源の確保が必要です。全国に32,000余人(大阪9,900余人)の認定患者の「命綱」を守ることは今後も重要です。
- 未救済のぜんそく患者らが、全国一律の「医療費助成制度」を求めて、2019年2月8日に公害調停を申し立てました。大気公害調停の申請について、全国公害患者の会連合会のほか、首都圏や愛知などに居住する患者約100人が申請人(大阪5人)となって、国と自動車メーカ7社に対して大気汚染公害が原因とみられる患者の医療費の自己負担分全額を助成する制度の創設を要請したものです。これは重要な取り組みであり、当会としても支援を具体化していく必要があります。
- 前回のNO2カプセル測定では、大阪市域が最も高く大阪市から周辺へ向かって濃度が低下する傾向があり、大阪府の湾岸地域が他よりも汚染が酷く、また、同じ市区町村でも、交差点や道路密度の高いところで、ホットスポットと言えるような汚染が高い地点がありました。今回は、コロナ禍の中ですが、現状はどういう状況であるのかを把握することは重要です。
- 前回ソラダスの「メッシュ測定と健康アンアンケート調査結果との対比」で明らかにした、「NO2濃度とぜんそく有症率とが相関のあること」を再度確認します。そのことにより、「西川論文」「検証プロジェクト報告書」が明らかにした「環境省『サーベイランス健康調査報告書』の問題点」について、再度確認し、行政と市民へアッピールしていくことができます。
(2)大気汚染と公害環境・公衆衛生行政:NO2やPM2.5などの大気汚染対策の徹底を
- 大阪の大気汚染をめぐる状況は、ディーゼル排ガスなど移動発生源を主要因とするNOx、PM2.5、光化学オキシダントなどが依然として問題です。大気汚染とぜん息などの因果関係を明らかにするために、行政として学校や医療機関の協力を得て疫学調査を実施させることが必要です。文部科学省学校保健統計でも、この30年間でみるとぜん息児童が約3-5倍に増加しています。これらのデータも活用するべきです。
- ディーゼル車の排ガス規制を引き続き強化し、排ガス規制逃れのごまかしを厳しく監視すること。高速道路の集中する地域など、ホットスポットと言われる局地対策を徹底し改善すること。行政はNO2濃度の環境基準0.04ppm〜0.06ppmというゾーン規定の0.06ppmを下回れば“環境基準を達成”としていますが、健康を損なう汚染濃度です。環境基準(地方自治体の環境保全目標)は厳しく運用されるべきです。環境アセスメントの基準も非悪化原則と、評価基準は0.04ppm以下にすべきです。
- PM2.5(微小粒子状物質)については、SPM(浮遊粒子状物質)より細かく、肺の深部や血管内まで浸透し、WHOにより肺がん・循環器系疾患などの原因物質として認定されました。環境基準の年平均値15μg/m3オーバーの測定局もありますが、さらにWHOの10μg/m3のレベルへ基準値を見直しすべきです。環境アセスメントでは、非悪化原則を基準に、環境評価すべきです。
3.ソラダス2021の意義
- 現在の大阪府全域の大気汚染の実態を、それぞれの生活している場所で測定でき、NO2濃度の面的汚染状態を明らかにできます。府民の手で大気汚染の実情、例えば幹線道路沿いと非幹線道路沿いの違い、あるいは都市部と周辺部との違い、その変化などを調べることが出来ます。
- これまでの第1回(1978年)から第8回(2016)までに蓄積してきた多くのNO2濃度データとの比較なども行え、過去から現在へ変化も見ることができます。
- 前回実施した大規模な健康アンケートを繰り返し実施することにより、大阪の大気環境と府民の健康状態との関係を調べ、幹線道路沿いと非幹線道路沿いの健康状態の違い、あるいは都市部と周辺部との違い、湾岸部とその周辺との違いなどを調べることが出来ます。とりわけ「NO2濃度とぜんそく有症率との相関」を再度の健康アンケート調査で確認できます。
- 大阪府や市に対して、私たちの手によるデータをもって意見し、提言していくことが出来ます。すなわち、学校保健統計では児童のぜん息有症率は高止まりしており、まだまだ大気汚染と健康影響問題が重要ですが、行政はこれらの独自の調査には消極的であり、改善を求めることが重要です。また、国や環境省に対しては、「サーベイランス調査報告書」における結論の誤りを事実により示すことができます。
- 多くの人、学童に参加してもらうことによって、環境問題・健康問題を身近に考えることが出来きます。「もう公害問題はなくなった」かのように言われることもありますが、決してそうではなく、NO2濃度にも関係あるPM2.5問題、光化学オキシダント問題など、そして地球環境の温暖化問題とも合わせて、環境を守る運動をすすめていく機会にできます。地域や団体の中での公害・環境問題のネットワークづくり・強化につなげられます。
4.ソラダス2021の目標
今回の取り組みを通じて次のような目標を獲得すべき課題として追求していきます。
- 若い人、新しい人にも大いに参加してもらい、環境問題を身近に感じてもらい、公害・環境問題に参加してもらうきっかけとします。(カプセル設置数10、000個以上)
- それぞれの地域の現状を全体の中で捉えることによって、地域の特徴と課題を明らかにし、地域での公害をなくし、環境を守っていく運動づくりにつなげます。ソラダス以後も「地域実行委員会」が継続し、「まち作りを考える会」などの運動につなげる団体を府下の隅々にまで広げ、大阪から公害をなくす会としてのネットワークを拡大し、ソラダス以後も年2回の自主測定運動する団体を増やします。
- 前回実施した大規模な健康アンケートをより多くの参加者で繰り返し実施し、大気環境と健康状態との関係を確認し、「NO2濃度とぜんそく有症率との関係」を再度確認します。
- ソラダスの測定結果を持って、府や市の行政区ごとに懇談会などを行い、大気汚染状況を伝えて、その改善申し入れや、ぜん息被害者調査などを求めるようにします。
- コロナ禍の中で、感染予防を確実にとりながら、大気汚染状況を測定し、これまでの8回との違いがあるのかを把握します。
5.その他
(1)大まかなスケッジュール・・・
- 2021年
4月 ろ紙入れ
5月 カプセル設置回収
6月 NO2濃度検出
7月〜10月 健康アンケート入力、分析
NO2濃度検出
11月 中間報告会 - 2022年
1月 報告集発行
2月〜 地域で行政と懇談
(2)自治体測定局との対比測定・・・自治体測定局の際にカプセル5個づつ設置して、自治体測定局のデータと、カプセル値とを対比確認します。