原発問題住民運動大阪連絡会 - げんぱつカテゴリのエントリ
「原発からの撤退・計画的廃止」を国民的要求に
いま国民の中に「こんな恐ろしい原発はもういらない」という思いが広がっています。事故発生から3カ月、テレビや報道で見聞きした福島原発事故の実態と被害のすさまじさ、深刻さは国民の心に焼き付いています。
過酷事故でコントロールできなくなった原発からの放射能汚染を止めるすべがなく、被害地域は広がり、町ぐるみの避難を余儀なくされ地域の住民は何時故郷に帰れるかのめどもありません。被爆国民である日本人の心にしみこんでいる放射線被害への恐怖心が、自分だけでなく子供や家族が被曝したらガンになる危険が増えるという不安を掻き立てます。目に見えない放射線の危険が平和の時代に国民にとっての新しい不安要因となっています。
私たちは原発(軽水炉)は(1)事故によって大量の放射能を放出する危険をなくすことが出来ない(2)運転で原爆の原料プルトニウムが生まれる(3)運転で生まれる高レベル核廃棄物は処分方法も決まっていない(4)事故の放射線被害が異常に大きい。という理由で地震国日本ではこれ以上の拡大を止めゼロを目指して計画的に廃止しべきだと主張してきました。 今回の福島第一原発の事故は圧倒的な被害の事実で国民の心に「原発はもういらない」という思いを掻き立てました。この思いを「原発からの撤退を国の基本施策として計画的に廃止する」要求に育て大きくしていくことが求められています。
福島第一原発事故経過から見えてきたこと
危険な原発の計画的廃止が現実の課題になってきた
1.事故から三カ月近くを経過して
3月11日の東日本大震災から始まった福島第一原発の過酷事故(原子炉が壊れて膨大な放射能が放出される事故)から三カ月近くが経過しましたがいまだに事故が収束する見通しは立っていません。
現在の状況は
(1)被害拡大を止める根本である事故終息に向けた努力が最優先で進められ、原子炉を冷却する機能を作ることと、再度の事故発生を防ぐ緊急の事故防止政策が取り組まれましたが、冷却機能を確立して原子炉の温度を100℃に止めて安定化する具体的な見通しが立たずに試行錯誤を続けきました。
(2)そしてもう一方、事故経過の正確な把握、分析に基づく原因究明と、今後を展望した原子力政策の根本的な転換の内容についての論議がすでに始まっています。
(3)さらに事故対策の重要な部分である事故被害の実情把握、被害者対策と被害補償問題では、チェルノブイリ原発事故に近づく放射能が放出されたことで起こった様々な被害と恐怖による被害者の切実な要求に押されて緊急の対策が始まっています。
このような状況を見ると、事故以後現在までの特徴は。自分たちが作り出した「日本では重大事故は起こらない」という安全神話に自分自身がとらわれて、過酷事故に対する総合的な政策もマニュアルも、当然訓練もなかった政府・東電が、まず原子炉を冷やすという最初期の原子炉溶融防止対策に失敗して二つの水素爆発を発生させて以後は、次々と進行する、「崩壊熱」を原因とするトラブル対策に追われ、試行錯誤を続けてきた時期だったと思います。
そして現在は、事故を終息させる緊急対策に国・国民の持つ能力を集中して成功するとともに、今後を展望する「原子力政策の抜本的な転換」の内容を国民的な規模で論議して、原子力発電への国民的な理解を高め正確な政策を選択していく条件を作ることが、事故終息のための緊急対策の成功にとっても、事故の結果引き起こされた被害の救済と復興対策の具体化のためにも欠かせない時期に来ているのだと考えられます。
2.事故収束の緊急対策をめぐって
工事自体としては特に困難ではない原子炉冷却装置システムの回復が困難を極めている原因は、人の接近を許さない原子炉内外の高い環境放射能水準と、外部からの冷却水注入による高度汚染水の大量発生でした。強い環境放射能は2回の爆発によって飛び散った放射能を帯びた瓦礫などの散乱と、さまざまな機会に原子炉から漏れる水やガスの放射能によっています。ここでは多くの国民の知恵やアイデアの活用が求められます。外国技術に頼るのが最善とは言えません。外付けの冷却装置のアイデアなどは事故の早い時期から住民運動が提案していました。
