大阪発:エネルギー政策2003 [2003.1.18]
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大阪発:エネルギー政策2003

2003年1月18日 大阪から公害をなくす会

はじめに・・・この政策の目指すもの

大阪から公害をなくす会は、創設以来一貫して大阪の環境を守る運動をつづけてきました。この運動を通じて、エネルギー使用量の増大による地球環境の破壊は私たちの生存そのものを脅かすものだという理解を共有するようになり、共有した理解にもとづいて5年前に「大阪発・エネルギー政策97」をつくって運動の糧としてきました。

昨年2002年8月にはブラジル地球サミット以来10年の成果と今後の行動を討議するヨハネスブルグサミットが聞かれました。そこであらためてこの5年間に学んだものを加えた新しい政策「大阪発・エネルギー政策2003」を提起し、多くの人々と力をあわせて理解と行動の輪をひろげていきたいと考えます。

住民運動が大阪から発信するエネルギー政策は、世界でも有数な過密都市、自然エネルギー源に乏しい都市の住民からの訴えとして、大きな意味を持つと考えます。

この政策は、わが国の環境・エネルギー問題の現状と問題点を指摘したうえで、

・いまエネルギー問題を考える基本的な視点
・この視点にもとづくエネルギー政策の主要な柱(課題)
・柱ごとの具体的な施策を述べてエネルギー問題を解決していく取り組み

の基本的な方向性とそれにもとづく具体的な施策を提起しています。

1.京都議定書(1997)のその後と環境・エネルギー問題

1−1.建て前は進んだが、実態はさらに深刻化

世界の流れをみると、前回の政策をつくった1997年の12月に地球温暖化防止京都会議で「京都議定書」が採択され、日本は温室効果ガスの排出量を2008〜2012年には1990年比6%(先進国平均は5.2%)削減することが決まりました。その後国内の法制度も整備が進みました。注?

CO2排出大国アメリカの離脱はありましたが、何回かの国際会議を経て、2002年8月に聞かれた「ヨハネスブルグサミット」では、今後の行動の道筋をしめす「行動計画」や「政治宣言」を採択しました。これには、残念ながら具体的な数値目標が決まらないなどの弱点があります。しかし、サミット開催中、カナダとロシアが「京都議定書」の批准を宣言し、「京都議定書」の発効にメドをつけることができました。

このように、方針や法律、制度は整えられてきたにもかかわらず、1999年の国内の温室効果ガス排出量は1990年(基準年)比で7%(CO2排出量で9%)増えています。そして、周辺の山並と淡路島に囲まれた盆地のような狭い大阪では、世界のGDPの約1.3%に当たるきわめて密度の高い経済活動が営まれ、大気・水・土壌の汚染や自然環境の破壊が進み、環境・ヱネルギー問題は全体としてさらに深刻になっているのが実状です。注?

注?

*日本では京都議定書の採択をうけて、環境・エネルギー問題は、温室効果ガス(その大半はCO2)排出量の削減を大枠として取り組まれてきました。2000年には持続可能な社会を目指す新しい「環境基本計画」や「循環型社会形成推進基本法」、2001年には新エネルギー計画「今後のエネルギー政策について」が策定され、2002年3月に新しい「地球温暖化対策推進大綱」が閣議決定されて6%削減に応じた国の方針・目標が決められました。


*大阪府においても国の進行に合わせで「大阪府地球温暖化対策地域推進計画」(2000年)、「エコエネルギー都市・大阪計画」(2000年)、「環境総合計画」(2002年)などが策定実施されてきました。


注?

