大阪府への「大気汚染問題についての要望」への回答と懇談内容(要旨) [2022.8.10]
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大阪府への「大気汚染問題についての要望」への回答 と 懇談内容(要旨)

作成 2022年8月10日
大阪から公害をなくす会 久志本

日時 2022年7月27日(水)10時〜12時
場所 大阪府咲洲庁舎 21階 公害審査会室(本室)
参加者
 大阪府環境農林水産部 6名(環境管理室環境保全課環境監視グループ 橋田学氏 他)
 大阪府健康医療部   6名(生活衛生室環境衛生課総務・企画グループ 三谷真也氏 他)
 大阪から公害をなくす会 金谷、藤永、上田、長尾、久志本 5名

1.要望への府の回答

(1)大阪府のNO2の環境保全目標の「二酸化窒素の日平均値0.06ppm以下を確実に達成するとともに、0.04ppm以上の地域を改善する」については、大阪市と同じように「二酸化窒素の日平均値0.04ppm以下とする」の目標にすること。また、国に対してこれを求めること。関連して大阪府環境白書における基準達成状況の表現で「全局で環境保全目標を達成した」とあるが、そうではなく「全局で0.06ppm以下を達成した。引き続き0.04ppm以下をめざす」とすること

⇒府 最新のデータを発表したばかりですが、二酸化窒素の濃度は、緩やかな改善傾向を示しています。令和3年度の常時監視局の95%以上(96局中93局)が、0.04ppm未満となっています。残りの3局が0.04ppm〜0.06ppmのゾーン内です。さらなる濃度改善という視点に立って、引き続き自動車環境対策等の取組みを進めていきます。

(2)「自動車NOxPM法対策地域の指定解除について」に関して中央環境審議会大気騒音振動部会「自動車排ガス総合対策小委員会」において、大阪府から提出した意見を説明してください。なお、その意見について大阪市との事前協議などはどのようにしたのでしょうか。また、その前に地元の公害患者の声を聴いての意見であったのでしょうか。

⇒府 このヒアリングは、「自動車NOxPM法」について、対策地域からの意見聞き取りであり、「指定解除」を前提としたものではなかったです。府の意見の中身は、環境省のホームページで公表されています。二酸化窒素については、濃度が一部ゾーン内にあり、大阪府としては引き続き、交通量が集中しているところの局地汚染対策など、実効性ある汚染対策が必要であると述べています。

PM2.5については、今後削減の目標設定に当たっては、目標値等の科学的根拠・PM規制をはじめ対策の効果を十分に検討すべきと国に伝えています。

(3)大阪府として、「自動車NOxPM法対策地域の指定解除について」では、二酸化窒素の環境評価基準を、「日平均値0.06ppm以下を確実に達成する」ではなく、「0.04ppm以下を達成するにすること及びPM2.5についても評価すること」を、国に求めること。

⇒府 「指定解除について」は、地域ごと都道府県が検討して、環境省で個別に判断するのですが、府としては現時点では「指定解除について」は検討していないという回答です。ひきつづき「ゾーン内」をなくしていきたいと考えています。PM2.5については国の「今後の自動車排出ガス総合対策の在り方について(答申)案」に対するパブリックコメントの結果において、充実した監視体制が行われてきた期間は限られており、自動車NOx・PM法に依る施策の効果を評価するに当たっては、一貫した評価ができるSPMでの評価が適している、と示されております。答申では5年後を目途に制度のあり方について改めて検討するとされており、府は国の取り組みを注視していきます。

(4)大阪府の環境アセスメントでは、非悪化原則を基本とし、二酸化窒素の環境保全目標は大阪市環境基本計画と同じ0.04ppm以下とすること。

⇒府 府の環境影響評価制度においては、大気質に関する評価の指針を3点定めており、一つ目は環境への影響を最小限にとどめるよう環境保全に配慮されていること、二つ目は、環境基準や国や府の環境の計画等の目標の達成と維持に支障を及ぼさないこと、三つ目は、大気汚染防止法等の規制基準に適合するものであることです。府としては、環境影響評価手続を行う事業が評価の指針の各要件を満たすよう、引き続き適切な制度運用を図っていきます。

(5)全自治体において、監視局を設置し、監視強化と改善・対策を継続すること。

⇒府 国は、大気汚染防止法に基づき地方自治体が行う大気汚染常時監視業務について、同法の事務処理基準を定めており、府内では事務処理基準から算定される測定局数より多い地点で大気の常時監視を行っています。近年は、二酸化窒素や浮遊粒子状物質の年平均濃度は緩やかな改善傾向であり、環境基準も達成されていることから、現時点では測定局を追加する必要はないと判断しています。今後とも、適切に大気汚染の常時監視を実施するとともに、引き続き、固定発生源や移動発生源の対策に取り組んでいきます。

(6)PM2.5汚染改善のために抜本的な具体的対策を講じること。また、大阪府の環境アセスメン評価項目に入れること。

⇒府 2021年度は、PM2.5の環境基準達成率は100%でした。長期的にはSPMと同様改善傾向であり、これまで実施してきた自動車排ガス対策及び固定発生源対策を、引き続き着実に実施していきます。また、PM2.5の監視網により監視を確実にし、注意喚起などを的確にしていきます。

