2015年統一地方選挙に向けた私たちの要求 [2015.2.20]
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人の命・生存を大切にする環境・公衆衛生行政を!
2015年統一地方選挙に向けた私たちの要求

2015年2月1日
大阪から公害をなくす会

 大阪から公害をなくす会は1971年の発足以来、一貫して“公害をなくし、環境の保全・再生をめざす”府民運動をすすめてきました。最近では地球環境を守り、原発をなくす課題にも積極的に取り組んでいます。

 今、地球温暖化対策としての温室効果ガス・CO2の削減や原発・自然エネルギー問題、公害健康被害者の救済などどの面を取っても、人の命・生存、生態系と環境の保全を最も大切なものとするのか、それともこれを犠牲にしてでも経済を優先するのかが鋭く問われています。

 私たち大阪府民はかつて黒田革新府政を誕生させ、全国に先駆けて保健所の増設による公衆衛生行政の拡充、公害対策での「総量規制」の導入による日本一厳しい大気汚染対策の実施、老人医療費無料制度の創設などによる医療・福祉の充実など、府民の様々な要求を掲げて自治体を変え、府民が健康で安心して暮らせるための行政を実現してきた歴史を持っています。それは人の生命・生存をこそ最も大切なものとする行政であり、こうした姿勢こと今の自治体・行政に求められていることです。

 私たちは、住民の生命・暮らしを優先する社会・街づくりこそ、明るく豊かな府民生活を保障する第一歩であり、次の世代に引き継ぐべき社会であると考えています。そうした視点から2015年の一斉統一地方選挙に当たり、大阪府をはじめとする各自治体・行政に対し以下のことを要求します。

 府民・市民の生命と財産を守るための要求実現のために、そして、地方自治体が住民の生命とくらしを守るトリデとして本来の役割を果たすために、いま何をなすべきか、共に考えていきましょう。

(1)公害健康被害者の救済について

 「公害」は終わってはいないどころか、現在進行形の問題です。例えば、ディーゼル車の排ガスなどを主な原因とするぜん息患者は、小・中・高校生を中心に年々増加しており、大阪の成人含めて全体のぜん息患者数は、6万人とも7万人とも推計されています。かつて大量に使われたアスベストによる健康被害は、石綿肺や肺がんとなって深刻な問題になっています。プラスチックの“リサイクル”の名による加工で、これまでになかった有害な化学物質が発生し、工場周辺の住民に耐えがたい苦痛を与えています。公害は“被害に始まって、被害に終わる”と言われるように、こうした健康被害の実態を確認するとともに、先ずは公害健康被害者を救済し、その上で原因の究明と根絶が大事であり、以下の施策を要求します。

 ?泉南アスベスト健康被害者の国家賠償請求裁判で、最高裁はアスベスト使用の規制をしなかった国の不作為責任を認定し、原告勝訴の判決を下しました。アスベスト健康被害者の救済を放置してきた責任の一端は大阪の自治体にもあります。大阪の自治体として被害府民を救済する立場に立って、近隣ばく露者・家族ばく露者、1972年以後の被害者も救済の対象にし、一刻も早い全面解決を国に強く働き掛けること求めます。また、自治体としてアスベスト工場内や周辺地域での疫学調査を実施することを要求します。

 ?アスベストの問題は、1980〜90年代に“夢の建材”として大量に使用された時代の建物がこれから取り壊し、建て替えの時期を迎え、ますます大きな社会問題となってきます。アスベストによる健康被害を防ぐため、アスベスト使用の建築物、上下水道、橋梁、道路建築物などの解体時における飛散対策の徹底を要求します。また、泉南地域に放置・残存しているアスベスト工場の除却・処理、その他の放置されたままになっている旧アスベスト工場の解体処理を国と自治体の責任ですすめること。

 ?寝屋川の「廃プラ」処理場の周辺住民から、処理工場の操業とともに発疹や喉のイガイガ、目のかゆみ等の健康被害の訴えが出ています。この事実を真摯に受け止め、「完全な科学的証拠が欠如していることを対策延期の理由とはせず、科学的知見の充実に努めながら対策を行う」という予防原則の立場に立って、行政として先ずは被害者の救済に取り組み、さらに疫学調査による実態調査と原因物質の特定、除去・防止対策を要求します。

 ?1988年に公害指定地域が解除されて以来、ぜん息患者は公害患者として認定されなくなり、一般疾患の患者と同等の扱いとなりました。そのために医療費の負担が家計を大きく圧迫し、こうした未認定のぜん息患者の最大の願いは“せめて医療費だけでも無料に”となっています。未認定・未救済のぜん息患者への救済制度を国の制度として創らせるとともに、つなぎ施策として大阪府独自の医療費助成制度を早期に創設することを求めます。

(2)公害・環境・公衆衛生行政について

 憲法25条は、「生存権」と「国の社会的使命」を定めています。しかし、住民のいのち・暮らしに責任を持たなければならない国や自治体が、官から民への流れの民営化路線によって公的責任を次々に放棄、縮小してきています。一方、SARS、鳥インフルエンザ、デング熱、エボラ出血熱などの問題は、検疫や感染症対策など公衆衛生体制の強化が重要な課題になっていることを示しています。いざという時に対応できる体制づくりなど、府民が安心して健康で過ごせる公害・環境対策、公衆衛生行政の拡充を強く求めます。