*1999年のCO2排出量は、(1990年対比)日・米は約10%増、EUは約4%減、その他の先進国では6%増。

*2001年3月に、世界から3000人の科学者が参加したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は第三次報告書を発表して、100年後の平均地上気温が1.4〜5.8℃上昇するという予測を発表し社会経済の改革の必要性を訴えました。

*大阪府内のエネルギー消費は、1997年度約277兆kcalで全国の約5%です。部門別のエネルギー消費量(最終消費ベース)では、産業45.7%、業務16.2%、家庭20、1%、運輸18.0%を占め、業務、家庭の増加率が大です。(大阪府環境総合計画)

*大阪では、例えば、自然海岸の割合は全海岸線の1.8%、人手の入らない森林割合は約20%、世界的に360ppmの大気のCO2濃度が、大阪北区では425ppm、過密高層化の都心部では電力・ガス・石油・自動車燃料の消費などによるエネルギー使用量増・廃熱増や緑の減少・土地の被覆などによるヒートアイランド現象などなど。

1−2.現実に成果があがらない4つの原因

このように現実の成果があがらない原因はどこにあるのでしょう。4つにまとめます。

?先ず第一に国が、「大量生産・大量消費・大量廃棄の生産と消費のパターンの転換」や「循環型社会の形成」という抜本的な大目標を掲げながら、現実には経済への影響や、企業経営に配慮して環境問題での企業責任を強調しない現状対応型の施策をとってきたこと。

実際、温暖化ガス削減対策では、「抜け穴」の具体化に終始して、環境の保全を第一義とする抜本的な施策を講じてこなかったこと。注?

?政府の地球温暖化対策推進大綱(2002年3月)ぱ民生部門、とくに家庭部門では省エネルギー生活の努力を重視して、ここでの削減を見込んでいること。注?

?経済界は、国や自治休め規制に反発し、あくまで「自主規制」が本来の施策だと主張し、京都議定書の批准は時期尚早と反対していること。注?

?この停滞や抵抗を批判し、国民的な運動で真に安全で将来性のある「地球環境計画」「エネルギー計画」を合意できない住民側の力量不足があること。注?

*政府・財界は、京都議定書で定められた「基準年より6%削減」を実行するためには、「京都メカニズム」(共同実施、排出枠取引、クリ−ン開発メカニズム)で1.7%、日本の森林によるC02の吸収を3.9%と過大評価するなど、まじめに自国からの排出を削減しようとしていません。


注?

*国民は国や産業界が大量生産、大量供給する電力、住居、自動車、電気器具、消費物資、過剰包装などを購入消費して生活するしかありません。現在の家庭部門でのCO2排出量の増加は、現在の大量生産・大量消費・大量廃棄の供給体制による消費生活条件を国民に押しつけた結果です。この消費生活条件をエネルギー消費を減らして生活していける内容〜熱効率のよい機器、省エネルギー住宅、包装材を減らせる食料品販売、長持ちする家具や家庭用品など〜にすることが大切です。生活物資を生産・供給する上流の供給元でC02排出削減対策をおこなわず、国民に省エネルギー生活の努力を一方的に求める施策は生活条件の切り下げを強制することになり国民の納得は得られず、抜本的なC02排出削減に向かう展望を開くことはできません。いわば川下の消費者が川上に向かって水流を押しとどめるのが難しいように、消費者の努力に大きな削減を期待する施策は現実的でありません。

注?

*現実には雪印、日本ハム、東京電力などの一流と言われてきた企業で市民を欺く行動が次々に明らかになり、企業の自主規制・環境配慮に期待する施策の破綻が明らかになりました。

1−3.思い切ったエネルギー使用量削減政策への転換を

一方ヽ京都議定書採択以来の国際的国内的に環境対策技術の発展はめざましいものがあります。また、国民が利用できる情報手段も一段と進歩し,環境問題での国際的交流も進みました.さらに、ブラジル地球サミット、京都会議以来大きく進んだのは国民の環境問題に対する関心の高まり、知識の広がり、関心や意識の向上です。いま、国民的な力を結集して民主的に「環境を保全できるエネルギー政策」を具体化していく条件は着実に前進しています。

 わたしたちはこのような状況にたいして、環境問題・エネルギー問題での新たな展開・発展を目指して、確実なCO2排出削減の可能性を持つ「エネルギー使用量削減」の施策を含む再度の提案をおこないます。

