大阪発:廃棄物政策2003 [2003.1.18]
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大阪発:廃棄物政策2003

2003年1月18日 大阪から公害をなくす会

はじめに・・・・交流拡大の資料として活用されることを願う

 日本の廃棄物関係処法・諸制度にはまだまだ抜け穴があります。
 「容器」「家電」「自動車」「有害化学物質」など関係する法規が整ったように見えても、廃棄物の世界には闇の部分であって、違法処分が蔓延し、化学物質汚染が拡大するなどの危険は続いています(巻末資料参照)。この「試案」では、私たちがこれまでに遭遇した事例や取り組みから考えた、現行廃棄物行政の問題点と本来あるべき方向、廃棄物サイクルの順を追った具体的政策を提示しています。市民的な意見交換、交流などの資料として活用されることを願うものです。
 廃棄物の発生量を減らすためには、根本的には生産に使うモノとエネルギーを押さえることが必要です。同時に発表した「大阪発:エネルギー政策2003(試案)」で強調しましたが、環境・エネルギー対策の上でも、わたしたちは、エネルギー使用量の削減と安全で豊かな社会の構築を両立させることが避けて通れない課題になったと考えています。しかし、この「廃棄物政策(試案)」では、当面する廃棄物問題の具体的施策に絞って検討をおこないました。

1. この政策が目指すもの

1-1.「持続可能な開発」のための廃棄物政策

 日本社会はこれまで地域の汚染源による住民被害をたくさん経験してきました。それらの多くは広い意味での「廃棄行為」による汚染問題です。いったん環境中に拡がった汚染物質の回収、管理、汚染修復がどれほど困難で大きな費用を要するかは、香川県の豊島など数々の実例が示しています。
 汚染を未然に防止する「予防的措置」がなおざりにされたツケは、大きな「財政負担」を生み、さらに発ガン性、ホルモン影響など、世代を超えた「見えにくい健康被害」として、次世代に回されていきます。私たちは、このような問題を生み出している日本社会の大量生産・大量消費・大量廃棄の生産と消費のスタイルと、最終地点(パイプエンド、末端)の政策にとどまっている現在の廃棄物法制度を大転換して、製造・生産時からの上流対策優先にし、人類の永続可能性、つまり「誰も安心して生活しつづけられる社会」目指す共同事業として、資源の循環化は欠かせないと思っています。
 (注)「持続可能な開発」という考え方は、『環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会)』が、1987年4月に発表した報告書『我ら共有の未来』の中で提唱されました。中心的なテーマは「将来世代のニーズを損ねることなく今日世代のニーズを満たす」ことで、今日世代の問題としては貧困の解決や資源の公平な分配などがあげられています。
   循環型社会は、その延長線上にある考えかたで、経済・人口・食糧生産・生態系・エネルギー・工業・都市・平和など課題は多岐にわたっています。しかしなぜか、日本では「循環型社会形成推進法」に見られるように「廃棄物問題」に矮小化されています。
   委員長であるブルントラント当時のノルウェイ首相が同報告書で「環境と開発は不可分です。環境とは私たちの住むところであり、開発とはその中で私たちの生活をよくするよう努力することです。多くの先進工業国における開発が今日のような形では持続可能ではないことは明白です」と警告するように、産業のあり方や都市づくり、生活手法など社会システム全体を変革するという意味をもっています。

1-2「拡大生産者責任」の明確な制度への改革を

 では、なぜ日本は「資源循環化」が困難なのでしょうか。
 ひとつは、廃棄物法制度上の問題です。
 日本の廃棄物制度は、1960年代以降、増えつづける廃棄物をそのまま埋め立てることによって発生した  生問題や埋め立て場不足に対応するため、ごみの衛生的処理と減容(かさを減らすこと)を中心に策定されてきました。衛生的処理と減容化とはつまるところ「焼却処理」であり、発生源にさかのぼったごみの減量化ではなく、リサイクルにおいても市場にゆだねた「売れるものだけリサイクル」になっています。
 ここ数年来、ごみの発生抑制や資源循環がうたわれ法整備もされていますが、製造者が製品の廃棄後までの全過程に責任を持つ「拡大生産者責任」の立場にもとづくものではなく、数値目標を設定した、廃棄物の発生回避・抑制、資源の有効利用、環境保全など基本的な方向性をはっきりさせるものではありません。
  (注)1970年に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が制定されました。廃棄物を排出者別に「産業廃棄物(産廃)」と「一般廃棄物(一廃)」に区分し、それぞれ排出事業者と市町村が、衛生的処理と金銭的負担を担ってきました。ただし最近では、一般廃棄物の中に、本来なら産業廃棄物であるべき事業系ごみが半分流れ込んでいます。