 ?府立環境農林水産総合研究所は、大阪の環境の監視や調査・保全で重要な役割を果たしてきました。その公的責任を維持し、発展させるためにも独立行政法人化を撤回し、元に戻すことを求めます。

 ?大阪市立環境科学研究所(=環科研)と大阪府立公衆衛生研究所(=公衛研)は、公衆衛生として共通の業務を担うとともに、環科研は大阪市内という大都市での環境問題を、また、公衛研は衛星都市を守備範囲にしながらも大阪府全体の公衆衛生問題を担当するというそれぞれ独自の役割も持っています。環科研と公衛研との統合と独立行政法人化は、それぞれの役割を否定するだけでなく、環境・公衆衛生業務の縮小につながることは明らかであり、中止することを求めます。

 ?NO2対策では、大気汚染とぜん息など呼吸器疾患との因果関係について、行政として学校や医療機関の協力を得て疫学調査を実施すること、3歳児検診で全小児を掌握して追跡調査を行うなど実態把握の体制を作ることを要求します。また、ディーゼル車の排ガス規制を引き続き強化するとともに、局地汚染対策の徹底、公共交通機関を中心に据えたECO型交通体系を確立することを求めます。

 ?大阪では、住民の手によるNO2測定運動が毎年取り組まれています。特に5〜6年に1回の割で大阪府全域の一斉測定運動では大阪府域をメッシュに区切ってカプセル1万個近くを設置してのNO2濃度を測定とともに、府民への健康アンケートも行い、大阪の大気汚染の現状を面として明らかにするとともに、大気汚染と人の健康との関係を明らかにする貴重な取り組みとなっています。こうした住民による自主的な大気汚染の測定運動を自治体としても支援することを求めます。

 ?2011年3月策定の『大阪府新環境総合計画』におけるNO2の環境保全目標は「二酸化窒素の日平均値0.06ppm以下を確実に達成するとともに、0.04ppm以上の地域を改善する」などとなっています。こうしたあいまいな目標設定は対策を遅らせるだけであり、環境保全目標は「0.04ppm以下とする」と明確にすることを求めます。また、環境行政における大阪府の役割、権限、責務について明確にすることを求めます。

 ?呼吸器系疾患だけでなく循環器系疾患にも重大な健康被害を及ぼす物質としてPM2.5がクローズアップそれてきています。PM2.5の観測体制については時間値もきっちり把握できるものに拡充するとともに、観測結果の分析と環境基準以下にする対策に取り組を一歩進めることを要求します。

 ?2000年以降、大阪府の保健所が大幅に削減され、大阪市では1カ所に統合されました。保健所は公衆衛生のトリデです。府民・市民の健康を守る保健所の削減政策を改め、強化・拡充政策に転換することを求めます。

 ?その他のいくつかの要求
*水道は下水道とともに市民生活に欠かせない最も重要なインフラであり、公衆衛生面からも重要な事業です。また、災害時には交通機関とともに重要な役割を担うものであり、民営化は最もなじまない分野です。大阪市の水道事業は下水道事業とともに公営事業として維持することを求めます。
*一部自治体でゴミ処理を民営化する動きがありますが、ゴミ処理は無料を原則にすべきであり、そのためにも自治体が行うべき事業です。ゴミ処理の公営を維持するとともに、より進んで家庭ごみや家屋の廃材などを貴重なエネルギー資源、再生可能エネルギー資源として活用する方途を行政として積極的に追求することを求めます。

(3)地震・津波対策など大阪の防災問題について

 東日本大震災から間もなく4年、阪神淡路大震災から20年が経過しようとしています。阪神大震災以後の日本は地震や火山の活動期に入ったと言われ、実際、昨年9月には御嶽山が戦後最大の被害者を出す大噴火を起こし、11月には長野県白馬地方で活断層地震、さらに九州の阿蘇山がマグマ噴火を起こしています。近畿の地震についてはM7〜8程度の南海トラフ巨大地震が、今後30年以内に70%の確率で発生、大阪府内の死者は最大13万4000人近くに達すると予想されています。さらに異常気象による被害も甚大で、昨年7月、8月の大量降雨では広島市内などで地滑り被害が発生しています。こうした自然災害に対する防災として、以下の対策を要求します。

 ?南海トラフ巨大地震や上町断層帯直下型地震への対策を明確にすること。特に大阪では、港・湾岸部の船・コンテナ・石油タンク問題、地盤の液状化、超高層ビル、巨大地下街、木造密集住宅、津波による浸水などの対策を明確にすることを要求します。

 ?最近、異常気象によって“今までに経験したことのない”巨大台風や竜巻、集中豪雨などの自然災害が頻発しています。こうした巨大台風・集中豪雨などに対する対策を明確にすること要求します。