従来から「エネルギー使用量の削減」は経済活動の縮小を意味すると考えられて、施策として掲げることは嫌われてきました。しかしわたしたちは、エネルギー使用量の削減と安全で豊かな社会の構築を両立させることが避けて通れない課題になったと考えます。

エネルギー使用量を減らして生活していける消費スタイルを選択できる内容に変えること、さらに人間労働を活かして教育・文化・福祉・医療など人間生活を豊かにする分野に大量の雇用を創り出すことなどによって、経済活動の水準を低下させずにC02排出削減への展望を開くことができます。さらに過密・過疎の解消に向かうような地域経済の確立、エネルギー使用量の少ない交通網整備なども重要な政府の課題です。

一方で自然エネルギー利用を増やしながら、総量としてエネルギー使用量を削減して化石燃料の大量使用を押さえ、放射能の危険性も抑制しながらC02排出削減を実現していくのが正しい方法です。注?

 

注?
*日本政府は、CO2排出削減のために新しいエネルギー計画で、世界の流れに抗して原発建設推進を確認し、期間内に10〜13基の増設を計画しています。 C02排出を押さえるけれども、問題が指摘されている放射能汚染の危険を増加させ、さらに夜間電力の浪費を国民に押しつけないと経済的に成り立たないような政策は、およそ賛同できるものではありません。このような政策の基盤には、政府・財界の「経済規模の拡大にはエネルギー使用量の増加が必要だ」という硬直した思考があります。

2.いま求められる環境・エネルギー政策

2−1.基本的な視点

エネルギーは、社会の活動、人間生活の基盤となるもので、すべての人々が健康で文化的な幸福な生活を維持するために欠くことのできないものです。またわたしたちのエネルギー政策は、いま住んでいる人たち、将来地球上に住むであろうすべでの人々が安全・健康にかつ心豊かに住みつづけていける環境の確保を第一義とするものでなくてはなりません。

次の基本的な視点が必要です。

?2010年目標だけでなく、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)予測に沿って21世紀から将来の地球環境問題に対応できる長期の展望
?持続可能な社会に向けて、生産・消費・廃棄・生活スタイルの抜本的な改革を具体化できる政策。エネルギー使現量削減を正面に掲げた改革
?人間は知性を持った生き物であり、経済の枠に大きく支配されるとともに、知性にもとづいて将来の世代の安全のための目標を意識的に追求する能力を持っています。この人間能力を環境保全に向かって発揮させ、また誘導できる施策
?市場経済での競争を生ぎぬかねばならぬ企業が、自主努力中心で抜本的削減を実現することの困難を確認し、目標実現に向けた厳しい規制をおこなうとともに、企業にとって環境への配慮が経済的にも報われるような仕組みの具体化

2−2.大阪発:エネルギー政策試案の主要な柱

?原子力に依存しないで地球環境を保全できるC02排出量削減目標、エネルギー使用量の目標

?化石燃料の消費を減らしエネルギー利用効率を高める消費生活スタイルの確立を目指す規則、施設、都市の構造などの具体的な目標をたて、それらの諸目標に向かって企業、団体、個人を誘導していく経済的・社会的枠組みの制度化

?社会の物質的循環の出発点となる企業の役割を重視し、産業活動における産業別のC02排出総量とエネルギー使用総量目標を設定するとともぱ、「拡大生産者責任」にもとづく環境を汚染しない商品供給責任制の確立

?安全で再生可能なエネルギーの開発を強力に進め、従来の巨大発電所による独占的なエネルギー供給体制から、分散し、居住地に近い、住民が関与する(分散居住接近住民関与型)エネルギー源と協力連携する供給体制への転換

?社会の構成員全体がそれぞれの立場で自発的に活動できるよう環境情報の提供と環境学習の機会の確保。特に製品(商品)のライフサイクルアセスメント(LCA)情報を重視し、消費者の選択基準となる情報の提供

