5月17日16時より大阪府庁記者クラブに於いて記者会見を行い声明を発表しました。
《声明》
政府の「地球温暖化対策基本法案」についての当会の見解
2010年5月17日
大阪から公害をなくす会幹事会
「地球温暖化対策基本法案」が5月14日の衆議院環境委員会で強行採択され、与党の賛成多数で可決されるなど、重大な局面を迎えています。法案には世界的な温暖化との取り組みで効果を確認される多くの施策が盛り込まれています。温室効果ガスを2020年までに25%削減するとする中期目標を確認し、○国内排出量取引制度の創設○地球温暖化対策税の検討と税制の見直し○再生可能エネルギーの全量固定価格買い取り制度の創設という3制度の構築を謳っています。これらは法案検討過程で経団連を中心に大企業が反対運動を繰り返して法制化が危ぶまれた中での目標、施策でした。鳩山内閣は温暖化防止への国民的な意識の盛り上がりを背景に、大企業の反対を押し切ったように見えます。しかし法案内容は複雑で、但し書きのような形で大企業の要望に応える内容が付け加えてあります。以下私達が考える法案の問題点を指摘します。
- 25%削減の目標については「すべての主要な国が…温室効果ガスの排出量に関する意欲的な目標について合意したと認められる場合に設定される…」(第10条)など、条件を付けており25%削減の目標抹殺もできる内容になっていますが、条件なしで日本の役割を果たすべきです。
- 国内排出量取引制度については、温室効果ガスの排出総量の限度を定める方法を基本としていますが、「生産量その他事業活動の規模を表す量一単位当たりの温室効果ガスの排出量を限度として定める方法についても検討を行うものとする」(第13条)と、いわゆる原単位方式の採用を仄めかしています。これは、排出総量の削減という地球規模の課題を見えにくくし、制度を複雑にして大量排出者の責任を問えなくするものです。
- 温室効果ガス排出の少ないエネルギーへの転換を主張し「特に原子力に関わる施策については、安全の確保を旨として、国民の理解と信頼を得て推進するものとする」(第16条)という常套の枕言葉を付けて、原発拡大に伴う一切の危険を無視して推進を明記していますが、これは、課題を次世代に先送りするもので、無責任と言わざるを得ません。
- 法案では「…豊かな国民生活及び国際競争力が確保された経済の持続的な成長を実現しつつ…温室効果ガス削減が出来る社会が構築されることを旨として、行われなければならない」(第3条)としています。グリーン経済への転換は温暖化対策として大切な施策です。しかし、経済成長と国際競争力を「旨とする」という規定は、今後の「削減目標」「対策税」「排出量取引」等の施策構築や運営にあたり経済配慮に傾いた主張の根拠とされる危険を感じます。温暖化防止が目的であり、経済のグリーン化は手段の一つであることを明記すべきです。
- 「温室効果ガスの排出」の定義で、「…または他人から供給された電気もしくは熱を使用すること」(第2条)として、いわゆる「間接排出量勘定」に根拠を与えています。これは現在すでに、電力会社が排出責任を電気の消費者に転嫁し、自らの総量削減責任を曖昧にする根拠となっています。電気にも製造物責任があります。供給を受けた者の責任は個別に規定するべきものです。
- 再生可能エネルギーの、一次エネルギー供給量に占める比率について、「平成32年までに10%に達することを目標とする」(第11条)としていますが、エネルギー供給の根本的な転換目標にしてはあまりにも少ない量ですし、また、これを上限とする危険があります。
これらの問題点の多くは、この法案の積極的な役割を否定してしまう内容であり、企業利益を優先し、法案の骨抜き目指す大企業の圧力に屈した内容だと推量します。
大阪から公害をなくす会は、以上の欠陥を是正するよう法案の抜本的な修正を要求します。そして、多くの団体、個人とともに、法案の問題点研究を進め、真に温暖化防止の役割を果たすことのできる法案を目指す取り組みを進める決意です。