温暖化対策を口実とする原発推進の問題点・プルサーマルの危険
トップ  >  第38回公害環境デー  >  温暖化対策を口実とする原発推進の問題点・プルサーマルの危険

温暖化対策を口実とする原発推進の問題点
プルサーマルの危険

原発問題住民運動大阪連絡会 木下圏一

紹介を受けました原発問題住民運動大阪連絡会の木下です。「温暖化対策を口実とする原発推進の問題点・プルサーマルの危険」について報告します。

今、日本全国では55基(約4900万kw)の原発があり、日本全国で使用する電力の約1/3を発電しています。関西地方では関西電力が11基、日本原子力発電が2基保有しており、全て福井県の敦賀湾沿岸にあります。

○きれいごと願望で書かれた原子力立国計画

 国、財界、電力業界は日本のエネルギー政策の根幹に原発推進を据え、〇6年8月に「原子力立国計画」策定し推進しています。その推進の理由付けの第一は、エネルギー資源の少ない我が国の将来に向け、「核燃料サイクル」と呼ぶ核燃料の繰り返し利用で、半永久的なエネルギー源として原子力発電を確保するということです。

そしてもう一つの理由付けが「原発は発電の時にCO2を出さないから、地球温暖化対策の貴重な手段となる」ということです。この考えは鳩山新政権でも同じです。この二つの推進理由には多くの問題があります。その問題点を説明しますがその前に。原子力発電そのものが抱える根本的な問題点を指摘しておきます。

○原発の本質的な危険性

原発が抱いている本質的な危険は、構造上、原子炉の中に常に膨大な放射性物質すなわち放射能を閉じ込め貯えてかなければならず、その大量の放射能物質(放射能)が事故などによって外部に放出される可能性を否定できません。そして放射施物質が発する放射線は生物にとってきわめて危険であり、その膨大な放射性物質の実用的な処理処分・無害化の手段が出来ていないことです。この本質的な危険を頭において原発推進の問題点を考えて見ます。

○原発は果たしてクリーンか?

 原発は果たしてクリーンなエネルギー源でしょうか。確かに発電の時に大量のCO2は発生しません。しかしその原発が他の環境破壊の原因になるならクリーンとは言えません。

地球環境問題は温暖化だけではありません。地球上で生物や人類が安全に生き続けられる環境条件の全てを含みます。CO2は減らしたが地球上の放射能を増やしてはクリーンとは言えません。原発がクリーンでない条件を挙げてみると。*大事故で放射能を広い範囲にまき散らす危険がつきまとう*「トイレのないマンション」と言われるように、原発から発生する高レベル放射性廃棄物(「死の灰」)の処理・処分方法が完成して居らず、後の世代に最悪の負の遺産を残すことになる*労働者の被曝が絶えない・・等の問題点が出てきます。

そしてここ数年の柏崎刈羽原発や浜岡原発の被災経験から、大地震活動期に入った日本では、大震災と原発事故が結びついて未曾有の災害となる「原発震災」の危険が言われるようになりました。また原発そのものの老朽化の問題もあります。今の日本では原発はクリーンと言えません。

○満身創痍の「核燃料サイクル」

 「原子力立国計画」美しく描きだした「核燃料サイクル」ですが、それを構成している個々の核施設がそれぞれ大きな問題を抱えて破綻しそうです。

・サイクルの要となる青森県六箇所村の「再処理施設」は93年に着工し、2兆2千億を費やしてやっと最終試験まで来たが処理技術で行き詰まり、完成目標が今年の10月まで延期されたが完成の目途が着いていません。

・プルトニウムを増殖させてサイクルの主役となる高速増殖炉「もんじゅ」は95年のナトリウム漏れ爆発事故で止まったままで今年の運転再開を目指して四苦八苦の状況です。

・高レベル放射性廃棄物最終処分地はいまだに目途が立っていません。

・海外に委託した再処理で溜まったプルトニウムが国内処理分と合わせて50?を超え、直接の爆弾製造の原料ではないにしても核拡散の疑惑を生む条件が進んでいます。

・そこで、プルトニウム過剰蓄積の解消策として、政府と電気産業連合会の指導で強引に進められているのがプルサーマルです。

○プルトニウム減らしのために進められるプルサーマル

 プルサーマルはまず大手からということで関電は90年代に計画しましたが燃料検査データ改ざん問題などで実現せず、結局、九州電力玄海原発3号機で09年11月に日本ではじめて実施されました。関電はいま、10年度に高浜3号機と4号機に導入予定で準備を進めています。れわれはプルサーマル反対の立場で関電と話し合いをしてきました。関電はその目的を「資源の少ない日本で、燃えずに残る95%の貴重なウラン資源を繰り返し再処理して有効に使う」ためだと主張しましたが、我々は、実際には危険で繰り返し再処理は出来ないとの指摘を中心に反対しています。

使用済み燃料の中に燃えないプルトニウムや、普通よりも放射能の強い重い原子が増えて再処理が難しく、周囲の被曝の危険が増えて繰り返しの再処理は困難です。新しく必要な高度な再処理施設は技術的に難しく困難で、経済的にも大きな負担になります。

結局、プルサーマルは、ウラン資源の節約にならない、危険と負担を増やす計画で、保有しているプルトニウムを減らすために強行されている、としか考えられません。

○地球温暖化対策に「原発推進」は見当違い

 以上で説明したように、「温暖化対策のためには原発推進が必要だ」という考えは、原発の環境全体への影響を見ない、偏った、見当違いの考えです。私達は資源やエネルギーの無駄な使用をあおる大量消費の暮らし方の転換、安全で再生可能な太陽光発電などの自然エネルギーの抜本的な強化、CO2を出さない新技術の開発普及などに向かって力を尽くすことが大切だと思います。 以上で報告を終わります。

上記資料のPDF版はこちらをダウンロードしてください。
 温暖化対策を口実とする原発推進の問題点・プルサーマルの危険
プリンタ用画面
前
COP15参加・デンマーク見て歩き
カテゴリートップ
第38回公害環境デー
次
道路や交差点のあり方で国交省と継続交渉・西淀川裁判和解後の「連絡会」

行事案内
おすすめBOOK