原発問題住民運動大阪連絡会 - げんぱつ 2012年8月25日 No.183
基本方針を決めないなし崩しの運転再開に厳しい反対の声
野田首相は「脱原発依存」を唱えながら、今年夏場の電力供給不足を主な口実に、大多数の国民の「原発ノー」の世論を無視して関西電量大飯原発3,4号機の運転再開を承認しました。さらに電力会社が次々と準備する停止原発再稼働の要求に応えるため、与党からも批判される拙速の原子力規制委員会を発足させて、運転承認の体制づくりを進めようとしています。
また、今後のエネルギー基本政策策定のための世論聴取ということで、2030年の電源構成に占める原子力の割合について0%、15%、20〜25%の3案を示して国民からの意見を募り、8万9千を超える意見が寄せられました。そして全国各地で行われた聴取会場でのアンケートでは「原発ゼロ」が7割以上(日経7月17日)と報じられています。そもそもこの世論聴取では、会場発言、寄せられた意見、アンケートなどの扱いをどうするか事前の定めはありません。15%を軸に検討していた政府は厳しい対応を迫られています。このような国民的な世論に対し経団連をはじめとする経済者団体は一斉に原発の必要性を主張し、現在の原発を減らすことは、電気料の値上がり、電力供給の不安定等の結果を招き日本経済の将来の発展を危うくすると非難しています。このような情勢に黙ってはいられないと、毎週金曜日の夕刻に数万の人びとが首相官邸を包囲して「原発ノー」の声をあげています。
事故調査報告の検討もなしに原発再稼働を進める政府
これまでの経過で感じる最大の問題点は、政府が「脱原発依存」を唱えながら、原子力・原発を今後どう扱うか、廃止を決断するか、使用を続けるかという根本問題についての考えを明確にしないで、依然として電力会社、財界等の意向にしたがって、電力不足、電力供給不安定等を口実に、なし崩しの原発運転再開をすすめていることです。しかもこの間に行われた政府、国会、民間等の四つの事故調査報告を検討して政策に反映することなく、あたかも既成事実をつくって置こうとするかのように運転再開を強行してきました。
政府事故調報告は、事故発生に果たした「安全神話」の役割を指摘しました。国会事故調報告は、電力会社の情報隠しと経産省、財界の組織的影響で、保安院と東電の地位が逆転していたと言う決定的な指摘をしています。原子力行政の基本を狂わせたこれらの諸指摘を真摯に受け止めて、事故を発生させた問題点を確認し、その克服条件を明らかにして、原子力ムラの影響をぬぐいさった体制をつくって今後のエネルギー政策、原発の在り方を審議すべきです。原発を推進してきた今までの関係者、関係機関の役割と責任を明らかにし、影響を取り除く事なしに新たな体制は真の安全を保証するものになりません。
原発政策の根本的な変革は、いままで原発推進で利益を得てきた会社や組織に大きな影響を与えます。それらの会社や組織は既得権益を守るために必死に抵抗します。「再生可能エネルギーでは安定した電力供給は無理」「原発をやめれば電気料が上がる」「日本の将来の発展を脅かす」等の批判は、これから取り組まれる技術革新や経営の合理化、発送電分離と電力自由化などの制度革新の成果を考えに入れない、自己の利益中心のためにする批判です。原発にはどんなに安全措置を講じても消し去ることのできない残余のリスクがあり、震災と天災の日本ではそのリスクを無視することはできません。原発の廃止という根本的安全策と、それから生じる個々の経済的な諸問題を同列に置いて、いやむしろ経済的問題のみを強調して原発存続を押し通そうとする経団連、電力会社、原発ムラ関係者の態度は許されるものではありません。
原発日誌・大阪 7/21〜8/20
22日 政府のエネルギー・環境会議は、将来のエネルギー政策についての意見聴取会を大阪、札幌両市で開いた。電力会社や関連会社社員の意見表明を認めない方針を決めた後で初の開催。両会場で事前に抽選で選ばれていた電力会社関係者4人(大阪3人、札幌1人)が意見表明者から除外され、各11人が三つの選択肢について意見を述べた。
23日 東京電力福島第1原発事故を調べていた政府の事故調査・検証委員会23日、最終報告書をまとめた。
野田佳彦首相は午後、都内で、畑村洋太郎委員長から最終報告書を受け取った。報告書は、国と東電が安全神話にとらわれたことが「根源的問題」とする内容。首相は「原子力規制委員会を中心に、二度とこのような事故が起きないように、再発防止に向けて万全を期して取り組んでいきたい。真摯(しんし)に受け止めて対応したい」と述べた。
23日 政府事故調の報告書を受け、細野豪志原発事故担当相は同日夜、9月に発足する原子力規制委員会の事務局である規制庁に継続して調査・検証するための部署を設ける考えを明らかにした。
