第38回公害環境デー基調報告(案) 「もう待てない 公害被害者の救済!守ろう、地球環境!」
トップ  >  第38回公害環境デー  >  第38回公害環境デー基調報告(案) 「もう待てない 公害被害者の救済!守ろう、地球環境!」

第38回公害環境デー基調報告(案)

  「もう待てない 公害被害者の救済!守ろう、地球環境!」

 この一年を振り返ると公害・環境問題への府民の関心と不安の一段の高まりを感じます。そして被害をなくし補償させる運動も各地域でねばり強くつづけられています。温暖化問題に世界の国々と協力し先頭に立ってとりくむというオバマ大統領の発言や、「温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減する」という鳩山総理の世界への宣言など私達を勇気づける出来事の反面それに対する障害も報じられます。今年はこの高まりを確かな運動として定着・発展させ、大阪の環境を良くするとりくみとして、意識的に発展させていくことが求められます。

公害環境デー実行委員会では今年は大阪で最も切実に求められ緊急に実現したい課題と併せて大きな三つの目標を提起します。この目標に沿って、各地域や団体の取り組みが連帯して運動する中から大阪の公害・環境運動の新しい発展を勝ち取っていきましょう。

1.原点に立ち返って公害被害者の救済を実現しよう

公害環境デーの原点は「公害の根絶と被害者の救済」です。
第1回公害デーが開かれたのは1972年10月3日。前年の春には、「公害知事さんさようなら」の合い言葉で黒田革新府政を生み出し、「イタイイタイ病」「新潟水俣病」(1971年)「四日市」(1972年)と公害裁判のあいつぐ勝利判決、「公害国会」(1970年)から環境庁の発足(1971年)へ、国と地方の政治転換は「公害の根絶と被害者の救済」を軸に展開しました。
そして第38回公害環境デーは、「もう待てない!公害被害者の救済」をメーンテーマに掲げました。

(1)泉南アスベスト裁判の勝利をめざして

泉南地域のアスベスト被害者による国家賠償訴訟は、提訴から4年がたち、2011年5月19日に判決を迎えます。
全国に先駆け提起されたこの裁判で原告・弁護団は、勝利判決を勝ち取り、?70年も前から泉南地域の石綿工場の労働衛生調査を繰り返し、深刻な被害実態をよく知っていたにもかかわらず規制や対策を怠ってきた国の責任を明らかにする。?その上でアスベスト新法を抜本的に見直し、真に隙間のない救済システムをつくりあげる、ことをめざしています。

「静かな時限爆弾」と呼ばれ、今後40年間で中皮腫による死亡者は10万人に達するとも言われています。20〜40年後に解体のピークを迎える建材に使われているアスベスト対策の抜本的な強化も重要な課題です。裁判の勝利は、国と自治体の施策の転換を迫る契機になります。
裁判勝利をめざす「30万人署名」を広げましょう。

(2)ぜん息患者の救済制度をつくる

大気汚染によるぜん息等の健康被害者への救済制度づくりと新たな健康被害の原因物質といわれているPM2.5(微小粒子状物質)の環境基準の早期設定と規制の強化を求めて2008年11月に発足した「あおぞらプロジェクト大阪」は、大阪の「ぜん息被害実態調査」を実施しました。
同調査からは回答者の6割を超える人が、「かぜをひいた時、ゼイゼイとかヒューヒューという」と答えるなど、深刻な被害の実態が浮かび上がりました。

「あおぞらプロジェクト大阪」では、「府民・市民が安心して暮らせるために」、?大気汚染による公害健康被害者の医療費助成制度の創設?微小粒子状物質(PM2.5)の環境基準に基づく対策と規制の具体化?ハンディキャップを持って人たちが安心して働ける「社会的ルール」の確立など3点を国、自治体、道路管理者、自動車メーカーに要求しています。

(3)廃プラスティックリサイクルの危険性

寝屋川の「廃プラスティック処理施設」建設直後から目やのどが痛い、湿疹、体がだるいなど、シックハウス症候群に似た症状が広がるなど深刻な健康被害が続出、処分場の差し止めを求める住民訴所は、控訴審を迎えています。この裁判は、廃棄物処理施設による新しい公害被害とメカニズムを明らかにする社会的にも重要な役割を持っています。引き続き、裁判への支援を強めましょう。