この分野で理解しがたいのは、M8地震の原発機器に対する影響の問題ほとんど情報がないことです。中越沖地震の直撃を受けた柏崎刈羽発電所では2,000をこえる大小のトラブルがありいまだに全機復帰を果たしていません。機器や配管からの水漏れなど福島でもないはずはありません。自分に都合の悪い問題は見過ごし、都合のよい解釈で計画を組んでいくと次々と新た強い困難を生むことになります。
東電はいま発電所にたまっている汚染水を循環させる冷却システムを準備していますが国民の持つ知恵を総動員して技術的困難を乗り切っていく姿勢が求められます。
また、緊急対策ということで、今後の原発のあり方を規定してしまうような施策を取ってはいけません。菅首相の「浜岡原発停止・二年間で防災(津波)対策が終了したら運転可能」の施策は、今後の原発のあり方に踏み込んでいます。
3.事故の経過、原因の調査について
菅首相は事故調査委員会を立ち上げると云いますが、メンバーはよく分かりません。今まで原発推進に参加した人々が中心になるなら、今の政策を根本的に転換する根拠となるような事実解明は困難だと思います。原発を巡り利益や地位などを受けてきた大きな利益集団(俗称「原発ムラ」)に属さない学者、研究者、技術者、識者の登用がカギとなります。
最近、事故発生時前後の記録・資料が発表され、東電や政府の行動にさまざまな指摘がされていますが、本質をついた問題討議に向けた論点整理が必要と思います。東電から「1号機では冷却停止以後5時間でメルトダウンが始まり、16時間で完全な溶解」という調査結果が発表されました。冷却が止まればたちまちに温度が上がり溶解が始まることは専門家でなくとも常識に属することで、問題はなぜそういう理解のもとで緊急の冷却手段を講じ、爆発や炉心溶解を防ぐことができなかったのかという点を解明すべきだと思います。
さらに事故原因の調査の内容に、現在の原発(軽水炉)についての評価を含めるべきだと思います。今度の福島原発事故の一番の問題点は、一度コントロールできなくなった原発の危険と、収束対策の難しさ、被害の深刻さです。そしてこの危険は既存の原発の構造そのものから発しています。今の原発を既定の事実として次代に引き継いでいいのかを国民的に明らかにする必要があります。
4.危険な原発の計画的廃止の道へ
既存原発の計画的廃止の問題は地球の安全を守るエネルギー対策と裏表の関係で結びついています。既存の原発をなくしてもやっていけるエネルギーの展望と結び付きます。それでなければ国民多数の理解は得られません。さらに国と電力資本が情報と資金を握って専制的に推進してきた原子力政策を根本的に切り替えて安全で平和で民主的な内容に転換していく問題であり、多くの国民の積極的な参加、支持のもとに初めて前進できる問題です。「原発に退場してもらうために、自分たちの努力で自然エネルギーを生みだそう」というような国民の創意と積極性に支えられてはじめて前進できる問題です。平和で安全、地域の発展に結び付くようなエネルギー政策の確立を目指して、国民的な世論作りを進めるとともに、広い視野で大きな展望を持って取り組みましょう。
日本の原子力行政がもたらした過酷事故
3月11日の東日本大地震・大津波から始まった東京電力福島第一原発での過酷事故の被害のすさまじさと、国も東電もしっかりコントロールできない事故の今後の成り行きを日本中が恐怖を感じながら見守り、世界中が注目しています。
東電は国にうながされて福島第1原子力発電所の事故収束に向けた復旧作業の「工程表」を発表し、6〜9カ月で原子炉を安全な「冷温停止状態」としていますが、発表のはじめからその不十分さ、実行の困難さが指摘されています。そして工程表実現の作業に取り掛かるための作業環境の安全確保にまず苦慮している状況です。
