大阪都構想後の課題、一点共闘から新たな自治体建設へ
奈良女子大学
中山 徹
1.大阪都構想とは何であったのか
大阪都構想は政令都市大阪市を消滅させ、代わりに五つの特別区を設置する計画
本質は新自由主義的な視点で大阪を作り替えようとしたもの
大阪市を廃止し、大阪市に入っていた税金の一部を大阪府に移し、カジノ誘致や大型公共事業の財源に充てる
大阪都構想は計画としてあまりにもずさん
二重行政の解消は実態に基づかない妄言
経済活性化策の中心はカジノ誘致
2.民主主義が問われた住民投票
議会が判断を示さず、住人投票に丸投げ
税金を使った都構想の大々的な宣伝
宣伝内容は嘘、脅迫、恫喝
民主主義は多数決?
市民の熟慮が前提
3.憲法改正と連動した大阪都構想
大阪市に隣接する市への影響
憲法改正との関係
4.なぜ大阪で維新が支持されたのか
橋下知事・市長:市民サービスに大ナタ
30%台の安定した支持率
維新は従来の府政、市政とは比べものにならないほど市民サービスを削減したにもかかわらず、安定した支持を得ている。なぜか。
維新の支持層:漠然とした維新ファンと確信的な維新支持層
?漠然とした維新ファン
多くの市民には大阪の現状に対する不満が蓄積
維新は市民を分断
公務員は給与が高い(公務員vs民間企業)、高齢者は優遇されている(高齢者vs若者)、町内会は補助金漬け(旧住民vs新住民)、あげくのはてに生活保護世帯は既得権者(既得権者vs納税者)
市民の中に対立を持ち込み、この状況を変えられるのは橋下市長であり、政策的には大阪都構想であると繰り返し訴えた
この結果、維新が進める新自由主義的な改革で不利益を受ける多くの市民が維新を支持
?維新の新自由主義的な施策を支持する層
40代、50代の男性、大手企業等に就労
5.維新の暴走が続く
大阪都構想のバージョンアップ
府議会、市議会の私物化
安倍政権に大阪利用
6.なぜ大都市大阪で広範な共闘が成立したのか
一方では漠然とした維新ファンと確信的な維新支持層の結合
他方では別の共闘。自民党から共産党まで、保守的な人から革新的な人まで、各層・各地域で成立した共闘
なぜそのような共闘が成立したのか。
共闘成立の前提に大阪における保守勢力の分裂
7.一点共闘から持続的な共同、新たな自治体建設へ
現時点での課題
?漠然とした維新ファンに維新の実像を知らせること
?新たに誕生した保守層から革新層までの共闘を一時的なものにとどめず、新自由主義から地域を守り、市民生活と地域経済を好転させる持続的な共同に発展させること
持続的な共同とは、共同に立脚した自治体をつくるということ
8.大阪の長期的展望
?人口減少時代のまちづくり
事態がこのまま推移すれば…4000万人台(1/3に減少)
政府の目標…9000万人前半で安定(30%減)
政府…首都圏及び三大都市圏の人口維持が大きな目標
地方の人口維持を前提とすべき、大都市部では大幅な人口減
人口減少を想定した長期的なまちづくりの必要性
数十年先の話、子ども、孫の世代の大阪を展望する
・大阪府の広域的調整
大阪市への集中を進めると周辺部が消滅
・大規模なインフラ整備は一部を除き不要
・自然環境の再生、歴史的環境の再生
・自然災害に強いまちづくり
・巨大な建造物は不要
?少子化対策、高齢化対策
少子化に歯止めがかからなければ、人口の大幅な減少が避けられない
・政府の政策を変更させる…雇用の不安定化を止める
・地域での子育て支援、保育、雇用、住宅
高齢化対策は今後10年が勝負
・10年後には後期高齢者が一気に増える
・地域での高齢化対策、施設、在宅、見守り
?21世紀の雇用対策
20世紀、大規模な工場・オフィス
21世紀、生活関連サービス(福祉、医療、生活支援)
・職場と居住地が近接、まちづくりの前提が変わる
・雇用の安定をどう確保するか
?行財政改革の方向性
9.再び市民が主人公になれる大阪を目指して
11月に大阪府知事選挙、大阪市長選挙が実施
先の政策を実現するための大阪府、大阪市をつくることができるかどうか
維新が進めた様々な破壊を再生し、大阪で新自由主義的な施策に対抗する地域政策を展開
1970年代につくられた革新自治体とは違う反新自由主義的な共同に基づく自治体
大都市大阪にこのような自治体ができると全国に与える影響も大きい
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