1-3.「予防原則」にたった発生源対策に重点を

 二つ目の問題は、発生源対策の追及があいまいなことです。
 日本の環境保全対策全般に言えることですが、廃棄物対策でも汚染の未然防止、未知の汚染物質への対応など、発生源における予防的対策が置き去りにされ、野焼き、不法投棄など、問題が発生してからの事後対策が主になってきました。
 廃棄物焼却に伴うダイオキシン対策は顕著な例で、1978年にオランダの焼却炉で「ダイオキシン類」が検出され、発生の経過は世界周知となっていたにもかかわらず、日本のダイオキシン対策が本格化したのは20年後のことです。近年になって顕在化してきた「環境ホルモン」についても、高温焼却すれば安全というものでもなく、区分処理や焼却量そのものの削減、廃棄物中に含まれる有害な化学物質の規制や、超高温処理過程で新たに発生する生成物質の対策など予防的な発生源対策が急務です。

1-4.健康被害と環境破壊を見すえ徹底した「情報公開」を

 三つ目の問題は、国民各層での学習と運動を強化する課題です。
 義務教育での環境問題や廃棄物学習は不充分で、社会教育でも一部の先進例でとどまっています。経済活動のありかたを問い、生活の質を問う廃棄物対策の前進には、国民各層の学習と市民参加型の運動の広がりが欠かせません。
 その基礎は、健康被害と環境汚染の実態をつかみ知らせることにあり、そのための徹底した調査活動や情報の公開が必要です。

1-5.私たちの考える廃棄物政策の基本的方向

 以上のようなさまざまな問題点を克服して、安全に住みつづけることのできる社会を実現できる廃棄物政策の基本的な方向について、わたしたちは次のように考えます。
? 天然資源の「使用量削減」と「徹底した再使用」
? 人体と環境汚染の未然防止
そのためには、以下の政策転換をするしか解決の道はありません。
?資源循環の視点での省焼却、最終処分の減量化
?生産から廃棄まで各段階における拡大生産者責任にもとづく企業責任の確立
 このような政策を進めるには、暮らしに定着しているプラスチック容器の使用抑制など、相当な社会的合意が必要です。
 また、回収・輸送・再生化に厖大なエネルギーを使うなどしているリサイクル名目のエネルギー浪費の抑止、リサイクル原料を普及し天然原料(自然から採取し初めて使用される原料)の保全と使用量削減のための経済的対策が欠かせません。
 さらに、広域処理やダイオキシン対策として国が強制、誘導する焼却設備の大型化・溶融化・RDF化など循環型に矛盾する公共政策を、循環型に転換する必要があります。
 廃棄物政策の優先順位は「発生抑制(リデュース)」「再使用(リユース)」「再生利用(リサイクル)」そして「最終的処理処分」です。それぞれの段階で、冒頭に掲げた基本的な方向性を貫きながら、現状から出発して、当面の対策、長期の展望で進める対策など、みんなが実践できる政策を構築していきます。

2. 循環の流れに沿って考えた発生抑制型の具体的政策

2-1.廃棄物の「発生抑制」(リデュース)

 資源を循環させ使用量を減らす対策
 日本の経済社会は世界中から20億トンもの資源を調達しながら、そのうち約2億トンしか再資源化していない「使い捨て社会」です。地球上の資源は有限です。いまの私たちの快適な生活は、次世代の資源を食いつぶした上に成り立つものであってはなりません。資源を循環させ天然資源全体の使用量を減らします。

2-1-1.天然原料に課税するなど資源使用抑制、再生原料普及対策の確立

 ・再生原料の方が天然原料より高値という状況を避けるため、天然原料には課税するなど、再生原料普及対策を立てる。

2-1-2.ワンウエイ容器の使用抑制 

 ・飲料容器は再使用、デポジット制を優先し、使い捨て容器は課税などによって使用を抑制する。
 ・回収容器は元の容器原料として使用することを原則とする。

2-1-3.過剰包装の抑止

 ・包装は生活に根を下ろした文化の一面もあるが、意識的な取り組みの第一歩でもあり運動化を目指します。

2-1-4.省原料・省資源型商品の推奨・技術支援と、そのための商品の原材料情報公開の義務化

2-2.製品や部品として「再使用」(リユース)

