[特別決議]
「安全性」無視、電力会社・財界優先の
大飯原発の再稼動に断固反対する
民主党・野田佳彦首相は、6月8日記者会見で、大飯原発の3、4号機について「再稼動をすべきだというのが私の判断だ」と言明し、「(原発立地自治体の)理解をいただき、再稼動のプロセスを進めたい」と述べました。福島第一原発の事故の原因究明もまだ、原発事故被災者の生活の目途も全く立っていない中で、大飯原発の再稼動を“決断”するなどということは、常識的に考えても決して許されるものではありません。
しかも野田首相の“判断”根拠も大いに問題です。
第1に「最新の知見に基づく30項目の対策を(規制機関の法制化を先取りして)電力会社に求めている」「実質的に安全が確保されている」など「安全性」の確保を強調していますが、そもそも福島第一原発事故と地震との関係などいまだに未解明の中で、“原発が安全”などと判断を下せる根拠はどこにもありません。しかも日本列島全体が地震や火山の活性期に入ってきたというのが今や常識であり、加えて気候変動の激化に伴う集中豪雨やそれによる大洪水、山崩れなどが多発している現状からすれば、原発は“内”“外”含めて「安全基準」の抜本的な見直しが求められています。
第2に「全体の約3割の電力供給を担ってきた原子力を止めたままでは、日本の社会はたちゆかない」と述べていますが、現に5月5日以後、日本は原発の稼動ゼロで企業活動、市民生活含めて支障なくやっています。脅し以外の何者でもありません。また、原発は「安価で安定した電気」といっていますが、福島第一原発事故で実証されたようにいったん苛酷事故を起こせばその損害賠償額は膨大となります。加えて10数万年も続く使用済み核燃料の処理コスト、廃炉決定から安定状態にするまでにかかる長期の作業・管理コストなどを考えれば、安いどころかとてつもなく“高コストの電気”となるのが原発です。
第3に「夏場限定の再稼動では国民の生活は守れない。重要課題であるエネルギー安全保障という視点からも原発は重要な電源だ」とし、将来にわたって原発を稼動し続けようとしている問題です。福島第1原発の事故を受けて、国民の多くが原発からの撤退、原発をなくして自然エネルギーへの転換を求めており、ドイツやイタリア、スイスでは国の方針として原発からの撤退を決めています。野田首相の態度は、福島原発事故から何一つ学ぼうとせず、もっぱら電力会社と財界の意に沿ってなりふり構わず再稼動に突っ走っているもので、国民の願い、世界の流れに全く逆行するものと言わざるを得ません。
今、電力問題について求められることは、安全性が確認されるまで原発は一切稼動させないことを決断し、消費電力がピークとなる真夏の数日間、それも午後の2〜3時間の時間帯を原発の稼動なしでどう乗り切るかについて行政、国民、企業、電力会社などが総力をあげて取り組むことです。水力発電、電力他社からの融通、企業の自家発電や自然エネルギーの活用、一時的には火力発電などで供給を確保しつつ、企業の操業調整や自販機など不要機器の停止、企業や公的施設、家庭における節電・省エネなどで需要を抑えること徹底すれば、この夏、原発なしでも十分乗り切れるとの提言も出されています。
原発事故は最大、最悪の公害です(公害被害者総行動での環境大臣の発言)。
私たちは「安全性」を無視した大飯原発の再稼動に断固反対するとともに、原発の稼動なしでこの夏を乗り切る決断と具体的対策を、政府や各自治体、電力会社に強く要求します。
2012年6月14日
大阪から公害をなくす会第33回総会