他方、広がる被害への補償を求める居住者、耕作者、漁業者など広範な被害者の声に押されて具体的な補償の検討が始まりました。さらにこの事故を受けてこれからの国の原子力政策の抜本的な転換を求める声も広がっています。その第一歩として今回の事故の根本的な原因について考えます。
・軽水炉の根本的な問題点
水を冷却材として使う現在の現在の日本の原発(軽水炉)の最大の問題点は
(1)炉内に膨大な放射能を内蔵する構造で、それが何らかの原因で外に漏れ出せば驚くべき被害を広い地域に長い期間与える危険性があるということ
(2)軽水炉を運転すると核兵器の主要材料であり、人類にとって最悪の毒物でるプルトニウムが発生し、核拡散の危険につながること
(3)いまだに処理方法が決まらない高レベル放射性廃棄物が後世への最悪な負の遺産として残る という点です。
この第一の問題点が現実のものとなって被害と恐怖を与えているのが今回の事故です。
・絶対に安全な技術だったか
このような危険をはらんだ原発が作られ世界に普及した経過には戦争との深い関係が見られます。冷却材に水を使う軽水炉は、アメリカの原子力潜水艦のエンジンとして開発された技術を基につくられ、アメリカで核兵器用に大量に作られた濃縮ウランと抱き合わせで「原子力の平和利用」として世界に輸出されて今に至っています。兵器技術からの転用で、絶対に安全な技術として根本から練り上げられた技術でないことが第一の危険の基礎にあると思います。
・崩壊した「安全神話」
そして国も電力会社も「日本の原発は五重の障壁(多重防護システム)で守ってあるから大丈夫であり、放射能が大量に外部に放出されるような「過酷事故」は日本では起こらない」と断言し、国際原子力機関(IAEA)からの、過酷事故対策をはっきり立てて取り組めという勧告を無視してきました。この「安全神話」が今回の事故発生の最大の原因だったと考えます。阪神淡路大震災以来地震活動期に入ったと言われる日本で、震災が原発事故の最大の原因になるという状況です。
問題は、地震や津波の危険性を具体的に指摘して対策を求めた多くの意見に耳を貸さず、しっかりした耐震基準で地震や津波に耐えられる原発が作られてきませんでした。絶対に事故を起こさない基準ではなかったのです。よく「想定外」という言い訳が行われますが、想定しない限り対策は出てきません。想定しなかったこと自体に責任があります。
・過酷事故への備えなく右往左往
もう一点指摘します。それは国と電力会社が、自らが作りだした「安全神話」にはまり込んで、しっかりした過酷事故対策の計画を作り訓練をしてこなかったことです。原発が地震で緊急停止したら、燃料から出る崩壊熱で原子炉が溶融破壊しないように「まず水で冷やす」という鉄則が、福島原発では、原発を使用不能にしたくないという東電の思惑や、国が的確な指示を行わなかったなどで守られず、海水注水が翌12日の夜に初めて行われ、この緊急対策の遅れが、二つの水素爆発の発生などその後の事故の展開と、回復のめどが立たない事故に発展した大きな原因になっていることが最近の報道で明らかになりました。
・徹底した事故原因究明を
このように、今回の事故はまさに人災です。「未曾有の津波」は事故のきっかけに過ぎず、本当の原因は、このよう危険性のある原発を建設し、危険性に見合うしっかりした基準、企画での建設を行わず、過酷事故対策を持って取り組まなかった国と東電にあり、事故は今までの国の原子力行政の結果です。
原子炉を安全な状態に落ち着かせる「工程表」の早期確実な実現と同時に、事故の原因の徹底的な検証と、その結果にもとづく国の原発政策の抜本的な見直しが必要です。
東北太平洋沖地震の緊急アッピール
「東北地方太平洋沖地震」に伴うライフライン関係団体からの緊急アピール
2011年3月17日 『ライフライン市民フォーラム(LLCF)相談会』