中古品の再使用と修理体制強化による寿命延長
 資源の使用を減らし、廃棄物量を押さえる原則に立って、再使用と「良い品を長く使う」文化を拡げます。

2-2-1.デポジット制度による再使用システムの再構築

 ・飲料容器や生活用具などは、預かり金制度を実施して再使用を目指します。
 ・プラスチックおむつのかかえている問題を検討し、再使用可能な布おむつなどの普及を進める。

2-2-2.計量販売、詰め替え販売など個人の協力の得られやすい再使用システムづくり

2-2-3.修理優先、部品保存期間の長期化で「良い品を長く」

 ・修理業などの活性化のために支援制度などを充実し、部品などの長期保存を義務化する。

2-2-4.家電、IT機器、自動車など耐久消費財のレンタル化あるいは共同使用

 ・リースやレンタル化により修繕や使用後の回収管理を容易にする。

2-2-5.使いまわし方式の普及

 ・衣料品など、住民との共同を視野に、国内だけでなく国際的な救援活動との協力を追求する。

2-2-6.広い広報による情報提供など、行政が住民の協力を誘導

2-3.原材料として「再生利用」(リサイクル)

 元の原料にすることを主目的にした効率の良いリサイクル
 リサイクルの目的は、資源とエネルギーの有効利用です。製品の設計段階から、使用以後の処理ルート別の区分けが容易で原材料として再生しやすい製品を目指すことが大切です。

2-3-1リサイクルは元の原料にすることを原則に、製品設計の段階から考慮

2-3-2.競争原理が働き、よい製品が普及する制度の導入

 ・リサイクルの費用を商品の価格に含ませ、市場の競争によってリサイクルの効率がよく、使いやすく安価な商品が普及できるようにする。

2-3-3.リサイクルのエネルギー収支の研究結果の公表・資源を節約しエネルギー消費を抑制するために、使用後の処理に必要なエネルギーを計算し、効率の良い方法を追求する。

2-3-4.リサイクル産業の育成

 ・適正で効率の良いリサイクルにはリサイクル事業者と住民、製造業者、行政それぞれの間の緊密な連帯交流が必要です。顔の見える関係、地域社会での共同が進むよう、地場産業として育成する。

2-4.循環困難な資源の「適正処理」

廃棄物量の減量・環境保全を基準とする適正処理
 産業廃棄物の処理、処分には経済性が最優先される事業者の自主(性)に任せるのではなく、行政の関与が欠かせません。市町村の責任と権限による廃棄物の適正処理、各段階での「予防的措置」の確立を目指します。

2-4-1.市町村の責任、権限、財源の強化

 ・一般廃棄物のうち事業系廃棄物は産業廃棄物とし、産業廃棄物についての管理、許可権限を原則として市町村に移管する。
 ・市町村の廃棄物行政についての権限、責任、財政能力を強化し、住民との共同を重視した廃棄物の適正な処理を進める。

2-4-2.区分処理の確立

 ・有害化学ごみや生活化学ごみ、産業化学ごみと医療廃棄物の区分処理の推進。特に、一廃・産廃の区分けが不明瞭な医療廃棄物には個別制度を確立する。
 ・生ごみを区分処理し、有機性廃棄物としてエネルギー化する研究・実践をする。
 ・リサイクル対象品目の拡大と集積場(リサイクルセンター)の整備を指向する。

2-4-3.焼却ごみの限定化と安全化

 ・焼却は循環困難な廃棄物処理の最後の工程と位置づけ、有害物質生成の可能性を考慮し、完全燃焼技術を検討する。
 ・焼却による熱を活用して、発電・地域暖房・給湯などエネルギーを有効活用する。
 ・廃プラスチックを熱源に使う処理方法(サーマルリサイクル)は、貴重な化石燃料資源の使い捨てを促進し、二酸化炭素発生源ともなるので慎重に対応する。

2-4-4.最終埋立残滓の安全化、最小化

2-5.環境の枠をはみ出る不法投棄対策

 環境の枠をはみ出てるものの毅然たる対応
 いかに優れた法・制度であっても、法の枠をはみ出して投棄・放置する廃棄物の不法投棄には無力です。 個人・組織を問わず、あらゆる違法には毅然たる対応が必要です。また、違法投棄が反復し頻発する場合には、法制度に欠陥が潜むと見ることも必要です。
 ・産業廃棄物の処理処分に関する計画書・事前届け出制の強化と情報を公開する。
 ・保管積み替え施設の事業概要詳細の提出を義務づける。
 ・廃棄物越境対策を講じる。
 ・自社処分場や自家保有地での廃棄物保管や投棄等に規制基準を設けるとともに、埋め立て終了時の土壌調査結果などは一般に公表する。
・有価物対策をもつ。
 ・市民パトロール・ごみオンブズマン等の制度化を検討する。

