声明
公害環境運動に対する威圧と監視を強化し、市民の行動を萎縮させ、
市民の人権や自由を侵害する「共謀罪」について、その制定に断固反対します
5月23日、自民、公明、維新などの各党は、衆議院本会議で「共謀罪」(テロ等準備罪)を新設する法案の採決を強行しました。
共謀罪について、金田勝年法務大臣は、5月29日の参議院本会議において次のように答弁しています(5月30日付東京新聞朝刊)。まず、対象となる組織的犯罪集団について、環境保護や人権保護団体であっても、結びつきの基本的な目的が重大な犯罪を実行することにある団体と認められる場合は構成員が処罰されうると述べる共に、そのような団体の構成員は一般の方々とは言えないと述べ、住民運動や市民運動団体の構成員が共謀罪の対象となることを明言しています。さらに、組織的犯罪集団、すなわち「結びつきの基本的な目的が重大な犯罪を実行することにある団体」に該当するか否かについては捜査機関が判断するというのです。このように、「共謀罪」は、公害環境運動を含む住民運動や市民運動を対象とすること、対象となる団体か否かについての判断は捜査機関が行うことが明らかとなっています。
我が国では生命、財産等を侵害する具体的な行為があってはじめて刑罰を科すことを原則としています。「共謀罪」はこれに対する例外を広汎に認めるものであり、権利利益を侵害する行為が行われなくとも、話し合っただけで処罰できるというものです。「犯罪を行う意思の合致」=「計画」は外部からはうかがいしれないものであり、まさに「内心を処罰する」ことにほかならず、基本的人権の根幹である「思想・良心の自由」そのものに対する侵害です。そして、外部からうかがいしれない意思の合致を処罰対象とすることから、処罰の対象となるか否かの区別をすることが困難です。そのため、「組織的犯罪集団」であるか否かについては捜査機関が判断するという点とあいまって、「共謀罪」は、市民の行動を大きく萎縮させるものです。
多くの公害環境問題(大気汚染、原発事故、アスベスト汚染、地球温暖化など)は、行政施策の誤りや大企業のもうけ優先の産業活動によって引き起こされたものです。それ故、公害環境運動は、必然的に行政に政策転換を求め、大企業に公害発生・環境破壊の防止を強く求めることになります。公害のないより良い環境を求め、そのための運動を行うことは住民、市民の当然の権利です。
「共謀罪」は、「計画」をしただけで犯罪が成立することになるため、これまでよりも早い段階から捜査機関は捜査に動くことになり、「共謀罪」は「組織犯罪集団」なる団体が対象となるので、「共謀罪」を摘発するために、その団体の構成員一人一人の個人情報が集められることになります。そして、「組織犯罪集団」に該当するか否かの判断は捜査機関が行うため、公害環境運動や「もの言う」市民運動への威圧と監視が一層強化されることは明らかです。
このような、公害環境運動に対する威圧と監視を強化し、市民の行動を萎縮させ、市民の人権や自由を侵害する「共謀罪」について、制定に強く反対し廃案になるように全力で取り組みましょう。
2017年6月3日
大阪市中央区内本町2丁目―1−19内本町松屋ビル10 370号
大阪から公害をなくす会会長 金谷邦夫