ぜん息被害者の救済は待ったなし
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ぜん息被害者の救済は待ったなし

大阪公害患者の会連合会
上田敏幸

増えるぜん息患者〜20年間で3〜4倍に

 子どもたちのぜん息が増え続けています。学校保健統計(文部科学省)によると20年間で3倍になり、高校生までの子どもで52万人に達しています。(表)
 しかも、中学生と高校生の増加率が高く、働き盛りの人や高齢者にもぜん息や慢性的な呼吸器病が増えています。2008年8月にスタートした東京都の医療費救済制度(大気汚染に係る健康被害者に対する医療費の助成に関する条例)には、すでに6万3000人を突破、毎月1,000人余り増え続けています。

大阪の大気汚染の現状〜幹線道路では高止まり

 大阪でも、大気汚染は深刻で国が環境基準を定めている大気汚染物質のひとつ、二酸化窒素(NO2)でみると、全体としては改善が見られるものの道路沿道などの局地汚染は深刻で、多くの自動車排ガス測定局で環境基準尾上限値に張り付いたままの状態が続いています。平成22年度では20ある自動車排ガス測定局の全局で環境基準を達成したものの前年度は2カ所で達成できませんでした。

「そらプロジェクト」調査〜クルマが「犯人」が明らかに

 「自動車排ガスが小学生のぜん息の発症率を高めている」(2011年5月25日、朝日新聞)——環境省は5月24日、のべ30万人を対象に平成17年度から21年度まで5年間にわたって実施した「局地的大気汚染による健康影響調査」(「そらプロジェクト」)の結果を発表しました。調査は、関東、中京、関西の主要幹線道路沿道を対象に【1】学童の追跡調査【2】幼児の症例対象調査【3】成人の調査の3つで、「国内外の疫学研究の動向を踏まえた調査手法を取り入れ設計した」ものでした。
 先の「朝日」の記事は、【1】学童調査の結果を報じたものですが、成人の調査でも高い濃度の自動車排ガスが原因で、ぜん息など呼吸器の病気を引き起こすことを証明しました。
 この調査に関った専門家も「(自動車排ガスとぜん息との)因果関係の調査は継続する必要はない」と明言、「クルマが犯人」は決着ずみだとの見解を示しています。

「非喫煙者」が危ない!

 今回の「そらプロジェクト」の結果は、交通量の多い幹線道路の大気汚染がぜん息を発症させること、なかでも喫煙経験のない人〜「非喫煙者」が、ぜん息になるリスクが非常に高いことがわかりました。

「せめて医療費だけでも・・・」〜被害者救済は待ったなし

 もともと自動車排ガスの健康影響調査は、1988年の指定地域解除のときに国会で付帯決議された約束です。公害健康被害補償法の改正のつど実施が求められながら17年間放置され、その間に大量の患者が発生しました。また、西淀川をはじめ、川崎、名古屋、尼崎、そして東京と全国で提起された大気汚染公害裁判でも「クルマが犯人」は確定していました。
 環境省は、次のことを直ちにやるべきです。「科学的知見が少ない」「因果関係がはっきりしない」などの言い逃れはもはやできません。
1.自動車排ガスによる大気汚染で呼吸器病になった人たちへの救済制度をつくる〜「せめて医療費だけでも無料に」の願いは、即刻かなえるべきです。
2.今なお深刻な汚染が続く道路沿道では、交通量の削減を柱とする抜本的で効果的な大気汚染対策をただちに実施するべきです。
3.環境基準が設定されたPM2.5の測定体制を直ちに確立すべきです。

請願署名にご協力ください!

 私たちは今、国に対して「新たな被害者救済制度を求める」請願署名に取り組んでいます。みなさまのご協力をお願いします。

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