また、アセスメントについては、これまで制度の拡充に努めてきました。PM2.5は既に調査等を行うべき項目の一つに位置づけています。しかしながら、その予測については、2次生成粒子に関して大気中における化学反応を考慮する必要があるため技術的な課題が多く実施が困難であるとされており、現状ではPM2.5の予測は行われていませんので、今後とも国等における予測手法の開発の動向を注視していきます。

(7)NO2やPM2.5などの大気汚染とぜん息など呼吸器疾患との因果関係について、国とは別に独自に行政として学校や医療機関の協力を得て疫学調査を実施すること。

⇒府 国によるサーベイランス調査について、3歳児及び6歳児の健康調査に対して、協力しています。引き続き今後も予定しております。

(8)ぜん息は公害病であり、未救済のぜん息患者への救済制度を創設を国に対して求めること。つなぎ施策として大阪府独自の医療費助成制度を早期に創設すること。

⇒府 大気汚染と健康との関係については、まだ十分には解明されておりません。今回会の方から、WHOの見直しという話もありましたが、国としても検討していくとのことなので、府としても注意してみていきます。

⇒府(要望項目の後段部分について)ぜん息につきましては、現行の全国一律の医療保険の制度上、他の疾患と同様の取り扱いとされており、ご要望の疾患だけをとらえた単独の医療費助成の創設は現時点で困難と考えております。ご理解いだだきますようお願いいたします。

2.当会から「要望書」の根拠・背景であるデータ集と、「ソラダス2021報告書」について、パンフレットも用いて、以下の要旨を説明した。(久志本)

1)昨年5月21,22日の実施結果と、メッシュ測定によるNO2濃度のマップ

2)健康アンケート調査結果について(3グループに分けた比較結果)

3)NO2の自治体濃度と健康アンケートとの対比結果

4)サーベイランス調査結果の見直しのグラフの説明(西川論文、なくす会見直し報告のデータ)

5)WHOの昨年の「大気汚染の目安の見直し」情報

3.続いて、患者からの訴えをしました。

公害患者会連合から、以下5人の患者の声です。

(1)岩本啓之(気管支ぜん息2級、64歳)

(2)浜田健一(気管支ぜん息3級、50歳)

(3)角田隼人(気管支ぜん息3級、75歳)

(4)岡崎久女((気管支ぜん息2級、69歳)

(5)山下明(気管支ぜん息2級、74歳)

その「患者会の声」の代表として、岩本さんの文章を久志本が代読しました。

4.その後、府の回答への質疑応答、意見交換

(1)要望項目の1番目について

<会>「0.04ppm以下をめざす」ことが、大阪市では環境計画や環境白書に記載している。府の計画や白書などどこにも記載がないので、書くべきではないか

<府>府としては「0.04ppm以下をめざす」という思いは持っている。その方針について、どこかに記載するように検討したい。

(2)要望項目の5番目について

<会>回答で、測定局の追加は必要ないと回答しましたが、逆にこの間に測定局を減らしましたが、それをどこか知っていますか?

<府>大阪府内では、国の「事務処理基準」に基づいて、府や大防法の政令市等が測定局を設置している。これらの測定局は、測定機器の更新時期に、大気環境の改善状況を踏まえて、コスト削減等の理由により一部減っているところもある。

<会>前回の要望では、浪速区など汚染がひどくて重要な区で増やすべきと要望していますが。この間に減らして来ています。患者会として自分は西淀川区からきているが、一般局の淀中学校の測定局がなくなっていました。なぜですか?

<府>淀中学校局は大阪市が設置して管理しており、市の判断で廃止を決定したもの。府の所管は27局あるが減らしていない。測定機器は10年程度で更新が必要になり、政令市では測定局の配置も含めて随時見直しを行っている。

<会>財政的な負担と言われたが、どれくらいの費用でしょうか?経費軽減はどれくらいですか?

<府>測定項目の数と種類によって異なっており、一概に言えない。

<会>政令市が、設備を減らしたり、場所を変えたりするとき、府と協議はしていますか?どんなコメントをするのですか?

<府>大気環境の状況を把握できるかどうかは確認しますが、市が設置した測定局をどうするかは各市の判断となる。

<会>西淀川区では、自排局として国の設置が3か所、市の設置が1か所の合計4か所あります。PM2.5などの測定は、裁判の和解条項にかかわるものですが、すべてが国道43号と2号線沿いです。淀中学校のは唯一の一般局です。出来島小学校の局ではR2年度の結果が98%値で0.041ppm、R3年度が0.043ppmでした。残念ながら上昇しています。低下傾向でもないのに、減らすとは大問題であると思います。一般局の設置目的は5つあり、本測定局を廃止したのはその5つの目的を達成したからとは思えない。この詳細事情は大阪市に確認しますが、府としてもそういう情報を府民に知らせることが重要と思います。特に、公害被害者がいるのに、事前に何の相談もないことも問題と思います。

<府>府では、ホームページで府内の大気環境測定局の設置状況を公表しています。

<会>そうすると、他の測定局でも、今後も測定器更新時に廃止も含めて見直しされるということでしょうか?

