近年の「異常気象」を考える
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近年の「異常気象」を考える

日本科学者会議 岩本智之

1. 2012年の世界の平均気温は観測史上第8位

 気象庁が年末に発表した速報によると、2012年の世界の年平均気温偏差は+0.15℃で、8番目に高い値となる見込み。日本の年平均気温偏差は+0.20℃で、15番目に高い値となる見込みということです。(注:ここでいう「偏差」とは1981年〜2010年の平均を「平年値」として、それとの差で表した数値)

 とくに9月は北日本を中心に記録的な高温度が継続し、9月の月間平均気温は世界でも、日本付近でも最高を記録しました。地球表面温度の上昇は今も続いています。

2. 続発する「異常気象」

 この1年、世界に気象災害をもたらした主な事象を挙げても、 フィリピンの台風(12月)、 パキスタンの多雨(9月)、 東アジア北部〜アフリカ北西部の低温(1〜2月)、 西シベリア南部〜カザフスタン北部の少雨(1〜2月、7月)、 カザフスタン西部〜ロシア西部の高温(4〜5月、10月)、 イギリスの多雨(4、6月)、 地中海周辺〜アラビア半島の高温(6〜11月)・少雨(6、8月)、 米国東部〜中部の高温(3〜7月)・少雨(5〜9月、11月)、 米国・カリブ海諸国のハリケーン(10月) 、 アラスカの低温(1月、3月)、 ブラジル北東部の少雨(3〜4月) 、 オーストラリア東部の多雨(3月)、など多数にのぼります。

 これらすべてを「地球温暖化の影響」というのはもちろん正しくありませんが、地球の大気・海洋系に何らかの異変の予兆を感じさせられるのも事実です。

3.ますます縮小する北極海の氷

 独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2012年9月に夏の北極海の海氷面積が観測史上最小になっていると発表しました。それによると1970年代には約780万km2だったのに、ついに約340万km2にまで減少しています。

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次報告は、“北極海の晩夏における海氷が、21 世紀後半までにほぼ完全に消滅するとの予測もある”と明記しました。当時は「新見解」として注目を集めましたが、どうやら、これでも楽観的に過ぎる評価であったのかもしれません。

 北極の夏は1日中昼間です。そのため太陽から来るエネルギーは意外と大きいのですが、海が氷に覆われていれば、太陽光はほとんど反射されてしまいます。しかし黒っぽい水面に変わると光が吸収されるので、温度上昇がいっそう加速されます。

 また極地の永久凍土が融けると、閉じ込められていたメタンが放出されます。メタンガスの温室効果は二酸化炭素の約20倍です。これは温暖化を加速させる要因になります。

 北極海の氷が減少するのは「地球温暖化」のせいではなく、大西洋の海流の変化によるものだ、との説もあります。そうだとしても北極地域の環境変化の影響は全地球に及ぶ恐れがあり、注視しなければなりません。

4.今年も厳冬だった

 日本列島は、秋までの酷暑とうって変わって厳しい寒気団に覆われています。12月の大阪の平均気温は6.5℃。平年値の8.6℃より2℃余り低いのですから尋常ではありません。そして北海道や日本海側では、死者152名となった「平成18年豪雪」以来の豪雪と猛吹雪に襲われています。この寒気はユーラシア大陸全般に及んでいます。また2011年〜12年の冬も厳しい寒さに震えました。

 「地球温暖化」はウソだったのでしょうか。いったい何が起こっているのでしょうか。

 北半球上空の大気の大きな流れを見ると、北極をめぐる偏西風が大きくうねって、日本付近に寒気団が入りやすくなっています。そしてベーリング海からシベリア東部にかけて「ブロッキング高気圧」といって、非常に背の高い高気圧が居座り、日本付近は低圧部になっています。ここで低気圧が次々と発生し、猛烈に発達しています。こうして寒気団を引き込み続けているのです。

5.地球大気は不安定さを増している

 「地球温暖化」といっても、全地球で一律に温度が上がっているわけではありません。たしかに地表面付近では、100年間に0.74℃も温度が上がりましたが、高度10〜30kmの成層圏と呼ばれるところでは、その数倍も寒冷化しています。そして地球大気全体としては、実は温暖化も寒冷化もしていないのです。問題は、下層で昇温、上層で降温しているために大気の対流現象が活発化する。つまり不安定になって激しい気象現象が起こりやすくなってきました。

 さらに南北方向でみると、北極域では1.2℃近くも温度が上がっているのに、南半球の低緯度地帯では上がり幅は0.4℃に止まっています。南北間の温度差が相対的に小さくなり、偏西風の波動の様子が変わってきます。最近の研究では、これがブロッキング高気圧の発達を促しているのではないかと指摘されています。

 これらの変容の大きな原因が大気中の二酸化炭素などの「温室効果ガス」濃度が高くなっていることに起因しています。人類が産業革命以来、化石燃料を大量に燃やし続け、それを加速しているからです。

 

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