?行政はこれらの諸目標具体化に責任を持ち、積極的な公共投資と、厳格な排出規制、政策進行管理をおこない、従来原子力開発に投じた資金を振り向けさらに拡充する

3.具体的な施策

3−1.(目標)原子力に依存しないで地球環境を保全できるCO2排出量削減目標、エネルギー使用量の目標

3−1−1.原子力発電に依存しないで、2010年にはC02排出量を1990年に対して実質6%削減し、これに見合うエネルギー使用量の削減を目標とします。

3−1−2.2010年以降の長期の目標は、IPCCがC02の濃度をこれ以上高くしないために必要だと提起している、1990年水準から50〜70%の削減とします。

3−1−3.全国的な目標に従って、都道府県、産業別の目標を策定し、さらに企業別目標、消費者である住民が納得できる住民使用量削減目標を示します。

3−2.(経済的・社会的枠組み)化石燃料の消費を減らしエネルギー利用効率を高める消費生活スタイル確立を目指す規則、施設、都市の構造などの具体的な目標をたて、それらの諸目標に向かって企業、団体、個人を誘導していく経済的・社会的枠組みの制度化

最も基本になる目標は、化石燃料の消費を減らし、しかも豊かな暮らしを創り出すことです。そのためにエネルギー多消費型生活を見直す住民の意識を高めるための多面的な取り組みが必要です。しかしもう一方では人々が省エネルギーに関心を持ち自ら進んで努力するよう誘導していく経済的社会的な決まりや制度、枠組みが必要です。この二つが支え合って生活スタイルの見直しは前進していきます。さらにC02排出の少ないエネルギー利用システムを早急に整備することも必要です。


3−2−1.使いやすく、長持ちし、必要な修理が保障され、廃棄物をあまり出さないような商品が、住民の要求にこたえて供給される必要があります。ここでは住民の生活に密着した中小零細企業や農林業の奮レが期待され、さらに多様なビジネスチャンスが期待でき、中小零細企業の活性化と地域雇用の創出を促すことができます。

3−2−2.エネルギー効率の悪い自動車中心の輸送システムを改め、低床式蕗面電車などの市街地公共交通システムを整備し、都市内の高速自動車道路の建設をとり止めます。自転車を利用しやすいよう道路構造を改めます。運送業者やタクシー業者にC02排出量の削減目標を決めて責任を持たせます。

3−2−3.高層建築の密集により膨大なエネルギーが使用されるとともに都心部の気温が上昇するヒートアイランド現象がすすみ、それがまた都市住民のエネルギー消費量を増やします。高層ビルの建設に一定の制限を加え、ビルの照明に可能な限り自然採光方式を採りいれ断熱効果の高い構造にするなどエネルギー使用量の抑制を進めます。また、都市に内水面や緑地をより多く確保する施策をおこないヒートアイランド現象の発生を防ぎます。都市の緑化は都市生活の快適度を総合的に高める視点で重視します。

3−2−4.都市住民がエネルギーを有効に利用できるよう、都市の諸施設の廃熱を有効に活用できるシステムによる暖房給湯施設、小型燃料電池を活用したコ・ジェネレーション(電熱係結)などの共同利用施設の整備を進めます。現在、電力資本により推進されている、原発の余剰電力をさばくための、夜間電カエネルギー浪費生活スタイルの押しつけをやめさせます。なぜなら、いま電力会社が進めている原子力発電推進の問題点が明らかになり、さらに東京電力の原発トラブル隠しが国民の原発の安全へ信頼を根底から揺るがせて、国の原発政策の根本が問われている状況のもとで、将来の電力供給でのいっそうの混乱と困窮を未然に防ぐ必要があるからです。

3−2−5.住宅改善を重視します。断熱・採光・太陽熱活用などの省エネルギー性能の向上や、太陽光発電との一体化など、規格や助成制度などを定めて構造の改善を進めます。