2-6.最終処分

 地域の生態系を活かし自然を破壊しない最終処分場
 全国約6000の最終処分場、さらい実態のつかめない自社処分場が、土壌・水・海洋・ときには大気汚染の発生源となっています。その履歴と実態の把握は緊急課題です。実態を踏まえたうえで、地域の生態系を活かし自然を破壊しない処分場建設を研究します。現行処分場の延命化を図り、土地造成とセットになったフェニックス事業は凍結します。

2-6-1.生態系枠内での最終処分を原則に

 ・自然を改変せず、微生物分解など生態系枠内での時間をかけた処分を志向する。

2-6-2.最終処分場の土地造成の禁止
 ・海洋、陸域、山間部、いずれでも最終処分場の跡地を、有効地として産業(農業)や宅地などに転用することを禁止する。

2-6-3.現行最終処分場の延命

 ・再発掘・減容化などを研究し延命対策に取り組む。

2-6-4.最終処分場の土壌汚染の回復

 ・高度経済成長期以来の埋め立て処分場・自社処分場など跡地の無害化のため、跡地履歴と実態の調査、無害化対策を急ぐ。

3. 廃棄物による環境汚染を回避するごみの安全対策

 廃棄物に関わる環境汚染を回避し、安全化を目指すためには、廃棄物の最終地点処理対策から脱皮し、環境保全を最重要課題とするような生産段階からの安全対策が求められています。

3-1.原料からの安全対策

 ・有害な物質の生成や排出が予想されている原料の使用を限定化し、環境負荷税等課税による抑制を図る。

3-2.使用化学物質の明示

 ・消費者の選択を保証するために化学物質の使用情報を明示する。

3-3.拡大生産者責任の確立

 ・すべての製品について、企業が製品の設計段階から、省原料、安全、再使用とリサイクルしやすい商品づくりを目指すよう誘導・促進する制度や税制を確立する。
 ・上記製品には環境優良マークなどを表示し普及をはかる。
 ・企業に製品の使用後の段階(放置、違法投棄、違法廃棄、違法輸出)にも一定の責任を負わせ、処理費用の負担などを求める。

3-4.「有害化学ごみ」と「医療廃棄物」のルートの開発

 ・通常のごみと厳密に区別し別ルートで処分する。
 ・医療ごみの内、感染性廃棄物の処理・処分は緊急に対策をたてるとともに費用負担のあり方を検討する。

4.環境型廃棄物政策を推進するうえでの各主体の役割と責務

 以上の廃棄物政策を着実に推進していくうえで、社会の各主体(企業、行政、住民)には次のような役割と責務が求められています。

4-1.企業

「経済的コスト主義から資源・環境コスト重視の永続可能社会追及姿勢への転換」
 ・製品の使用後の処理処分のなかで環境への負荷が発生しないよう、設計の段階から配慮し責任をもって対応する。
 ・化学物質の取り扱いも含む危険性について認識を高め、残留性の高い物質の低濃度汚染対策に真剣に取り組む。
 ・使い捨て容器から循環型容器へ転換させる(デポジット制の活用)。
 ・企業秘密を情報公開の理由にせず、製品の材質・成分などを全面公開する。
 ・製品のライフサイクルアセスメント(LCA)にもとづく情報を公開する。

4-2.行政

「各主体が廃棄物に関して公共性を確保するよう、情報提供、規制、誘導に積極的に取り組む」
 ・あらゆる施策で環境汚染防止の「予防的措置」を優先して積極的な規制、誘導をおこなう。
 ・製品の安全化、廃棄物の安全化、リサイクル技術などの研究・開発・情報提供を進める。
 ・使い捨て容器、天然原料への課税等経済的施策の積極的運用で民間の努力を活かす。
 ・廃棄物最終処分量の最小化、厳正な処分場対策、海洋埋め立ての凍結を推進する。
 ・汚染土壌の処理・回復と二次汚染の防止。焼却灰、飛灰など有害処分物質の安全化の研究を進める。

4-3.住民・消費者

 「家庭の廃棄物に責任を持つとともに、地球的規模で廃棄物問題を考え要求する力の向上」
 ・家庭から排出するゴミ全般に責任を持てるよう知識を持ち行動する。
 ・「生活の豊かさと永続性」を意識して、使い捨て製品の使用を減らし環境型製品に転換する。また、耐久消費財の長寿命化など、物質・消費文明の改革に立ち向かう。

以上

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