ライフライン市民フォーラムは、3月11日に発生した東北関東大地震による犠牲者の方々に深い哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心からのお見舞いを申し上げます。
未曾有の震災
世界の地震観測史上最大級と言われる東北地方太平洋沖地震にかかる報道に接し、その被害の甚大さに体が震える思いです。
この震災の特徴は、阪神淡路大震災の1,000倍の規模であり、大津波を伴い、さらに原発過酷事故の危険を現実化していることです。数十万を超える被災者と壊滅した地域の現状は、「国難」と言っても過言ではありません。
復旧支援を直ちに
この惨状を前にして、いま緊急に求められることは、まず国が全力をあげ、国民が力を合わせて被害者を危機から救い、安全を確保することだと思います。そして、一刻も早く被災者の安否確認をおこない、皆さんが展望のある生活復帰に立ち上がれるよう支援することだと考えます。私たちは、国や自治体による支援だけでなく、経済界にもそれを求めるとともに、私たち自身が力を合わせて、国民的な取り組が必要だと考えます。
住民の安全と安心を第一
同時に考えることは、世界第二の経済大国を標榜してきたわが国が、「儲け第一」の経済活動を優先し安全で安心できる社会づくりやライフラインづくりを軽視してきた経過を振り返り、国民の安全と安心を第一とする政策に大転換する決意を固め、復興の事業に取組む重要性を痛感しています。
美浜1号機建て替え計画の見直しを
ライフライン市民フォーラム(LLCF)は、これまて都市を中心とするライフラインの安全を守る取り組みを続けてきました。その一環として、2004年の関西電力美浜原発3号機の事故以来、原発の安全な運営を目指した関西電力と10回を超える話し合いを行ってきました。そして先日第12回目の話し合いを申し入れ、今問題になっている美浜原発1号機のリプレース(建て替え)問題について、過酷事故の危険を免れない今の形の原発(軽水炉)による建て替えをやめることを申し入れました。いま地震と大津波による福島原発の過酷事故の現実を前にして、改めて関電への申し入れの重要性をかみしめています。
安全神話の崩壊
これまで、国も、財界も、関西電力も我々の指摘する原発の危険に対し、「日本の原発は五重の壁で守られているから絶対に安全だ」と主張し続けてきました。もちろん、地震に対する対応についても同様の主張をしてきました。しかし、その論拠は大津波被害の前にもろくも崩れ去り、国と東京電力は炉心の崩壊爆発を食い止めるため、懸命に取り組んでいます。
エネルギー政策の根本的な見直しを
福島原発周辺では住民への避難命令が強行され、人々は被曝の恐怖にさらされています。さらに、東京電力は発電能力の低下対策として「計画停電」を実施に移し国民生活や産業経済活動に重大な影響をもたらしています。原発の持つ根本的なリスクが眼前に具体化し進行しているのが現状です。いずれ、今回の事故に対する調査報告書が取りまとめられます。その際には、エネルギー政策の根本的な見直し議論を国民的議論として行う必要があります。まずは「人命最優先」で国民的な被災者への緊急の救援活動が求められています。
私たちは、今回発生した困難に対し、国民的な連帯のもと、被災者への支援に全力を尽くすとともに、国民の安全と安心を第一にする社会を目指して運動をすすめます。
美浜原発1号機の後継に同じ原発を建てるな
原発問題住民運動大阪連絡会が加盟する「ライフライン市民フォーラム(LLCF)」は、2月14日に、美浜原発1号機の建て替え問題で関西電力に「申入書」を提出しました。その中で後継発電機におなじ形式の「軽水炉」を用いることに反対しています。以下、「申入書」の全文を紹介します。
第十二回関西電力株式会社申入書
2011年2月14日
関西電力株式会社 社長・ 八木 誠 殿
ライフライン市民フォーラム(LLCF)相談会
貴社ますますご清栄にお喜び申し上げます。