24日 文部科学省は東京電力福島第1原発事故で放出された放射性ストロンチウム90(半減期約29年)の全国規模の飛散調査結果を公表した。事故後の調査で土壌から検出された宮城、福島両県以外に、関東・東北の10都県で、1960年代の米ソによる大気圏核実験の影響が残っていた2000年〜事故前の最大値以上となった。これ以外の地域では、事故の影響は確認されなかった。
24日 野田佳彦首相は参院予算委員会で、「脱原発依存」の立場は維持しながら、日本の原発技術を蓄積し、海外での原発の安全性維持に貢献する考えを示した。
25日 中部電力浜岡原発5号機(静岡県御前崎市、2005年運転開始)で昨年5月、「復水器」と呼ばれる装置に海水約400トンが流入した事故について、経済産業省原子力安全・保安院は、海水が原子炉など広範囲に及んでいるとして、稼働に耐えるか判断するため、専門家による検討を25日から始める。原子炉の主材料である金属は塩分で腐食しやすくなることが知られており、最悪の場合、廃炉を迫られる可能性もある。
25日 関西電力2012年4〜6月期は、連結経常損益が1200億円前後の赤字(前年同期は551億円の黒字)になったもようだ。保有する原子力発電所全11基の運転停止の影響で液化天然ガス(LNGなど火力発電用の燃料費が膨らみ、電力事業の採算が悪化した。
四半期ベースの経常赤字は、原発停止が相次いだ11年7〜9月期から4・四半期連続。4〜6月は電力需要の少ない時期にあたり、冬季の需要増に対応するため火力発電をフル稼働させた今年1〜3月期(1697億円の赤字)に比べ、赤字幅は縮小した。
25日 関西電力の八木誠社長は、フル稼働している大飯原発3、4号機の地元、福井県おおい町で取材に応じ、大飯原発に続く再稼働について、再稼働の手続きで先行する高浜原発3、4号機(同県高浜町)を最有力候補に位置づけたいとの考えを示した。
25日 北陸電力が原子力安全・保安院に提出した志賀原発(志賀町)敷地直下断層の追加調査計画で、最低来年1月までは同原発を停止しなければならない可能性が高まった。
27日 文部科学省は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後の対応を検証した報告書を公表した。緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の拡散予測を当初公表せず、住民避難に活用されなかった点について、データの信頼性に疑問があったが、住民に提供する意味は「否定することまではできない」として、初めて非を認めた。
29日 首都圏反原発連合が主催する「7.29脱原発国会大包囲」が29日午後に行われ、参加者は東京電力本店や経済産業省周辺をデモ行進した後、国会議事堂を取り囲んだ。参加者数は主催者発表で約20万人。警察発表は行われていないが、新聞報道などによればデモと国会包囲それぞれ12500人程度と伝えられる。
30日 中部電力は、浜岡原子力発電所で進めている津波対策工事について、今年12月としていた工事の完了時期を約1年延長し、2013年12月とすると発表した。全電源喪失に備えた緊急時用の発電機の工事量が、当初の想定を上回ることが判明したため。
31日 政府の原子力損害賠償支援機構は東京電力への1兆円の出資を完了した。機構は議決権の50.11%をにぎって実質国有化した。東電は福島第1原発事故の賠償、廃炉、電力の安定供給を進める。枝野幸男経済産業相は同日の閣議後の記者会見で「東電が電力利用者と福島の被害者のことを考える企業に変わることが必要」と述べ、東電に意識改革を求めた。
31日 茨城県東海村の日本原子力発電東海
第2原発(定期検査中)を巡り「東京電力福島第1原発と同様の重大事故の危険性がある」として31日、村民を含む10都県の266人が国と原電を相手に、運転差し止めなどを求めて水戸地裁に提訴した。
31日 原子力安全・保安院は専門家会合で、原発事故時の対策拠点施設「オフサイトセンター」について、原発から5〜30キロ圏内に置くことを原則とする設置要件をまとめた。対象の全国16カ所のうち、4カ所は5キロ圏内にあるため、移転を迫られる。
8月
1日 衆院議院運営委員会は1日午前、政府が国会に提示した原子力規制委員会の同意人事案で初代委員長候補の田中俊一・高度情報科学技術研究機構顧問(67)から所信を聴取した。
1日 福島地検が東京電力幹部や原子力委員会の学者らに対する業務上過失致死傷容疑などの告訴・告発状を受理したのを受け、告訴団は1日、会見を開き、「受理は一歩前進。被告の犯罪を捜査し、責任を明らかにしてほしい」と期待を示した。
2日 ドイツで脱原発などエネルギー政策の転換を主導した「90年連合・緑の党」副代表のベーベル・ヘーン連邦議員が、嘉田由紀子滋賀県知事、門川大作京都市長と相次ぎ会談し、地方から自然エネルギーの普及促進に取り組む必要があるとの認識で一致した。
