迷走する淀川左岸線(2期)事業
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迷走する淀川左岸線(2期)事業

中津リバーサイドコーポ環境を守る会
事務局 廣瀬平四郎

類例のない構造形態
 合併施行事業主体の大阪市が、平成23年5月10日開催の大阪府公害審査会調停委員会で、淀川左岸線(2期)事業は、延長約4kmに渡り河川堤体の中に開削トンネル等が設置される全国でも例のない構造形態であると説明しました。

安全基準をクリアー
 平成16年3月に報告された「淀川左岸線(2期)の建設に関する検討委員会」が作成した「委員会総括」では、【1】浸透影響(降雨および河川水の浸透影響)【2】動的影響(地震、交通振動による影響)【3】静的影響(堤防盛土による地盤変状の影響等)について検討した結果、堤防の安全基準をクリアーしていると言明しています。

基本設計が23年度末に延期
 淀川左岸線(2期)事業の技術的課題は、安全基準をクリアーしているのであれば、河川管理者との協議もスムーズに進み合意に至るはずなのに、現時点まで基本設計が進まない主要な原因について大阪市は明らかにしていません。

新たな技術検討委員会を発足
 これまでの「検討委員会」が、堤防の安全基準についてはクリアーしているとお墨付きをだしているにもかかわらず、なぜ新たな「技術検討委員会」立ち上げ、主要メンバーが同じ学識経験者の意見を聞けば合意に至るといえるのでしょうか。

スーパー堤防との整合性が疑問
 道路構造物は、河川堤防との一体構造物として位置付けし、高規格堤防が完成するまでは、暫定スーパー堤防の一部となり兼用工作物として取り扱うという方針が確定しながら、平成22年11月30日開催の大阪市と近畿地方整備局の打ち合わせでは、全区間最小土被り1メートルを0メートルへ変更し、現況の堤防高を計画堤防の高さまで低くすることが検討されています。これで、堤防の安全性とスーパーとの整合性が担保されるのでしょうか。

全ての教訓を生かして安全・安心の確保を
 東日本大震災(平成23年3月11日発生)は、安全性を確保するには、従来想定外とされた事項も検討対象として対策を講じなければならないことを未曾有の被害とともに我々に教訓として示し、今後の安全基準の見直しの契機となりました。この教訓は、淀川左岸線(2期)事業について、安全基準の見直しについて、どのような影響を与えているかが問われています。
中央防災会議は、平成15年9月に東海・東南海・南海の3地震が同時に起きる場合、震度7の揺れと10mを超える津波による被害想定を発表しています。また同会議では、平成15年12月に東南海・南海連動地震が発生した場合の予測を公表しています。それによると、マグニチュード8以上の巨大地震が発生し、長周期を含む揺れが数分間継続し、その時の震度は大阪湾周辺で4から6程度を想定しています。また津波が発生し、津波高は1〜3m程度で、大阪湾南部で地震から約1時間、北部では約2時間で津波が到達すると報告されています。現在作成中の基本設計について、高速道路下の地盤、道路躯体の強度、安全性等が、発表された想定を考慮・検討されて設計が進められているのかについて、会は大阪府公害審査会調停委員会で事業者大阪市に責任ある対策を求める活動を重視して取り組んでいます。
 そして、淀川左岸線2期事業において,河川法令を無視して淀川の防災・治水を人為的に後退させるのか,それとも,上町断層地震にともなう防災対策や,海溝型の南海地震による津波被害や液状化被害対策を重視する、淀川下流河川管理の水準を向上させるのかが問われています。

 


参考資料

−地震による液状化と津波対策を−
大災害に耐える淀川堤防へ

国土問題研究会淀川左岸線調査団の2001年度調査報告書のうち近畿地方整備局と大阪市の河川協議が進展しない問題点について12月10日に国土研前川謙二さんが報告された要旨を掲載いたします。(文責 廣瀬)

技術検討委員会を設置した理由は
淀川左岸線(2期)事業は、長大なコンクリートボックスと鋼矢板の人工材料を土堤防に押し込「複合型堤防」とする,国内はもとより諸外国にも前例のない計画です。定規断面に抵触する(河川法令違反)「前例のないこの計画」は,防災・治水の安全面から見過ごすことの出来ないものです。堤防の専門家は、河川堤防に提案するのであれば,20年間程度その裏付けとなる実験と観察を、自然界のいろいろな条件下のもとで充分に行うことが大切ですと言われています。2011年5月に設置された技術検討委員会の設立趣意書や委員会規約には,今日までの防災・治水行政を踏まえた視点が明記されず、委員に国土技術政策総合研究所の河川研究室長を任し河川協議にお墨付きを与えて年度内に技術検討委員会を終える予定のようです。

河川管理の新たな安全神話への道か?
技術検討員会の目的は,「全長4,300mの内2,776mが堤防定規に抵触している実態」であるにも関わらず,河川管理者自身が「道路構造物は、河川堤防との一体構造物(兼用工作物)とし、堤防として要求される機能を満満足させることを改めて検討する」とありますが,堤防定規に抵触していても堤防の防災・治水の安全性を「検証」することが「必要」という「新たな安全過信」への道ではないでしょうか。淀川左岸線(2期)事業計画の堤防の安全性は,長年検討されてきましたが,兼用工作物が堤防定規に抵触しても「技術的に問題無しのお墨付き」を得たいというのが、今の河川上層部の目的のようです。淀川左岸線2期とその延伸部計画が,防災・治水に生きてきた先人達の英知と伝統を踏みにじる「事態」に踏み込む、利便性優先への技術的解答を検討する委員会であってはなりません。

地震・津波対策を根底から見直し災害に強い街を
災害に強い街づくりのために,近畿地方整備局が責任をもって,上町断層地震にともなう堤防の被害予測と防災対策を計画し実行することが求められています。同時に,海溝型の南海地震による津波被害や液状化被害の淀川堤防への影響問題等と,「定規断面抵触堤防の安全性の検討」を区分して、委員会での技術検討は,3・11大震災の教訓を大阪の街づくりや淀川堤防の耐震対策の総点検(再検討)などに特定すべきです。そして、淀川左岸線2期事業において,河川法令を無視して淀川の防災・治水を人為的に後退させるのか,それとも,上町断層地震にともなう防災対策や,海溝型の南海地震による津波被害や液状化被害対策を重視する、淀川下流河川管理の水準を向上させるのかが問われています。

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