泉南アスベスト国賠訴訟 2011年大阪高裁判決を絶対に定着させてはならない 共同のひろがり
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泉南アスベスト国賠訴訟

2011年大阪高裁判決を絶対に定着させてはならない
共同のひろがり

大阪泉南アスベスト国賠訴訟を勝たせる会
事務局長 伊藤泰司

泉南アスベスト国賠訴訟で大阪高等裁判所(三浦潤裁判長)は2011年8月25日、アスベスト健康被害に対する国の不作為責任を初めて認めた一昨年5月の大阪地方裁判所の判決を覆し原告の請求を棄却する不当判決を下しました。
この訴訟は「国は、知ってた!できた!でも、やらなかった!」をスローガンにアスベスト被害における国の責任を追及してきたものです。一審の大阪地裁は2010年5月、アスベスト被害において初めて国の不作為による不法行為を認めました。

産業と国民のいのちを天秤にかけて判断してよい

しかし今回の大阪高裁判決は、産業発展といのち、健康を天秤にかけて国が判断してもよいとする驚くべき発想から、国の責任を認めませんでした。
1967年の旧公害対策基本法には、「生活環境の保全は、経済の健全な発展との調和のもとで進められるべきものである」とする悪名高い「調和条項」があり、国民の批判の前に70年にはこの条項が破棄されました。
泉南国賠高裁判決は、この「調和条項」の再来であるとする意見があります。しかし、旧公害対策基本法の「調和条項」は、生活環境と産業発展ですが、泉南アスベスト大阪高裁判決は、国民のいのち、健康と産業発展の調和としている点で、より悪質なものであると言わなければなりません。判決は、「それらの弊害が懸念されるからといって、工業製品の製造、加工等を直ちに禁止したり、あるいは、厳格な許可制の下でなければ操業を認めないというのでは、工業技術の発達及び産業社会の発展を著しく阻害するだけではなく、労働者の職場自体を奪うことにもなりかねないものである」としました。

徹底した自己責任

一方で、労働者に対しては、1960年前後に一部の新聞報道が行なわれたことから、マスクの着用やアスベスト粉じんが付着した作業衣を自宅に持ち帰らないことは常識であったと責任を転嫁しています。健康被害を受けた労働者や家族、周辺住民に責任を押し付ける露骨な「健康(疾病)の自己責任」論というべき暴論です。
しかし、原告をはじめ泉南のアスベスト被害者らは語ります。「マスクをつけると、苦しいし視野も狭まる。誰もつけていなかった」「もうもうと舞う石綿粉じんは、身体に良いことはないかもしれないと思ってたが、それがこんな重篤な呼吸障害やがんを引き起こすことを知っていたらこんな働き方をするわけがないじゃないか」「がんになることが分かっていてどこの母親が赤ん坊を工場であやしながら仕事をするのですか」と強く訴えています。

絶対にまけられない

この判決がもし定着するようなことになれば、原発の被害にたいするたたかいや、あらゆる公害、薬害にたいするたたかいに極めて大きな否定提起影響を与えてしまいます。どんなことがあっても負けられないたたかいだと思っています。
8月31日には原告全員一致で上告をきめ、上告理由書、上告受理申立書も、11月22日に提出しました。

必死のたたかい

ベテラン弁護士が、「35年の弁護士人生で最大の屈辱だ」と語っているように、弁護団の弁護士たちもショックが大きく、落ち込みもしました。しかも最高裁のたたかいは弁護士が何度も経験することではありません。またほとんどの場合最高裁では弁論が開かれません。上告理由書と受理申立書で、如何に憲法に違反する事態であったか、重大な判例に違反するかということを説得力をもって示すことができるかどうかでほとんどが決まってしまいます。

1008名の上告代理人

まず、上告のための印紙代が600万円ほど必要だということがわかり、訴訟救助(判決後まで支払いを猶予する制度)の申立てをしました。これは不当判決を出した大阪高裁第14民事部に提出して、第14民事部が「最高裁で判決が覆る可能性がないとは言えない」と判断した場合に認められます。裁判長が変わったという事情もあるのでしょうが、全員の訴訟救助が認められました。2陣訴訟が大阪地裁第8民事部に係属していて、10月26日は最終弁論があり結審しました。弁護団は、2陣訴訟に勝訴することは最高裁闘争を展望しても決定的であることと位置づけ、不当判決からちょうど2ヶ月の間に14回の弁護団会議を開き、休みの日も返上して検討を重ねました。全国から法学者や著名な弁護士を招いて検討会を開きました。
10月26日の地裁の最終弁論は見事に、地裁判決のいい加減さを語りました。知らず知らず傍聴席から拍手が起こりました。裁判長は制止しませんでした。
上告理由書、上告受理申立書の提出に際して全国の弁護士によびかけ、1008名の上告代理人を得ることができました。

2012年 焦点の年

 原告の多くも高裁判決にショックをうけました。しかし、大阪でも、全国でも、これまで以上の大きな励ましを受けています。10月6日大阪の不当判決に対するトーク集会が開かれました。12月3日には首都圏と全国の最高裁で勝利めざすスタート集会が開かれました。本当に幅広い方々から、この裁判の勝利を我がことのように位置づけた発言が続きました。
1月27日から最高裁での宣伝と申し入れ活動がはじまります。月に一度ずつ実施します。
3月28日の大阪地裁での2陣訴訟の判決があります。隔週で裁判所宣伝を行い、署名を提出します。
春には首都圏建設アスベスト横浜地裁の判決があり、今年中に首都圏の東京地裁判決があります。尼崎のクボタと国に対する裁判の判決も今年中にあります。
これらの訴訟との連携・連帯のなかで勝利をめざしていくことになります。

国の責任を明確にする国民のたたかいに水を差す狙いがあったかどうかはわかりませんが、野田内閣は、新自由主義的政策の復活・復興を使命にしている内閣です。
原発再稼働、原発輸出問題、TPP交渉参加、普天間基地問題、「税と社会保障の一体改革」、震災を口実にしたやり方・・・・。これらに対する国民の怒りは大きくなるばかりです。
「いのちや健康を第一にする」ことは問題解決の前提です。この根本問題を揺るがせるような流れを放置することはできません。
こうした流れを止めていく国民のたたかいと一体と考えることが、泉南国賠勝利のカギでもあります。裁判官も人の子であり、世論の流れに影響を受けざるを得ないと思います。
アメリカからはじまった99%のオキュパイ運動などと連動して、国民のいのち・健康のために国は最善を尽くさなければならないという大きな世論の構築していくたたかいと結び付けて全力をつくして頑張っていきたいと思います。
2012年はいのちと健康を語り、連帯の年にしましょう。

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