貴社が低炭素社会に向けてご尽力されていることに敬意を表します。また今日まで十一回に及ぶ申し入れ懇談会への真摯な対応にお礼申し上げます。
地球環境問題で気候変動が激化し、異常気象が頻繁に世界的規模で発生していることも、今日何人も承知されていることであります。
そのような状況下、今後のエネルギー未来を展望したとき、原発に重きを依存するようなことが、はたして未来社会への低炭素社会に適しているのかどうか疑問を感じます。
今回の申し入れは、関西電力美浜原発一号機のリプレース問題に絞り込みますので宜しくご回答していただくように申し入れとします。
記
1、はじめに
私たちは2004/8の美浜3号機2次系配管破断事故による下請け労働者死亡5名を含む100名近い傷害事故以来、原発の安全を守る対策について貴社本店と話し合いを続けてきました。この事故は運転開始以来28年足らずで発生し、その直後から全国的な原発老朽化対策を政府は行わざるを得なくなりました。私たちは、今日まで11回に及ぶ懇談会を通じ、関電の考え方を聞き、私たちの考えも述べ、原発の安全性を高める方向を積極的に働きかけてきました。その場では真摯に取り組む原発の安全管理についての関電の努力を一定評価すると共に、さし迫っている地球温暖化防止対策のためには、「原発はCO2を出しません・コマーシャル」に固執せず、むしろ巨大原発の地震や事故による停止がCO2総排出量を増加させている現実を認めるよう求め、同時にこれからは、市民社会が自ら発電事業に参加する時代に入りつつあることも説明し、むしろ、電力技術を豊富に蓄積している関西電力こそ、率先して市民と協力・共同しながら社会的責任を果たすよう進言してきました。
貴社の基本的見解をお知らせください。
2、関電美浜原発1号機、国内2例目の40年運転に入る
新聞報道によると関西電力は、運転開始40年を超える美浜1号機(1970/11/28運転開始・34万KW)の運転継続を申請(国は最大10年の延長を認めているが関電は延長目標を示していない)するとともに、廃炉と新設を並行して行うリプレース(置き換え)の検討も行っています。そのため新たな原発(八木社長は100〜150万KWを頭に描くと表明)設置に向けた地質などの自主調査を行い、来年秋ごろに方針を示す予定であるといいます。推測すると、これらの発言は、「新たなリプレース」とは、巨大加圧水型軽水炉を予定していると思わざるを得ません。間違いありませんか、貴社の見解をお尋ねします。
3、加圧水型軽水炉について
「軽水炉型原子力発電」とは、(1)アメリカ原子力潜水艦の商業施設化から始まった、(2)絶対の安全性よりもむしろ機能、利用効率を重視している、(3)アメリカの絶対的な支配力のもと「プルトニウムを産出する」こと目的として開発された、等々数十年にわたるNPTの議論も含め世界が周知している事実です。日夜報道されているイランや北朝鮮の核兵器開発の根本がそこにあることは、既に多くの国民が知っています。
また、軽水炉原発の安全性は、(1)ウランを燃料とする軽水炉が過酷事故の危険を完全に払拭することが困難であり、(2)すべてを処理するための核燃料サイクル体制の整備そのものが、さまざまな機器トラブルによる目途のつかなく見通し不明であり、(3)その結果増え続けるプルトニウム保有量削減のために計画されたプルサーマルが、さらなる危険性増大をはらむなどさまざまな問題点をもちながら強行されているのが現状です。
私たちは、プルサーマル強行は、高次化するプルトニウムなどを産み出し、反復再処理不能とすることを中心に、関電との話し合いの中で実施に反対してきました。
さらに70%台を低迷する原発利用率の低さが示すようにトラブルで停止する場合が多く、100万kwクラスの原発の停止がただちに電力会社の電力供給の安定を脅かす事態を生んでいる現実を直視すれば、現在の原子力発電は安定安全なエネルギー源とは言い難いと指摘してきました。
