文書報告5 街づくりと自転車
公害・環境デー  >  第44回公害環境デー  >  文書報告5 街づくりと自転車

文書報告5

街づくりと自転車

藤江徹(公益財団法人 公害地域再生センターあおぞら財団)

1.転換期にある自転車施策

 最近、自転車が話題にのぼることが多い。西淀川大気汚染公害反対運動から生まれた、あおぞら財団でも、自転車を活かしたまちづくりに取り組んでいる。現在の大気汚染の原因の一端を自動車交通が占めており、環境にやさしい移動手段である自転車の利用は、これからの都市を変える切り札になると考えている。

 自転車の保有台数(全国)は、平成20年時点で約6,900万台と増加傾向にあり、5km未満の移動の約2割は自転車が利用されているなど、都市内交通等において重要な移動手段となっている。自転車は持続可能な社会にふさわしい乗り物として、欧米においては積極的に自転車走行のためのソフト及びハード面での環境整備が進んでいる。一方、世界的にも高い自転車利用率にも関わらず、わが国では、放置自転車、歩道上での暴走自転車、未整備な自転車の走行空間、守られていないルール等が問題となっている。近年、交通事故全体に占める自転車関連事故の割合が増加し社会問題となる一方、健康や環境への意識の高まり等を背景とした利用ニーズの高まりを受けて、わが国の自転車施策も転換期を迎えている。

 平成23年10月に、警察庁では、自転車は「車両」であるということの徹底を基本的な考え方とし、車道を通行する自転車と歩道を通行する歩行者の双方の安全を確保することを目的とする総合的な対策を打ち出している。続く、平成24年11月29日に、警察庁と国土交通省が連携し、「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を作成した。同ガイドラインは、各地域において、道路管理者や都道府県警察が自転車ネットワーク計画の作成やその整備、通行ルールの徹底などを進めるために策定されており、道路空間の再配分や道路拡幅を含む、整備形態の選定の考え方や目安、利用ルールの徹底、自転車利用の総合的な取り組みが示されている。 

2.大阪市における自転車を取り巻く状況

 大阪市を例にとると、交通手段に占める自転車分担率 が23.5%に達し、自動車分担率(12.8%)の約2倍にもなっている(第5回近畿圏パーソントリップ調査(平成22年調査実施)より)。大阪市の自転車分担率は、全国的にも高い割合(平成22年)であり、近年は増加傾向(平成2年:17.2%→平成22年:23.5%)にあり、減少傾向を示す徒歩(平成2年:29.8%→平成22年:24.0%)、自動車(平成2年:16.8%→平成22年:12.8%)からの乗り換えが伺える。こうした要因については、高齢化、都心居住の進展、景気悪化の影響(例:通勤費用の減少など)、ライフスタイルや価値観の変化(例:クルマ利用を控える理由の一位は『エコだから』、自転車ブームの到来等)などが挙げられる。

 このような中、平成25年9月に大阪市内初の自転車レーンが大阪市中央区本町通りの御堂筋〜堺筋間に設置された(写真)。 

  一方、大阪のメインストリートである御堂筋ができたのは、昭和12年。延長約4.4km、幅員約44m、銀杏並木や地下鉄の建設など画期的な規模で、近代都市の基礎を形づくる大阪のシンボルロードとして、受益者負担による多数の市民や企業の協力を得ながら、建設された。建設当初は2方向通行であったが、増加する自動車交通と渋滞問題に対応するため、昭和45年の大阪万国博覧会開催時に南行きの一方通行に変わった。現在は、南向き一方通行で両端2本の緩速車線と4本の本線、計6車線からなり、梅田となんばを結ぶ大動脈となっている。御堂筋の自動車交通量は、40年前と比較すると、約4割減少している一方、御堂筋を通る自転車の交通量は約7倍に増加している。当時とは社会情勢が大きく変化し、人々の行動形態や周辺のまちの状況大きく変わりつつあり、社会の変化や時代の要請に対応した新たな御堂筋へと再編するべく、検討が進められている。

 平成28年1月、千日前通以南(難波交差点〜難波西口交差点間)の東側街区において、モデル整備がスタートした(図)。このモデル整備は、側道を自転車通行空間化し、歩道を拡張することで喫緊の課題である歩行者と自転車が歩道内で輻輳している状況の解消を行うとともに、整備により道路空間再編の将来イメージを現地で可視化し、歩行者・自転車通行の安全性や快適性、にぎわい形成等の検証につなげていくことを目的としている。

 こうしたハード整備と並行して、これまでも取り組まれてきた放置自転車対策や条例づくり(例:大阪府自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例(仮称))、自転車ネットワーク計画の策定などが進められている。

 また、自転車利用者や市民からも、御堂筋サイクルピクニック(写真)、子ども自転車教室など、自転車を活かしたまちづくりの推進を求める取り組みが行われている。 

3 自転車を活かしたまちづくりを!

 今後、本格的な少子高齢化・人口減少社会を迎えるにあたり、私たちは、自動車中心の都市交通・まちづくりを見直し、人とモノの流れをうまくコントロールすることで、市民の暮らしがより快適になるような交通・移動手段やインフラ整備が求められている。将来の暮らしに併せて道路の使い方を改めて考え直し、道路空間の再編・再配分を含め、これからの環境都市づくりの一環として、自転車を活かしたまちづくりに取り組んでいきたい。

写真2:御堂筋を300名でアピール走行(提供:自転車文化タウンづくりの会)

上記資料のPDF版はこちらをダウンロードしてください。
文書報告5 街づくりと自転車
プリンタ用画面
前
文書報告4 府立公衆衛生研究所と市立環境科学研究所の独立行政法人化の問題点
カテゴリートップ
第44回公害環境デー
次
資料1− [声明] 福井地裁による関電・高浜原発「再稼働」容認決定に抗議すると共に、政府と関西電力に対し、あらためて原発ゼロへの方針転換を強く求めます。

行事案内
第45回公害環境デー
おすすめBOOK