3−2−6.都市生活は膨大な廃棄物を生み出します。廃棄物の量を減らすことがエネルギーの利用を減らす大切な条件です。廃棄物の中で最も多い建設廃材の減少を目指して家屋などの耐用年数の延長に取り組みます。また、新築より格段と廃棄物の少ない、改装による省エネルギー住宅化を進めるなどの施策も必要です。

3−2−7.化石燃料への課税は化石燃料の使用量を減らす有効な手段です。税収は環境対策と、課税で生活を圧迫される層への生活支援に充てることを条件に早期の具体化を図ります。

3−2−8.地域の自立は地域の文化と民主主義にとって重要ですが、ローカルな経済圏を確立することによって、地域の文化と生活を豊かにすると共に、人の移動や物資の輸送距離が短縮され輸送面でのエネルギー使用量が削減されます。

3−2−9.産業革命以来、人間労働の機械と化石燃料の使用への置き換えがすすみました。その結果、一方では豊富な物資が供給される反面、資源の浪費、化石燃料消費の増大と、リストラ、失業による人間労働の浪費を生んでいます。人間労働の価値と尊厳を評価して、人間生活を豊かにする教育・医療・福祉などのサービス労働の場を増やします。これにより、文化・芸術活動を多面的に発展させるなど、化石燃料の使用量を増やさずに人間の生活を豊かな質の高い内容にすることができます。

 

3−3.(企業の役割)社会の物質的循環の出発点となる企業の役割を重視し、産業別のCO2排出総量とエネルギー使用総量目標を設定するとともに、拡大生産者責任にもとづく環境を汚染しない商品の供給責任制の確立

3−3−1.国、府県、産業別の排出目標に従って個々の企業の排出目標を決め、目標が達成されるよう指導、監視、排出規制をおこないます。

3−3−2.生産と消費のスタイルを転換して少量消費物質循環型社会をつくりあげていくうえで、企業から供給される製品(商品)の質が大きな役割を果たします。使う人の生活を豊かにし、安全で長もちし、リサイクルがしやすく、廃棄物になる量が少ない商品の供給という面で企業の社会的責任が問われることになります。製造物責任制度を確立し、企業は製品(商品)の品質はもちろん、使用以後の回収・処分まで含めて責任を負うことにします。回収と処分に必要な費用は商品価格に含ませ、市場での競争に
よってより効率のよい回収処分かおこなわれることを目指します。

3−3−3.消費者が環境に優しい商品を選択するうえで必要な情報が十分提供されることが欠かせません。商品が、原料の採取から製造、使用、廃棄、処分の一生を通じて必要とするエネルギー量の情報をライフサイクルアセスメント(LCA)によって把握し消貧者に提供します。LCAの実施と公表が企業の責任でおこなわれる制度の確立を目指します。

3−4.(供給体制)安全で再生可能なエネルギーの開発を強力に進め、従来の巨大発電所による独占的なエネルギー供給体制から、分散し、居住地に近い、住民が関与する(分散居住接近住民関与型)のエネルギー源と協力連携する供給体制への転換

3−4−1.いままで国が推進してきた原子力発電(核燃料サイクル)は、現状では放射能による大量汚染の危険の可能性や核廃棄物処理の問題性は否定できないので、これ以上の建設をおこなわず、耐用年数と事故や故障、老朽化の実態に応じて順次廃止を目指します。

3−4−2.日本国内には大量のエネルギーを供給できるようなエネルギー資源はありません。いわゆる自然エネルギーを始めさまざまなエネルギー源を集めて自給率の向上を図ります。小型水力、太陽光、太陽熱、風力、バイオマス(生物起源)、地熱などのエネルギー利用についてそれぞれの条件に応じた目標を決めて推進します。また、市民個人や共同での発電を促進できる支援制度を拡充します。