貴社の見解をお尋ねします。
4、50〜60年運転を予想する巨大軽水炉建設の社会的責任がとれるのでしょうか
(1)これからの電力需要を考えても、経済のサービス化、消費者の使用する機器効率の向上、さらに人口の減少などの諸条件は、一方に電気自動車の普及など増加要因はあっても、電力需要の減少傾向を予想させると考えるならば、今以上に送電線ロスの大きい遠隔地に存在する巨大原発の必要性は無いと思います。
(2)阪神淡路大震災以来、地震活動期に入った時代としての対策・知見は、大きく前進し、地質・活断層・地球プレート・列島歪み帯の存在等々、次々と原発立地点での設計原点を揺るがしたり様々な不備への指摘が続いています。
(3)原発安全性問題は、根本的には現在のウランを燃料とする軽水炉が過酷事故の危険を完全に払拭することが困難であり、過酷事故の危険への不安がつきまとうことが日夜続いています。
(4)原発の継続を保障すべく政府財界が強行している核燃料サイクル体制の整備そのものは、その主柱である六ヶ所再処理施設の繰り返す操業計画延期、試験運転を再開した高速増殖炉もんじゅの早速の機器トラブルによる目途のつかない運転再開などで全く見通し不明です。
その結果増え続けるプルトニウム保有量削減のために計画されたプルサーマルが、原発運転の危険性増大などさまざまな問題点を掲げる各立地地域住民の反対を押し切って強行されているのが現状ではないでしょうか。
(5)さらにいまのウランを燃料とする原発運転によって必然的に産出されるプルトニウムが核拡散の危険の根源として人類の最大の恐怖の源となっている事実は無視できません。そして発生する高レベル核廃棄物の最終処理方針と、予定地選定の見通しの困難などの状況を考えると、現在の政府財界の「地球温暖化対策としての原発推進政策」は大きな危険を無視する誤った施策であり、原発推進は社会の大きな不安定を生み出す大きな要因の一つとなっていると言わざるを得ません。
以上5点、貴社の見解をお尋ねします。
5、100歩ゆずっても、美浜1号機あとに建設する場合、軽水炉は止めるべきです
前項で述べたように、私たちの次世代から次々世代まで不安が解決出来ない、プルトニウム利用を前提とする「軽水炉」は止めることです。原子力を利用する限りは、上記の根本的な危険性解消に挑戦し、プルトニゥムを生じないもので高レベル放射性物質、アクチニドをあまり出さない小規模実験炉めざすべきです。地球上に存在しなかった元素を恣意的に増加させる犯罪的な行為は、生物多様性や地球規模の放射能汚染から考えても根本的にあらためることが求められています。むしろ電力会社としても政府に対し積極的な提言を行うことが大切ではないでしょうか。貴社の原発未来への検討事項として考慮しませんか、お尋ねします。
6、最後に
時代は「集権的一方通行の電力供給」よりも「ロスが少ない、地域分散型自然エネルギー双方向発電方式」を求めている
すでに多くの人々が示唆しているように、時代は電力線+IT線一体化のスマートグリッドの実現に向け、世界が動いています。第一次・第二次産業革命を見るならば、今は第三次産業革命時期に相当します。とりわけ地球温暖化の危機が迫っているだけに、圧倒的な市民参加による爆発的な自然エネルギー・再生可能エネルギーの普及が急がれています。固定価格買い取り制度などを活用したCO2排出の少ない民参加の電力供給能力の抜本的強化、そのために必要な受け入れ・供給の双方向分散型の電力網構築(スマートグリット)等の推進は各国の実情に沿って創意ある産業構築も進んでいます。
関西電力も、2020年中期CO2削減目標25%以上が達成出来るよう、不安定な原子力に固執せず、地域の電力消費者との信頼と協力の中で果たしていかれることを期待し要望するものです。
貴社が低炭素社会へのメーンプレイヤーとして「生き残る道」としてどうされるのかお尋ねします。
以上
ライフライン市民フォーラム(LLCF)相談会