寝屋川に限らず、「リサイクル」の名のもとに進められている廃プラスティック再生工場による生活環境汚染の危険性も見逃せません。製造過程から廃棄物そのものを減らす廃棄物行政の根本的転換こそ急務です。

 大阪府内の公害被害はこれら3つにとどまりません。道路建設や巨大開発、廃棄物処理施設など多くの住民が直面している公害をなくすには、発生源で規制し被害の補償と回復をさせることです。公害は決して過去の問題ではありません。「被害」を明らかにし、被害者とともに公害の根絶、被害者の救済を求める活動を多くの市民とともに広げましょう。

2.地球温暖化防止・CO2の削減は“待ったなし”の課題

(1)COP15と「コペンハーゲン合意」

  2009年12月7日からデンマークのコペンハーゲンで開催された国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)は、会期を1日延長した19日午前、主要国による「コペンハーゲン合意」について、一部の途上国の強硬な反対で全会一致による合意が得られず、「合意に留意する」との決議を全体会合で採択して閉幕しました。
「コペンハーゲン合意」の主な点は、?地球の気温上昇を2度以内にすべきとする科学的知見を認識し、気候変動対策のための長期的な協力行動を強化する。そのために温室効果ガスの大幅削減が必要であることに合意する、?先進国は2020年までの温室効果ガス削減の数値目標を、途上国は持続可能な開発に努めるとともに温暖化対策を、2010年1月31日までに提出する、?先進国は途上国の温暖化被害対策のために資金、技術、能力開発で支援する、?先進国は協力して途上国に対し10〜12年には計300億ドル規模、20年の時点では年間1000億ドル規模の資金援助を行う、というものです。

(2)COP15の成果と問題点

 こうしてCOP15は、先進国と途上国との対立、あるいは先進国内での削減目標の大きな格差など複雑な要素が絡まって、「交渉決裂」「合意なし」という最悪の事態は回避したものの、拘束力のない「コペンハーゲン合意」に「留意する」という到達点で終わりました。そのため、今その評価は「失敗」「一歩前進」などと大きく割れています。

 積極面としては、?地球の気温上昇を、産業革命前比で2度以内にすべきという「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」による科学的見解を共通認識にした、?温暖化対策をめぐる先進国と途上国の「共通だが差異ある責任」の原則を再確認した、?先進国による途上国の温暖化対策への資金援助方針を確認した、?京都議定書では削減行動を求められなかったアメリカや途上国も何らかの行動をとることが初めて規定された、などの点が挙げられます。

 一方、問題点としては、?温室効果ガス削減についての数値目標が定められていない、?「合意」「留意」にとどまって法的拘束力をもつ協定となっていない、?2020年までの中期、2050年までの長期といった中・長期の削減目標がない、?各国の自主削減目標を積み上げたとしても「2度以内」は達成できず、3〜4度上昇もありうるとの試算が出ている、などが指摘されています。

(3)日本政府と財界の取った態度

 昨年9月に鳩山首相が国連気候変動首脳会合で表明した「日本は温室効果ガスの排出量を2020年までに1990年比で25%削減することを目指す」という公約は各国から歓迎され、西欧各国での削減目標の引き上げ、京都議定書から離脱したアメリカでの目標設定、さらには「削減目標の設定は経済発展の足かせとなる」として削減目標の公約を拒んできた中国やインドなどいわゆる新興国・途上国での抑制目標の設定にもつながりました。

 しかし、その後の鳩山政権は、国内での目立った具体策も打ち出さないばかりか、もっぱら国連演説の中にある「すべての主要排出国の参加と意欲的な目標表明が前提」という点を強調し、温暖化防止対策を率先垂範する姿勢を後退させています。さらにCOPで合意に至らなかった場合に当然求められる京都議定書の延長にも強く反対して、再び「化石賞」を受ける事態となりました。

一方、日本の経済・産業界は「25%削減」はもとより京都議定書の延長にも強く反対しました。彼らがいう理由は、「日本だけが高い削減目標を持つ必要はない」「CO2削減対策にはコストがかかり『国際競争力』を弱める」などです。ここには先進国の経済・産業界が率先して地球の温暖化防止に取り組むという姿勢もなければ、温暖化防止への投資は新たな産業、事業の発展につながるという発想の転換もありません。彼らの姿勢は、地球と人類を犠牲にしてでも自己の利潤を追求しようとする論理であり、到底許されるものではありません。