○太陽光発電、太陽熱利用は省エネルギー住宅の規格、助成制度などをつくって積極的に普及します。
○小型水力、風力、バイオマスなどのエネルギー源は、地域住民の組織や自治体などが推進する分散・共同型エネルギー源として援助推進します。
○これらの分散型エネルギー源が有効に利用されるためには、従来すべての電力を供給してきた電力会社の送電システムとうまく繋がって安定した電力として供給されることが絶対に必要です。そのための制度面、技術面の整備をおこないます。
〇廃棄物利用のいわゆるゴミ発電は、効率をあげるために燃料となる廃棄物量の確保に走ります。廃棄物の発生を減らすという本来の目標に反しないよう慎重に扱います。

3−4−3.従来の九電力による巨大発電所での集中的な発電と遠距離送電の方式は、理論的にも4割程度のエネルギーしか電気エネルギーとして使用できず、送電ロスや送電経費も必要です。さらに最近技術的にも大きく進歩したコ・ジェネレーション(電熱併給)の利用は困難で、結局極めて熱効率の悪い発電方式です。これからの発電方式として、エネルギー消費地の都市近郊や都市内部の小規模発電所あるいは発電施設を重視し、コ・ジェネレーションや廃熱の共同利用などと併用してエネルギーの利用効率を高めます。

巨大発電方式は、巨大電力資本の利益に偏った非民主的な運営を生みます。分散し、居住地に近い、住民が関与する(分散居住接近住民関与型)の発電方式は発電体制の民主化を進めます。

3−5.(情報・学習)社会の構成員全体がそれぞれの立場で自発的に活動できるよう環境情報の提供と環境学習の機会の確保。特に製品(商品)のライフサイクルアセスメント(LCA)情報を重視し消費者の選択の基準となる情報の提供

21世紀は情報の世紀でもあります。生産と消費のスタイルの転換という大事業にとって、環境・エネルギー問題についての社会構成員の意識・知識を高める教育・学習と、関連する情報の徹底した公開・提供は変革のエネルギーを生み出す最重要な課題です。

3−5−1.行政と企業によるエネルギーや環境に関する情報の原則公開を制度化し、社会のすべての構成員が進歩した情報・技術を活用できるようにします。製品(商品)のライフサイクルアセスメント(LCA)情報をはじめ、消費者が、化石燃料の消費が少なく環境に優しい消費物資を選ぶうえで必要な情報の提供を特に重視し制度化を進めます。

3−5−2.公共事業、道路建設のエネルギー使用量に及ばす影響の情報の公開、とくに、都市内高速自動車道路がエネルギー使用量に及ぼす総合的データについての情報を重視し、行政の責任で情報収集をおこない公開します。゛

3−5−3.環境に関する情報を利用し活用するについては、住民の意識と理解能力を高める教育・学習の強二化が欠かせません。義務教育、高校、大学、社会教育のすべてめ段階で能力に応じた環境問題についての教育を充実させます。教育内容は、地球環境の有限性、自然の中で生きる人間、永続可能な社会の構築、環境の現状と地域の特色を総体として理解することを目指します。

3−5−4.新聞・テレビなどのマスメディアの役割は重大です。科学的・系統的な分かり易い情報普及の役割を重視します。

 

3−6.(行政の役割)行政は、これらの諸目標具体化に責任を持ち、積極的な公共投資と、厳格な排出規制、政策進行管理をおこない、従来原子力開発に投じた資金を振り向けさらに拡充する

諸施策を具体化し推進していくうえで、社会全体の利益を代表する行政が積極的に関与し、指導し、援助推進することが必要です。行政は計画策定、目標設定、情報公開と環境教育を主にして、あとは民間に責任を負わすという姿勢では改革はすすみません。社会のすべての主体がエネルギー使用量削減と環境保全のために積極的に動けるような経済的社会的枠組みつくり、安全で再生可能なエネルギー源の開発普及、環境を汚染しない都市の構造や建築物の構築のための公共投資は行政の責任で強力に推進します。従来原子力発電推進のために使われた膨大な資金は安全で再生可能なエネルギー源の開発普及に振り向けます。

以上

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