 ?水や食糧の備蓄、災害弱者への対策、帰宅難民対策などの防災・避難計画は、住民と一緒になって作成し、住民への丁寧な説明と不断の訓練を実施すべきです。また、そのためにも各自治体に防災担当の先任者を配置し、防災対策の専門職として研鑽させ、いざという時のための危機管理体制を確立することを求めます。

 ?大阪府の咲洲庁舎(旧WTC)は、自治体の庁舎としてまったく相応しくないものであり、一刻も早く全面撤退することを求めます。

 ?淀川の堤防の下に高速道路を通す淀川左岸線計画は、津波対策、防災の面から見ても非常に問題が多いと言わざるを得ません。現在進めている淀川左岸線・延伸計画は防災の面から徹底して見直すことを要求します。

(4)地球温暖化防止・自然エネルギーの推進について

 異常気象が国内はもとより世界各地で猛威をふるい、多くの人の生命を奪い、甚大な経済的被害を発生させています。その背景に気候変動・地球温暖化があることが指摘され、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次報告は、「気温の上昇を1990年度比で2℃以内に抑えないと地球はも早や元に戻れない深刻な事態に陥る」と警告しています。気候変動・地球温暖化防止は待ったなしの課題であり、すべての国民と世界各国共通の重要課題になっています。こうした課題を真正面に据えて、“Think globally! Act locally!”の精神で次のような取り組みを行うことを要求します。

 ?温室効果ガス・CO2の削減、気候変動・地球温暖化の防止につながる最も大事な取り組みの一つは自然エネルギーの推進であり、もう一つはエネルギーの消費を必要最小限に抑える省エネ・低エネルギー社会を実現することです。この立場に立って、各自治体の温暖化対策を強化することを求めます。

 ?自然エネルギー(再生可能エネルギー)の推進は、太陽光や小水力、風力、木質や食品バイオなどそれぞれの地域の資源と特性を生かして進めることが大切です。そのためにも各自治体が「自然エネルギー推進条例」(仮称)などを制定し、行政、住民、業者、専門家などが一体となって自然エネルギーを強力に推進する体制をつくること、推進するための自治体としての計画を策定することを求めます。
温室効果ガス・CO2削減では産業別、企業別削減目標を徹底させ、身近なところから対策を具体化することを要求します。

 ?COP21は京都議定書以後の温室効果ガス・CO2削減の目標値を決める重要な会議です。「共通だが差異ある責任」の原則に立って、日本政府は2008年の北海道洞爺湖サミットでG8各国が合意した「温室効果ガス・CO2を2050年までに1990年比で50%削減する」という目標、さらにはIPCC第5次報告が提起する「21世紀末までに100%削減する」という目標を積極的に受け止め実行し、先進国としての役割を率先して果たすよう国に働きかけること求めます。

 ?温室効果ガス・CO2の削減という時代の要求に逆行するだけでなく、NOxや水銀などの有害物質を放出することになる石炭火力発電所の新増設をやめること。現在使用中の石炭・重油火力発電所については低CO2・高効率の発電に切り替えるよう指導することを要求します。

(5)原発問題について

 原発は、いったん過酷事故を起こせば人の手では制御できない大惨事、“最大の環境破壊”“最悪の公害”となり、一瞬にして人々の生活と生業を奪ってしまいます。福井の原発群で福島第1原発のような事故が起これば、近畿の“水瓶”である琵琶湖の水が汚染されて、近畿1300万人の飲み水が無くなるという大変な事態になります。また、発電の結果できる放射性廃棄物(=核のゴミ)はその処理方法がなく、何万年にもわたって管理し続けなければならず、後世に大きな“負の遺産”を残します。さらに原発で生成されるプルト二ラウムはいつでも核兵器の原材料に転用できる物質です。このような危険なものは人類とは共存できません。原発は地震国・火山国と言われる日本、さらに被爆国としての日本から一日も早く撤去すべきです。原発問題について以下のことを要求します。

 ?福井地裁は2014年5月、人の生命、生存こそ最も大切にすべきものであるとするとともに、万に一つでも事故を起こす可能性のある大飯原発3・4号機の運転は差し止めるという判決を下しました。こうした立場にたって、大阪の各自治体が大飯・高浜原発の再稼働に反対するとともに、特に大阪市は筆頭株主として、関西電力に原発再稼働の中止を強く求めるよう要求します。

 ?“原発はCO2を出さないクリーンなエネルギー”という宣伝に対し、原発はウラン燃料精製の過程でCO2をたくさん出すだけでなく、発電の中でプルトニウムなどの猛毒を大量に生成し、10万年以上も管理しなければならないということなどを示し、行政としても明確に反論することを要求します。

 ?自治体として『大阪府市エネルギー戦略の提言』を正面から受け止め議論するとともに、「大阪府市の役割」等で述べられている自治体の課題を具体化、実践することを求めます。

 ?原発ゼロのためにも、自然エネルギー・再生可能エネルギー、省エネ・低エネルギー政策を積極的に推進することを求めます。

 ?福島第1原発の事故を受けて近畿には2088人、大阪には553人が避難してきています(2014年12月26日現在)。こうした原発災害避難者への支援が重要であり、行政として住宅、保育・教育、就労の斡旋など長期的展望に立っての支援を要請します。

以上

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