(4)私たちはどんな行動を

 COP15にはきわめて不十分な点はあります。しかし、アメリカや中国を含む世界120カ国の首脳がコペンハーゲンに集まって地球温暖化問題を議論し、“科学の要請”に応えることを共通の確認事項にしたことはそれだけでも大きな前進で、“変化”の情勢を反映しています。私たちは「コペンハーゲン合意」を具体化するために早急に交渉を再開し、今年11月にメキシコで開催されるCOP16では、必ず大きな成果が勝ち取られるよう、引き続き運動を強めていく必要があります。

また、日本の政府や各自治体、経済・産業界に対しては、?2020年までに25%削減するという国際公約は他の国がいかなる態度を取ろうとも率先して進めること、?公約を実現するために産業界との公的削減協定や環境税、排出量取引制度の検討など実効ある措置に早急に着手すること、?「原発」推進政策は止めて、風力や太陽光、バイオマス発電など自然エネルギー、再生可能エネルギーへの転換政策をすすめること、?大量生産・大量消費・大量廃棄といった産業構造・生活様式を抜本的に転換する施策を実施すること、などを要求していきます。

 さらに私たち市民レベルでも、温暖化問題について大いに学習し、太陽光発電や太陽熱温水器、家庭用コジェネ発電装置の設置など個人や家庭でできる自然・再生可能エネルギーへの転換に取り組み、また、市民共同発電所づくりや廃食油回収運動など地域やNPOでの再生可能エネルギーの普及活動に積極的に取り組んでいきます。さらにこのような省エネ、自然エネルギー重視の市民の努力を支え推し進めるような地域や街をつくる住環境づくりへの取り組みも求められます。

3、安全で住みよい街づくり

 今大阪府は。10年ぶりの新環境総合計画作りに取り組んでいます。この10年間に地球規模の環境問題である「温暖化・気候変動」が急速に進み異常気象やヒートアイランドなどが激化しています。また地震の活動期に入って東南海、南海地震の襲来と上町断層地震は確実性が高まり、密集都市大阪の災害危険性は非常に大きくなっています。この間大阪府は「もう公害は終わった」という姿勢で、環境保全・公害対策分野の体制を後退させ、民間委託や関係職員の削減など公害・環境問題に対応する機能を弱めてきました。しかし大阪の公害は終わっていません。前の章で述べたように大気汚染によるぜんそく被害者の増加、泉南地域を初めとするアスベスト公害、寝屋川廃プラスチック処理工場排ガス被害、ヒートアイランドの加速する「熱中症」など、未解決なまた今後結果が予想される課題が山積していく状況です。大阪府は年間約5000万?の温室効果ガスを排出して地球温暖化推進の一翼も担っておりその削減も求められます。

この公害環境デーに提起する第三の大きな目標は、大阪を緑と自然も少ない発熱するハイテク大都市から、人口減少期の条件も活かして、安全と環境のこれ以上の破壊・悪化を食い止め改善をはかる、「安全で・住みよい・住み続けられる街」、人々がゆとりを持ち、くつろぎを感じ、人間性豊かに暮らせる街に作り替えていくことです。 大阪府の新総合環境計画は湾岸開発や交通網作りの開発中心でなく、このような視点を中心に策定することを求めます。 

(1) 大阪府の温暖化防止対策を飛躍的に強化すること

 前の章を参考にして下さい。府民の努力は大切ですが、まず電力をはじめ大手企業に排出総量の削減を求め実施させることが肝心です。そして太陽光発電など自然エネルギー利用拡大に取り組む府民や団体を支援します。さらに府域自治体がそれぞれ目標を持って市民と共に取り組めるよう財政的・人的な援助が必要です。まだ終わっていない公害への対策を改めて強化するともに被害者を救済して公害の根絶を目指します。

(2)緑の空間を広げる

 みどりの空間は「都市の肺臓」です。屋上緑化や壁面緑化はアメニテー要素にすぎません。公共用地や企業用地、梅田北ヤードをみどりの空間とするなど本格的な総合的まちづくりを目指します。地震発生確率の高い上町断層帯には、大規模グリーンベルト計画をすすめ、安全な地域へ居住・産業立地、都市農地と抜本的な緑の空間を創出するまちづくりを目指します。

