原発問題住民運動大阪連絡会 - #140 関西電力との「原発の安全を目指す第8回話し合い」
ライフライン市民フォーラム(LLCF)は昨年12月22日関電本店ビルで「原発の安全に関する 第8回話し合い」を持ちました。LLCF側からは、関電株主の会、原発住民運動大阪連絡会、大阪市民ネットワーク、電力労働運動近畿センター、LLCF事務局などから8人が参加、関電側からは地域共生・広報室エネルギー広報グループ マネージャー3人が出席しました。話し合いは、LLCFが事前に提出した質問書(内容はニュース11月138号で詳細報告)に関電側が逐条的に答えることから始まり、2時間たっぷりの内容豊かな討論が行われました。以下、関電回答を巡って行われた討論の中での主な問題の話し合いの要点を報告します。
話し合い記録の扱い
関電側から、議事録としてまとめ確認を求められると社内の手続きもあり、決まったことしか言えないと言う主旨の発言があり、できるだけ討論が深まるようお互いに配慮することになった。
大飯三号機管台の傷について
昨年5月に公表され、以後対策が行われている大飯3号機原子炉容器出入り口配管(管台)溶接部のヒビ割れ傷の問題について、強い放射能に汚染されている部分で、対策工事の中での作業労働者の被曝の危険性が問題となり関電側から、作業は基本的には全部自動だが、今工具や方法を準備中で、それがはっきりすれば被曝予想線量なども明らかにできると発言された。
同様の傷が他にないのかの問には、今までこのような溶接部分には応力腐食割れは起こらないと考えていたが、アメリカで発見されたというニュースで調べて、大飯3号機のこの部分で見つかったと答え、関電としては対策も立て、割れた部分を削って調査し、安全率は下がっているが削ったままでも安全基準内であり、安全に運転できることを解析し、保安院にも認めてもらって今運転している。09年10月頃の次の定期検査時に溶接して埋めたいと考えていると説明した。LLCF側からは、30年以上経て老化しており他にも起こらないかと心配だ、絶対にないと言い切らず軽く扱わないでもらいたいとう要望した。
原子炉炉材脆化問題
LLCF側からに質問で次の指摘がされた。それは、関電の説明で、脆性遷移温度(炉の材料の温度が上がると炉材がもろくなり緊急の注水時に壊れる危険が増える温度の変化)は、初めは急速に上昇するが、あるところから上昇のカーブが緩くなると述べて、そうなる材料内部の構造も含めて根拠を説明した。しかしこれについては有力大学の金属材料学の名誉教授から、それは違うという理の通った反論の論文が、雑誌「科学」に公表されている。この論文を関電も勉強して我々が納得できる説明を是非して欲しいと言う内容である。
さらにこの論文では、国の高経年化対策検討委員会が全国50数機の原発を調べた表で、脆化の大きい美浜1号機などでは、緊急冷却時の加圧熱衝撃が事業者解析で、発生応力が破壊応力に接近した値になってるのも不気味であると述べていることも指摘されて次回の説明が求められた。
これに対し関電は指摘を確認し、大飯3号機のひび割れの性質解明も含め、調べていこうと思っていると答えた。
プルサーマル問題
関電側は、MOX燃料を炉内の燃料の1/4までを限度に入れるが、これくらいならプルトニウム原子の特性で制御棒の効きが悪くなる問題も今ある余裕度の範囲内にあるので運転は可能だと思っていると回答した。さらにLLCF側が、関電は、使用済みのMOX燃料を何回も再処理を繰り返してウラン燃料を回収すればウラン燃料の利用効率が上がるように言うが、何回ぐらいやれると考えるかと問いかけた。
MOX燃料が燃えるとプルトニウムが変化して高次化して放射能も強くますます扱いにくくなり、今国内ではそれを再処理できる施設はまだ計画も決まっていない、それを何かいけるような説明をし、それを根拠にどんどんプルサーマルを進めるのはおかしいのではないかと指摘した。この質問についてのやり取りで関電側は、放射線源が増え被曝量が増えるというのは問題だと認めた上で、そういうところは国も将来的にいろんなところを考えていかないといけないと認め、いま理論的、技術的に裏付けのないものをやれるように宣伝するのは行き過ぎだというこちらの指摘に、説得力のある反論ができなかった。
温暖化・CO2排出問題
この問題では、排出総量目標か原単位目標かが繰り返し論議された。LLCF側は、今世界でCO2排出量が問題になっている時、世間でも一般国民にとっても総量目標が分かりやすい、排出量目標に変える必要があると主張するのに対し関電側は、会社は発電だけでなく送電、変電、配電の各段階を経てお客様に電気を届けその各段階でCO2排出削減に取り組んでいるので、その取り組みを評価するという意味で使用電力当たりの排出量(原単位)用いるのが適当だと主張した。
論議のなかで関電は、会社に電気を供給する義務がある限り目標は原単位でしかあり得ない。総量規制をするというなら、お客様の電気の使用量を規制しなければならなくなると主張、LLCF側は、それは問題のすり替えだ、何で発電するか、どんな電源の電気を送るかもっと研究が要るのではないかと反論。
また関電は、原単位を減らせばCO2排出は減るのだから総量削減と同じ事ではないかとも言い、LLCF側が、原単位を減らすのは結構だが、その他の努力を集めて全関電で排出量をここまで減らしますという分かりやすい目標を示さないとエネルギー産業は世の中の流れから取り残されると主張した。
この論争は平行線で終わり持ち越した。
この話の中ではオール電化問題も取り上げられ、ガス会社との従来型の温水器とヒートポンプ式空調機の譲り合いで協調はできないかの意見に対し、関電側は次のように答えた。それは、お客様と直接接する部分では、お客様の選択を否定するものではありませんが、それは基本的に競争部分。お互いにより効率のよいものを作ってサービスを提供していくと言う考え方が、お客様へのサービス向上、同時にNO2の削減にもつながります。必ずしも譲り合いがサービスの向上になるか分かりません。
電気料問題など
最後に、CO2排出データの公表、和歌山の梅枯れ問題、さらに電気料問題が話し合われた。
排出量データ問題では、他電力のデータは商取引の内容になり相手のあることで公表できないとあくまで主張した。
御坊や海南の発電所の排出ガスによる梅枯れ問題は指摘、要請にとどまった。
電気料問題では、LLCE側が、09年1月から3ヶ月毎に燃料購入価格に合わせて料金を調整するが、大幅な変動を避けてちょっと宛分けて変えるというが、一般庶民にはわかりにくい。機会を作って学習させてくれと要望し意見交換。質問状をこちらから出すから意見交換ができるようにして欲しいと要望した。
これで討議を終わり、LLCF側の司会が、年明け2月初めぐらいまでに質問状をできるだけまとめると締めくくり、関電側が、できれば質問を絞ってくれと要請して話し合いを終わった。
げんぱつ (大阪・原発住民運動情報付録)
【 2009年1月25日 No.140 】
原発問題救民運動大阪連絡会