ドイツは電力供給量のうち風力や太陽光などの自然エネルギーが25%を占め、2022年までに原発を全廃する方針を決めている。
3日 毎週金曜日の夕方から夜、東京・永田町の首相官邸周辺で行われている反原発行動に、同調する動きが全国に広がっている。毎日新聞の調べでは、少なくとも26道府県で、市民らが金曜日に合わせて抗議行動を実施し、街頭で「再稼働反対」や「原発をなくせ」などと声を上げている。3分の2以上が7月以降にスタートしたばかり。群馬で3日に初めて行動が実施されるなど、抗議の輪が今後一層広がる可能性もある。
3日 関西電力は定期検査中の高浜原発2号機の安全評価(ストレステスト)の1次評価結果を、経済産業省原子力安全・保安院に提出した
6日 広島は原爆投下から67回目の原爆の日を迎えた。広島市中区の平和記念公園で平和記念式典が開かれ、松井一実・広島市長は平和宣言で、東京電力福島第1原発事故を受け、「市民の暮らしと安全を守るためのエネルギー政策の一刻も早い確立」を政府に求めた。原爆投下直後に降った放射性物質を含む「黒い雨」の援護対象区域の拡大への政治判断も訴えた。
6日 東京電力は、昨年の福島第1原発事故発生直後の社内のテレビ会議を録画した約150時間分の映像を、報道関係者に限定して公開した。3月14日の3号機の水素爆発時に吉田昌郎・第1原発所長(当時)が「大変です」と叫んで一報を入れるなど、緊迫した様子がうかがえる。公開は9月7日まで。
8日 原子力安全・保安院は、高速増殖炉「もんじゅ」で燃料交換用の炉内中継装置が原子炉容器内に落下したトラブルに関して、落下に伴う設備への影響はなく、新たに据え付けた装置が正常に機能することを確認したとの評価結果を公表した。文部科学省と日本原子力研究開発機構は同日、県と敦賀市、美浜町にトラブル前の状態に完全復旧したと報告。安全協定に基づく異常時終結連絡書を提出した。
9日 静岡県は14道県で構成する「原子力発電関係団体協議会」を脱退することを決め、会長の三村申吾青森県知事に届け出文書を送付した。脱退は認められる見通し。
10日 電気事業連合会は、政府のパブリックコメント対し、2030年の原発依存度として0%、15%、20〜25%の三つを示したエネルギー政策の選択肢について「いずれも国民負担や経済への影響、実現可能性の点から問題が極めて大きい」と批判する意見を提出した。
10日 枝野幸男経済産業相は閣議後の記者会見で、経済界が原子力発電への依存度の引き下げに慎重な立場であることについて「既存システムで成果を上げた経済界の幹部が消極的であることは当然だが、それを乗り越えていかないと時代は前に進んでいかない」と述べ、経団連などをけん制した。
14日 経済産業省は原発の使用済み核燃料を再処理せずにそのまま地中に廃棄する「直接処分」について、関連する研究費を13年度概算要求に盛り込む方向で検討に入った。
15日 福島県と県町村会は、東京電力福島第1原発事故で放射性物質に汚染された森林の除染を求める要望書を細野豪志環境相に手渡した。細野環境相は「しっかり取り組む必要がある。どうやって解決するか見えていないが、福島の皆さんに納得していただけるようにしたい」と応じた。
16日 脱原発を掲げ「緑」をキーワードとする市民団体が次期衆院選の比例代表東京ブロックに統一候補を擁立する方針を固めた。
16日 新聞赤旗によると、 原子力発電所にたずさわる民間人の政治信条、経済状況や通院歴、家庭状況などのプライバシー情報を行政機関が調べ、”不適格”と判断した場合には業務から排除できる「適正評価制度」の速やかな導入を内閣府原子力委員会が要望していることが、同委員会の文書でわかった。原子力業界の隠ぺい体質が明らかになる中、隠しやすい仕掛けづくりをすることは重大だ。
19日 政府は、福島市で東京電力福島第1原発事故に関する福島県と同県双葉郡8町村との意見交換会を開いた。政府は放射性物質を取り除く除染で生じる汚染土壌を保管する中間貯蔵施設について、大熊、双葉、楢葉3町の計12カ所を候補地として初めて示し、現地調査を行うことを提案した。県と8町村は回答を保留した。住民の反発などから協議は難航も予想される。
20日 東京電力福島第1原発事故を巡る4つの事故調査委員会の報告書策定を受け、事故検証を続けるための動きが出始めた。民主党の原発事故収束対策プロジェクトチーム(PT)は月内にも国会の調査機関設置を提言する。政府は9月に発足する原子力規制委員会の内部に、福島原発の事故検証組織の設置を検討している。規制委は独立性が高いとはいえ、あくまで政府組織のため外部の目が必要との声は多い。
げんぱつ (大阪・原発住民運動情報付録)
【 2012年8月25日 No.183 】
原発問題救民運動大阪連絡会