声明
菅首相は、第25期日本学術会議新規会員の任命拒否を撤回し、
同会議の要望にそって6名を直ちに任命することを求めます。
私たちは、公害のない、安全で豊かな大阪・社会・地球環境を目指しております。そのためには、憲法の民主主義・国民主権が必須要件で、大切なものです。世界の平和は軍事対応ではもたらせません。戦争は最大の環境破壊であり、日本国憲法9条を守り生かすことが重要です。そういう立場から今回の学術会議任命拒否問題について見過ごすことはできません。
菅首相は、日本学術会議第25期会員任命にあたり、同会議が推薦した105名の会員候補者のうち、人文・社会科学の研究者6名を任命せず、しかもその理由について私たち市民が納得のいくようには説明されていません。
このことについて、まず、思い出されるのは、戦前の「滝川事件」です。これは京都大学の滝川教授を「政府および皇室に都合の悪い学問上の考えを持っているからクビにせよ。」という圧力が、当時の文部省から京都大学に加えられたという事件で、この前後から戦前の思想弾圧が急激に進んでいきました。ドイツでもヒットラーが最初は「共産主義者を弾圧」して、そのあとで「自由主義者を黙らせた」は有名な話です。そして、戦後になって、この「学問の自由」を弾圧し、学者・研究者を侵略戦争に加担させ、国民の批判をも封じたことを反省し、「学問の自由」「思想の自由」などが憲法に設けられたものです。
今回の学術会議任命拒否問題について、多くの人が「学問の自由」が侵される重大な問題だとの指摘がありますが、同時にもっと広く、「思想・信条の自由」が侵される重大な問題だと考えねばなりません。任命拒否の理由は、「安倍政権が進めた戦争法に反対する意見を持っていたから」などと言われ,政府に批判的な人を排除しようとしているわけで、思想の自由を規定している憲法19条、信条によって差別してはいけないとしている14条に違反している行為です。
公害のない社会をめざし、地球環境汚染に反対する運動に取り組んでいる私たちにとって、民主主義が基本的要件であり、自由で多様な言論活動が必要不可欠です。菅政権が、国民の批判を抑え込み、思想を弾圧し、独裁的な政治に移行して行きかねないと危惧します。国民の政府見解への批判を封じ、物言えぬ社会にすることは、決して受け入れられません。現在進みつつある中国による香港市民への「中国批判封じ込み」と同じことが進行しているのではないでしょうか。
さらに、安倍政治を引き継ぐという菅首相は、市民が納得のいく説明をしないという悪習も引き継ぎ、説明責任を果たそうとはしていません
学者・研究者らによる大学・学会・学協会など900を超える団体の抗議はもちろん、映画人、文学者、宗教者、多くの市民団体など広範な人々も抗議の声を上げつつあります。
菅首相が、第25期日本学術会議新規会員の任命拒否を直ちに撤回し、同会議の要望にそって6名を任命すること、また菅首相が今回の任命拒否をした理由について市民が納得のいくように説明することを求めていきます。
2020年12月25日
大阪から公害をなくす会
会長 金谷邦夫