電話06−4797−4414 FAX06−4797−4415
今年11月で運転開始から40年を迎える関西電力美浜原発1号機について、美浜町議会は8月11日の全員協議会で、後継機の建設を条件に40年超の運転延長を了承しました。県など関係機関の中で、運転延長を了承したのは同町議会が初めてです。
経済産業省原子力安全・保安院は8月17日、原発の耐震安全性評価の基になる最大の揺れ「基準地震動」について、関西電力が設定した美浜原発750ガル▽大飯原発700ガル▽高浜原発550ガルの値を「妥当」と評価する方針を固め、18日同省の審議会の作業部会で評価案が示され概ね了承されました。これで福井県内の原発計14基の基準地震動について、事業者の評価がすべて妥当と判断されることになりました。
20日
青森県議会は海外から返還される低レベル放射性廃棄物の受け入れに関する説明会を県庁で開いた。
資源エネルギー庁と原子力安全・保安院の担当者や、事業者の電気事業連合会の副会長や日本原燃の社長、知事をはじめ県の担当部局の幹部らが出席し、受け入れの概要などを説明した。説明に対する質疑は、県議会の「原子力・エネルギー対策特別委員会」で行われる。
20日
大地震などによる原子炉のトラブルに備えるため、東京電力福島第1原発(双葉、大熊町)に「免震重要棟」が完成し、20日に開所式があった。緊急時の対策本部の活動拠点として使用する。
会はライフライン市民フォーラム(LLCF)の一員として原発の安全問題で関西電力と話し合いを続けてきました。いまLLCFは次回第11回話し合いの準備にをしています。以下はその中で会がとりまとめた「プルサーマル、MOX燃料について」の質問内容です。
プルサーマの繰り返し実施は困難
前回(3月9日)話し合いで、貴社は「1000kgの使用済み燃料を再処理すると、130kgのMOX燃料と130kgの回収ウラン燃料がそれぞれ得られる。これをプルサーマルという形で再利用すると、使用済み核燃料を直接処分するのに比べて約15%の資源節約になる」と説明しました。しかしこれは年間に日本で使用されるウラン燃料を全て再処理しプルサーマル利用を行うという架空の場合の計算であります。
一回の再処理、プルサーマルの結果の計算は理屈として理解できたとして、その先はどういう見通しでプルサーマルをやるのかと言う当方の質問に対し「それは多分国の原子力政策大綱にちゃんと書いてないと思う」。「個人的にはもんじゅのような高速増殖炉で増やしていくと思う」と答え。プルサーマルの繰り返し利用は無理だという当方の指摘に直接反論はしませんでした。プルサーマルの繰り返し実施は困難という当方の主張を認めたのだと理解しますがそれでよろしいですね。
21日
1995年のナトリウム漏れ事故以来、停止している日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の運転再開について、福井県の西川一誠知事は26日、川端達夫文部科学相と直嶋正行経済産業相との3者協議を東京都内で開く。知事は月内にも運転再開を正式に了承する方針で、国が進める核燃料サイクル政策の中核施設が早ければ5月上旬にも動き出す。
21日
中部電力は、浜岡原発5号機のタービン建屋にある湿分分離加熱器の部材の一部に、ひび割れが見つかったと発表した。ひび割れの長さは目視では約6センチ。深さは分からないという。中電は「安全性に問題はない」と強調し、現在の定期検査に合わせて原因究明と修理を行う予定だが、住民らの一層の不信を招く可能性がある。5号機は昨年8月、県内で最大震度6弱を記録した地震で運転を停止。5月中の運転再開を目指して定期検査を行っている。
加熱器は低合金鋼製の円筒形(長さ約32メートル、直径約4メートル)で、「胴板」と呼ぶ外側の円周部材と仕切り板との溶接部分1カ所に、ひび割れがあった。規定では、胴板に必要な厚さを約27ミリとしているが、ひびのため、この規定値を下回っている可能性があるという。