(3)大川の水質浄化

寝屋川や大川はよどみよごれ、大阪湾の水質問題深刻です。淀川から大量の浄化用水を寝屋川に流し入れ、河底の真っ黒に汚れた土砂浚渫をすすめ、多自然型川づくりと炭素繊維による抜本的な水質浄化で早期に淀川の水質水準を目指します。
生駒の治山・森林を育て、常に緑があふれ、きれいな空気、すんだ川と緑、地球を温暖化から守る環境創造都市づくりを目指します。

(4)脱・自動車、身近な交通ネットワークのまちづくり

都市高速自動車道路の建設に反対し、淀川左岸線や大和川線を再考し、自動車流入を規制、公共交通の充実をすすめる脱自動車の街を目指します。路面電車の再生、道路を歩く人間中心の道路再配分・自転車優先道路造り、コミュニティーバス運行などで高齢者の安全な移動と地域商店活性化を図ります。

(5)災害の危険域を安全に再生

経済性を最優先した大阪は、緑と自然を破壊し、災害危険域を増やし、過密ハイテク大都市建設を続けてきました。これからは地震災害、水害・土砂災害のハザードマップを活用した災害を減らす取組みと共に、災害危険域を安全に再生するまちづくりを目指します。災害に弱い新都心の地震長周波に弱い超高層WTCへの府庁引越計画は中止すべきです。
迫りくる東南海南海地震や上町断層地震に強い耐震補強を急ぎ、海抜ゼロメートル低地の液状化と高潮防潮堤防と施設の耐震補強、ハード・ソフトの減災害対策を目指します。大阪府域のハザード土地の定住増の抑制と安全区域への定住増の誘導を行い、人口減少期も活かして、長期的な防災国土づくりを目指しましょう。

4.もう待てない!行政の責任を問い被害者を救済しましよう。

 いま行政は、NO2環境基準上限の日平均到達で「もう公害は終わった」と環境規制業務のレベルを引き下げ、測定業務の民間委託化、専門技術者体制の弱体化などを強行しています。
しかし大阪の公害は終わっていません。相変わらずの自動車優先の街づくりと、それに伴う交通量の拡散とともに大気汚染は府域周辺部にも拡大し、大気汚染被害者は増加の一途です。過去100年の平均気温でみると、大阪府域は2.1℃上昇し全国平均を1℃超えています。温暖化に加え、ヒートアイランド現象が「大阪を熱く」しています。これによって熱中症など新たな健康被害が顕在化しています。

また、国賠判決を控えた泉南アスベスト被害者も高齢化がすすみ一刻も早い救済が求められています。増加していくプラスチック容器とそのリサイクル処理工場による地域住民への健康被害は、公害運動の典型です。虚偽表示、BSE・未承認遺伝子組み換え食品・残留農薬混入など輸入食品における不安や検査体制の弱体化、エコナ問題に象徴的な健康食品のあり方など、食品の安全を取り巻く状況も多様で、不具合情報の共有化も考慮すべき課題です。
一方、府民の健康と生命を守ることは行政の第一義的任務です。身の回りの居住環境に目を配り、行政に対し、規制と環境監視の強化を求め、それら情報の公開など環境行政を府民の手に取り戻す取り組みが重要です。
そうして、戦争は最大の環境破壊です。環境を保全し改善してゆく最大の基盤は平和で戦争のないことです。日本国民は戦争の放棄を決めた憲法9条を有しています。憲法9条の改悪を許さず、戦争につながるあらゆる施策を許さず、「9条の会」など多くの国民と手を組んで憲法9条を守り抜きましよう。

鳩山首相の国際公約「温室効果ガス排出量90年比マイナス25%」の宣言は世界の喝采を受けました。この宣言に対し、電力産業中心とする財界からの巻き返しが激しくなっています。公害・環境問題を掲げて運動してきた我々にとって、今こそ闘いの時です。「公害は発生源で規制し、汚染者の負担で被害者を救済する」これが公害対策の根本原則です。この集会のメインスローガン「もう待てない、公害被害者の救済!守ろう地球環境」は現在の情勢に立ち向かう行動のスローガンです。
集会の成果を広く府民に広げ、府民運動の新しい波を起こして要求実現に奮闘しましょう。

 

プリンタ用画面
前
第38回公害環境デー 配布資料表紙 と 目次
カテゴリートップ
第38回公害環境デー
次
大阪の大気汚染は? 今の環境基準で健康が保障されるか

行事案内
おすすめBOOK