<府>大気の状況、環境基準の達成状況等をみながら判断することになる。

<会>その時には、地元住民の声も聴いて、見直ししてほしい。そもそも数年前の「事務処理基準」を環境省が決めたが、それは本来大汚法とリンクしていない。被害状況も見ないで、単純に人口比や面積比で設置数を決めるガイドラインになった経緯があり、それによれば大阪では半分程度になるので、大きな問題です。住民や被害者である患者の声を聴いて、見直しするようにすべきです。

(3)要望項目の6番目について

<会>PM2.5については、その予測が技術的に難しいというが、それは世界中どこでも同じでしょうか?

<府>その通りです。環境省がアセス法の検討会を定期的にしてその報告者は公表されています。そこで詳しく記述していますが、技術的手法が未確立とあり、アメリカでも予測はできていません。

<会>大気汚染のひどい大阪府なら、独自に研究開発していくべきではないか?国に要望することはできるはず?

<府>大変高度な技術で自治体での技術開発は困難ですので、国を中心にということになると思います。

(4)要望項目の7番目について

<会>健康影響調査について、国の調査をやっているというが、それは、大阪府独自で何かしているのでしょうか?

<府>それらのデータを用いての独自調査はなし

<会>今回追加の資料を提示しましたが、「横浜市も入っている環境影響調査研究」で、「NO2と死亡率の関係を見て、20μg/m3減少で、死亡率が半減」というものがある。国の調査の良いデータもあり、医療機関との協力なども得て、大阪府でも環境農林水産研究所という立派な研究機関も人材もあり、大気汚染のひどい大阪府で、ぜひ取り組んでほしい。何もしないという回答でよいのでしょうか?

<府>国においてもこのサーベイランス調査においては課題があるとしており、改善に向けてワーキンググループの中間報告ではスケジュールもでているので、府としてもそれを注視していきます。

<会>健康影響は長期間で起こるものもあり、大気汚染物質は地方や都会で汚染物質も異なります。大阪独自に分析した結果がないと、独自の対策がとりにくいです。また大阪府内でも、汚染のない地域もあり、汚染地域との比較したデータを持つことで、公衆衛生研究所や、大学への委託研究もできます。その結果で市町村と協力もしていけます。そうなれば私たちもその結果を用いて活用します。そういう大阪府独自の調査・分析、重ねて強く要望します。

(5)追加の要望について

<会>WHOの今回の見直しについて、今後どういう風に活用するかなどのお考えをお願いします。

なお、WHOは時々、大気汚染による全年齢層の年間死亡者数結果を発表しています。一番近いので、約700万人です。その前の報告では、死亡ではなく健康影響を受けたのは、何憶人という数字です。WHOはそれくらい大気汚染問題を重視しています。この中で環境基準をより厳しくしていく方向です。私たちはもちろんですが、行政としてもしっかりと受け止めて、今後の構えにどう生かすか、お考えをほしいです。

<府>環境農林水産部  国では、1月の中央環境審議会の大気関係の部会で、WHOの大気環境ガイドライン見直しについて資料を出しており、今後の大気環境のあり方を検討していくこととしている。国はカーボンニュートラルに向けた取組も踏まえ、まだ達成できていない光化学オキシダント等の対策を検討するとしており、府としても国の動向を注視する。

<会>WHO情報で、大気汚染での死亡者数は、年間600万人で、コロナでの死亡者数は600万人であり、匹敵する問題です。いかに大気汚染問題が重要か、認識してほしい。

先の患者の岩本さんの話に合ったように「ぜん息は一度なると、なかなか治りにくい」しかも「聞こえにくくなり、副作用もある」。だからぜん息にはかからないようにすべきです。西淀川での裁判もあったが、まだ終わっていない問題です。

だから、私たちは、ソラダスとして測定運動を続けているのです。ちゃんと対策や救済など続けてほしいです。ここに出席の皆さんは、そういう大気汚染への対応をしている最前線の担当者であるので、「これからもよろしくお願いします。」という気持ちです。

<府>質問ですが、今回のソラダス調査は、大雨の中実施したため、5頁のカプセル値と自治体データで差が出たことから、カプセル値を1.7倍し確定値にしたと記載されている。私の方で、6頁の測定局について、調査日の自治体データと比較したところ、カプセル値とほぼ同じ数値で補正する必要がないのではないかと思いました。カプセル値を1.7倍に補正する理由を再度教えてください。

<会>大雨の条件での現象ですが、詳しくは、公害環境測定研究会の年報2021で、詳細を説明していますので、後で資料を送ります。

<府>質問ですが、カプセルを6000個使用してすごい大変な努力をされていると思いますが、そのメッシュのデータはどのようにしているのか、データの取り扱いなど、説明してください。

<会>大阪府下は3次メッシュで、縦横約1km の網目の中にカプセルを5個づつ設置しています。大阪市内は縦横500mの網目です。その平均値を出して濃度としています。

できれば、府が市民の測定を支援して、共同で健康調査も含めてやるということもできればしたいです。

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